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産前産後には、痔の症状が現れる場合があります。お腹の赤ちゃんの頭が子宮内で下部に位置する場合、おでこが肛門を圧迫しやすくなることで、痔になりやすくなるからです。
また妊娠中は、体調の安静を優先にするためにどうしても運動不足になりやすく、便秘になりがちなことも原因の一つと言われています。
また、お産時のいきみが強かった人も痔になりやすい傾向があります。いきみによって脱肛(直腸の粘膜組織が肛門から出る状態)することが原因です。
肛門の外側に痔核が出る状態を外痔核、内側にできてしまうことを内痔核と言います。妊娠中は内痔核、産後は外痔核になることが多いと言われています。
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イボ痔(痔核・脱肛)
肛門内外にイボ状の腫れができる痔です。
排便時やお産時のいきみで肛門部に集まっている細い血管に負荷がかかりうっ血し、腫れあがることで起こります。イボにはしこりのような硬さがあり、排便時にイボに触れると痛みがでます。
肛門の内側にイボができるものを内痔核、肛門の外側にイボができるものを外痔核と呼びます。
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切れ痔(裂肛)
肛門部が切れたり、周辺の粘膜が損傷することで起きる痔です。便秘の硬い便や、激しい下痢便による勢いなどで肛門の出口周辺が切れたり、血液循環が悪くなったりすることが原因です。多少の出血と鋭い痛みがあり、排便時以外でも痛みを感じる場合があります。繰り返すことで慢性化します。
産前産後の痔は、いつからいつまでになりやすいの?
産前産後の痔は、妊娠36週前後になりやすい傾向があります。
初期に痔になるケースは少ないと言われていますが、妊娠前から過度なダイエットなどを繰り返し、常に便秘気味の場合は妊娠初期からすべての期において症状が現れやすくなります。
また産後に痔になる場合、お産時のいきみで肛門に負荷がかかったり、産後に腹筋が緩み便秘になりやすくなっていることが原因だと言われています。また、授乳によってママの体内が水分不足状態となり便秘につながり、痔症状として現れることもあります。
産前産後の痔のリスク
痔がお腹の赤ちゃんの成長に影響を与えることはありませんが、ママが感じる不快症状としては見過ごせない問題でしょう。痔自体は自然に治ることもありますが、症状が進行し、慢性化すると様々なリスクが発生する可能性があります。
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内側にできてしまったイボ痔(痔核・脱肛)のリスク
内痔核は、肛門内部のイボ部分が肛門の外へ脱出し、戻らなくなることがあります。症状が軽いと排便を終えれば戻りますが、慢性化すると、イボ部分を指で押し戻す必要があったり、悪化すると、指で押しても戻らなくなる可能性があります。
外痔核は、腫れたり、触れると強い痛みを感じたりします。
進行が進むと外痔核自体が炎症を起こし、さらに腫れたり、痛みが強まる可能性があります。
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切れ痔(裂肛)のリスク
切れ痔が治らないまま繰り返すと、傷口や粘膜の損傷部分に生じた裂け目が深くなって炎症が起きます。進行すると潰瘍やポリープができ、肛門が狭くなることがあります。
診断の仕方と、診断後の生活について
痔は、基本的には肛門科の医師が診療し、診断します。
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問診(症状を聞く)
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視診(肛門を見る)
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触診(肛門にできているイボなどに触れ、症状を確認する)
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指診(肛門内部を調べる)
妊娠中の痔に関しては、妊婦でも飲める内服薬や塗り薬を健診医が処方し、改善させたり、治したりすることができます。痔の原因が便秘である場合は、食生活の見直しなども必要ですので、妊婦健診の際に健診医に相談しましょう。症状がひどい場合は肛門科での手術で治すことができますが、一般的には妊娠中期ごろ、安定期での施術が良いと言われています。
産後の痔の場合は、授乳による水分不足で便秘が起こり、痔の症状が起きていることも原因の一つです。
水分をきちんと摂り、食物繊維を多く含む食事を1日3食摂りながら、体調に合わせた軽い運動を行うことも便秘の改善には効果的です。
痔の症状がひどい場合は一般的な市販薬でも治すことができますが、市販薬にはステロイドを含むものが多くあります。ステロイドが母乳に影響を与えることはないと考えられていますが、授乳している場合は念のため、かかりつけの産婦人科医に確認しましょう。
また症状がひどい場合は、注射療法や手術療法などで治療したり、会陰切開の回復を待って手術することも考えられます。
もし診断を受けたら、産前産後の状況に合わせて食生活や生活習慣を見直し、便秘にならないような生活を心掛けましょう。