連載記事:「幸せ力」の育て方

保育園や幼稚園の選び方で学力に差が出る!? 保育形態の違いによる差(「幸せ力」の育て方 Vol.9)


「自由保育」の幼稚園や保育園に通っている子どもは学力が高い

さらに、保育形態によって子どもの語彙得点に大きな差があることがわかりました。

「自由保育(※1)で、子ども中心の保育を行い、自由遊びの時間が長い幼稚園や保育園に通っている子どもの語彙得点が非常に高かったのです。

反対に、一斉保育(※2)で、小学校一年生の授業を先取りして準備教育を行っている幼稚園や保育園に通っている子どもは得点が低い結果となりました。

しかも、子どもの年齢が高くなるほどその差が開いていきました。
幼稚園か保育園かは、まったく関係がありませんでした。

韓国、ベトナム、モンゴルでの調査も同じ結果でした。
唯一、中国は保育園での一斉保育しかないので、比較ができませんでした」

(※1) 自由保育とは:自由遊びの時間が長く、子どもが主体となって自発的にやりたいことに取り組む、子ども中心の保育形態のこと。放任とは違い、子どもの自主性を尊重しつつも、幼児期に学んでほしい目標や狙いを達成できるよう保育士が誘導する。

国立大学附属幼稚園や公立幼稚園や私立幼稚園の一部、社会福祉法人の保育所では子ども中心の保育であり、子どもたちは好きな遊びに主体的に取り組み保育者は援助者として子どもの学びに寄り添い、子どもが困っているとき助けてあげる「わき役」である。

(※2) 一斉保育とは:全員に同じこと(体育や音楽、お絵かきなど)をさせる、カリキュラム中心の保育形態のこと。小学1年生の準備教育や英会話などを取り入れ、体操選手をつくるということなどを教育目標にかかげる私立幼稚園や私立保育園の一部にみられる。


自由保育の幼稚園や保育園に通っている子どもは語彙力が高い

園種より保育形態が語彙力と関連する(内田・浜野,2012より)


「文部科学省の調査の対象となった国立大学付属幼稚園はすべて自由保育を行っています」

つまり、子どもの学力格差は幼稚園と保育園の違いによるものではなく、自由保育か一斉保育かの違いによるものだったのです。

保育形態の違いによって差が出てしまうのはなぜなのか、次回の記事で詳しくお伝えします。


(佐々木月子)

今回取材に協力してくださったのは
内田 伸子先生
内田伸子先生
十文字学園女子大学特任教授・お茶の水女子大学名誉教授・学術博士。
専門は発達心理学、認知心理学、保育学。国立教育政策研究所「幼児の論理的思考の発達調査プロジェクト会議」(主査)、最高裁「裁判員制度の有識者会議」(委員)、文化庁国語審議会委員なども務めるほか、NHK Eテレの「おかあさんといっしょ」の番組開発やコメンテーター、ベネッセの子どもチャレンジの監修、しまじろうパペットの開発、創造力知育玩具「エポンテ」(シャチハタ)の開発なども担当。著書は、『発達心理学―ことばの獲得と教育』(岩波書店)、『よくわかる乳幼児心理学』(ミネルヴァ書房)、『子育てに「もう遅い」はありません』(冨山房インターナショナル)など多数。

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