「階段は上る?下りる?」名物教授がおすすめする寝たきり予防に効果的な“運動”
(写真:マハロ/PIXTA)
日常生活で、階段とエスカレーターがあった場合、便利なエスカレーターを選ぶ人は多いだろう。一方、健康のためと“上り”だけは階段を使うように心がけている人も少なくない。
「心肺機能や持久力が鍛えられる階段の“上り”に比べて、“下り”は、息も上がらず楽にできます。実際、エネルギー消費もあまり多くはありません。しかし、階段を下りる動作は、筋肉に刺激を与える筋トレとしては意外と効果が高く努力の“コスパ”がいいのです」
こう話すのは、NHK『みんなで筋肉体操』でおなじみの順天堂大学スポーツ健康科学部の谷本道哉教授だ。なぜ階段の下りでも、筋肉がつくのだろうか?
「階段を下りる動きでは、脚を伸ばす力を発揮しながら、着地の衝撃に対応します。このような筋肉の動きを『エキセントリック収縮』といいます。着地の衝撃を受け止める筋肉はかなりのダメージを受けるのです。
実際、山登りで筋肉痛になるのは上りではなく下りです。エキセントリック収縮により筋肉がダメージを受け、その損傷箇所に炎症が起きるため筋肉痛になるのです」(谷本先生、以下同)
筋肉痛が回復する過程で、筋肉の合成反応が進み、筋肉量も増えていくのだという。
「階段の下りは、太ももの前面の大腿四頭筋やふくらはぎのヒラメ筋と腓腹筋、お尻の大臀筋といった体重を支える下半身の筋肉量を維持する有効な刺激のひとつ。さらにその刺激は骨にも加わり、骨密度の低下も抑え、骨粗しょう症の予防にもつながります」
筋力の低下は50代から一気に加速する。筋力が落ちると「動かなくなる→筋力低下が進む→さらに動きたくなくなる」という悪循環に陥り、最終的には寝たきりをまねくことに……。
■衰えやすい速筋が効率的に鍛えられる!
階段の下りには、寝たきりを予防する、さらなる“効能”がある。
「筋肉の細胞は、瞬発的な動作を得意とする『速筋』と持久力に優れた『遅筋』との2種類に分けられます。加齢によって筋肉量は減少しますが、速筋ではより顕著に起こります。
この速筋が減ってしまうと、ちょっとしたつまずきでも、足が前に出ないなど支える動作がとれなかったりして転倒・骨折リスクが上昇し、寝たきりの原因にもなってしまいます。エキセントリック収縮が起こる階段の下りの動作では、速筋の多いふくらはぎの腓腹筋をよく使うため、加齢で衰えやすい速筋を効率よく鍛えられるのです」
ちなみに、この速筋は、糖質を急速に消費する特徴がある。鍛えることで糖尿病の予防・改善も期待できるのだ。
このように、階段を下る動作はメリットばかりだが、注意すべき点もある。
「勢いよく階段を下りると、関節で着地の衝撃を受け止めるので、関節を痛めるリスクも。一段ずつ確実に、筋肉に衝撃を吸収させるようにややゆっくり下りましょう。筋肉にしっかり負荷をかけられ、安全に下りられます。また筋力を維持するためには、食事でタンパク質を安定供給させることも大切。
卵や高タンパクのギリシャヨーグルトを加えるようにしましょう」
下りの階段はすいているのに、横のエスカレーターには行列ができていることもある。これからは“無料のジム”と思って、積極的に階段を下っていこう。