尾木ママが語る「子どもを学校に行かせたらいけないとき」
尾木ママが語る「親が受けてきた教育とはガラリと変わる!」
尾木ママが語る「親は『アクティブ・ラーニング』を勘違いしている」
の続きです
『取り残される日本の教育 わが子のために親が知っておくべきこと』は、尾木ママ44年間の教員生活の集大成
いま、教育現場で最も注目されている言葉
「アクティブ・ラーニング」とは、先生の授業を聞くだけの受け身の学びではなく、子どもが能動的に考える学習のあり方のことだと、テレビでおなじみの
“尾木ママ”こと、
尾木直樹さんは言います。
尾木ママの新著
『取り残される日本の教育 わが子のために親が知っておくべきこと』の本の中で紹介されている「アクティブ・ラーニング」。
では、アクティブ・ラーニングができる子を育てるために、
いま、ママができることとは何でしょうか?
■杉山愛さんのお母さんの口癖
―― 前回、授業の方法が「アクティブ・ラーニング」を重視したものに変化していくというお話を伺いました。それに対応できる子どもを育てるために、ママが気をつけるべきことは何ですか?
ポイントはいくつかありますけれども、やはり1番大切なのは
自己決定ができる子を育てることです。
そのためには、まず、日常生活のいろんな場面で
子ども自身に決定させることが重要です。
ご飯を食べるにしても、保育園に行くにしても、子ども自身が考え、決められるよう働きかけていく。どの靴を履いていくかとか、今日曇っているけど傘を持って行くか、といったことを自分で決めさせるの。「テレビの天気予報では、雨の確率は80%と言っていたよ」とか、考えるヒントになる情報は親が与えてあげて。
―― 「こうしなさい」ではなく?
一方的に親の意見を押し付けるんじゃなくて、
「あなたは、どうしたいの?」といった問いかけで、自己決定を促す。じつはこれ、元プロテニスプレーヤーの杉山愛さんのお母さまの口癖なんだそうです。
お母さまは、「あなたはどうしたいの?」と、必ず杉山愛さんに聞いていらっしゃったとか。愛さんは、「それは、それでしんどかった。」とおっしゃっていたけれど(笑)。すごく大事なことですね。
■羽生結弦選手のすごいところ
―― 「自己決定」は、「能動的」な姿勢そのものですよね。
2つめのポイントは、
自分の意見が言えること。そのために、主語をきちんと言えるようになること。
「僕は、これがほしい」「私は、これがしたい」。こんなふうに、
主語と述語がきちっと言えるということもすごく大事です。
―― 日本語は主語を使わなくても通じやすい言語なので、これは意識する必要がありますね。
3つめのポイントは、
他人と比較しないということです。これは、フィギュアスケートの
羽生結弦選手が良い例。彼のすごいところは、他人との比較ではなく自分の目標に挑んでいるところ、そしてメダルを目的としないところです。
羽生選手は、よく
「敵は自分自身」ということを口にしています。その例として、2014年、ソチオリンピックで金メダルを獲ったときのコメントが印象的でした。
当時、取材に「結果としてすごいうれしいなと思う半面、自分の中では悔しいと思うところがあるので、金メダルを獲って言うのもなんですけれど、やっぱり悔しいです」と答えています。
これはつまり、自分の演技を「相対評価」するのではなく、
「絶対評価」しているんですね。
■内村航平選手のお母さんの視点
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―― そういった子は、どうしたら育つのでしょうか?
これは体操の
内村航平選手のお母さまと対談して、ご本人の口からはっきり聞いた話なんですが…。
内村選手のお母さまに、「大量のメダルや賞状は、どこに保管しているのですか?」と質問したとき、「そんなの見たことないし、どこかポケットにでも入っているんじゃないですか?」と、おっしゃるんです。
「え? じゃあ、1枚も飾ってないんですか?」と聞いたら、「そういえば1枚だけリビングに飾っています」と。それは小学校のときに出場した大会の
参加賞だというんですよ。
―― 参加賞、ですか?
そう、参加賞です。思わず、「そこで優勝したんですか?」と聞いたら、「成績はビリでした。
でも体操が本当に好きで、泣かないで
最後までやりきったことが、すごい立派だった」と。
これは、
「親が、子どもの何を見ているか?」という話です。普通だったら、メダルの数といった成績で評価しがちですよね。でも、そうではなくて、子どもが自分と向き合ったことについて親がしっかり認めてあげている。
子どもが
「最後まで、きちんとやりきった」ことをお母さんが本気で評価している。そして、それが子どもに伝わっているんです。これが世界の内村選手の原点にある話だと思うんです。
■親の教育に対する考え方が問われる時代
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4回に渡ってお送りした「わが子のために親が知っておくべきこと 2017」連載も、これで終わり。
トップアスリート本人や、トップアスリートを育てたママたちの言動に共通していたことは、
アクティブ・ラーニングができる子を育てるポイントそのものだったと思います。
尾木ママは言います。「わが子の教育について真剣に考えていて、確固たる教育観を持った家庭で育つ子どもは、アイデンティティもしっかり確立され、自分の意見を述べたり、主張したりできます。やはり、
『家庭の教育力』が子どもに与える影響は大きいのです」。
「教育」という分野にも、「時代」の波は押し寄せてきています。未来を生きるわが子に本当に必要なことは何なのか? ママとしてのアンテナを磨いて、時代の波をきちんとキャッチしていきたいですね。
この記事は2017年2月の取材に基づいて書いています。
「上手だね」はNG! 自由な発想と創造力のある子がAI時代に強いわけ