連載記事:新米ママ歴14年 紫原明子の家族日記
息子よ、親への感謝の手紙にYouTubeのURLを載せるな【新米ママ歴14年 紫原明子の家族日記 第17話】
「彼はね、あの人柄で、これからどこにいっても友達が寄ってきます。何にも偏見のない彼の物の見方は、お母さんの家庭教育の賜物ですよ」。
ここで労いの言葉なんてさらなる反則技です先生。涙をポロポロ流しながら、ああ、息子は明日卒業するんだなあ、と思ったのだった。
そうして迎えた卒業式当日。受け付けを済ませた保護者には、式次第とともに、一通の封筒が配られた。封筒には息子の文字で「母へ」と書いてある。
「いやーここで親への手紙!? これもう絶対泣いちゃうじゃん、泣かせにかかってるじゃん! ずるい! 卑怯!」
保護者席に隣り合って座ったママ友が言う。
確かにこれは確実に泣かせにかかっている。しかしこちとら昨日からすでに涙腺が緩んでいるのである。この際とことん無抵抗主義。
煮るなり焼くなりどこからでもかかってきなさい。ハンカチを手に覚悟を決めて、いざ厳かに開封の儀。……ところが、そこに書かれた息子からの手紙に、私は目を疑ったのだった。以下、全文である。
母へ/ははへ/ハハへ/motherへ
いかがお過ごしでしょうか。
僕は元気です。
本日3月17日を以って中学校を卒業します。
思えばさまざまなことがありました。東京都知事の汚職発覚、某人気タレントの不倫騒動や某有名女優の宗教団体への出家。そしてヒラリー・クリントン大統領候補の敗戦。とても波乱万丈な中学校生活でしたが、とても楽しくもありました。この3年間で僕はたくさんのことを学びました。ついに卒業と思うととても感慨深い気持ちになります。
3年間、僕を支えてくれたのは誰あろう母でした。毎日、ありがとうございます。とても感謝しています。
そして最後に、また3年間よろしくお願いいたします(_ _)
たてよみ(嘘)
http://www.youtube.com 息子より
お前は年末の週刊誌か何かかと。そして最後の謎のYouTubeトップへの導線は何なんだよと。
卒業式は、爆笑のうちに幕を閉じた。
イラスト:片岡泉
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