連載記事:新米ママ歴14年 紫原明子の家族日記
大人と子どもの、一番大きな違い【新米ママ歴14年 紫原明子の家族日記 第13話】
「A君って誰よ」とか「どうしてそんなことになったの?」とか根掘り葉掘り聞かない。そういうことを続けて、結局、1、2年かかったけれど、今ではちゃんと名前を出して話してくれるようになった。
生まれてからずっと一緒に住んでいるのだから、夢見はもう少し早い段階で私の思慮深さを信用してくれても良かったのではと思わなくもないけれど、物事を判断する能力というのは部分的に、段階的に育っていくのだろうから、まあ仕方がない。それに、もしかしたら親と子の関係にも、当人たちが気づかないだけで、第一印象を残す契機となるタイミングがあるのかもしれない。夢見が小さいころ、家庭の中は何かと問題が多く、揉めていたので、いつもより感情的になっていた私が、長いこと彼女の中の私のイメージとして残っていたかもしれない。……だとしたら少し申し訳ない。
いずれにしても、子どもの、新しい自分への柔軟性にはかなわないな、と常々思う。大人になってしまうと、経験から多少の学びを得ることがあっても、本質がドラスティックに変わるということはほとんどない。
そしてもし仮にあったとしても、そのきっかけに、宗教とか、悪い男とか、怪しいセミナーとか、何か強引な力が働いていたりして、不自然さを伴う場合が多い。
考えてみるとそんなことは当然の話で、長く生きるというのは、長く自分であり続けるということ。自分である時間を積み重ねた分だけ、急激に変わるのは難しいのだ。けれども、子どもというのは本当に柔軟だ。あっという間に学び、どんどん変わる。そのしなやかな感性を羨ましく思うと同時に、彼らの信頼に足る大人でなくてはならないな、と思う。
イラスト:片岡泉
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