連載記事:新米ママ歴14年 紫原明子の家族日記
心配になるのは幸福のバリエーションを少ししか知らないから【新米ママ歴14年 紫原明子の家族日記 第22話】
なんでも境内を散策したり、たまたま開催されていた第一次世界大戦展を鑑賞したりして、それはそれは充実した時間を過ごしたらしい夢見。帰宅してから「お昼ご飯はどうしたの?」と尋ねると、「境内の売店で焼きそばを食べた。途中から、外で徴兵制復活を訴えていた作業服のおじさんたちがわらわらと入ってきて私の隣でご飯を食べて始めた。完全に異世界ですっごく面白かった」とのこと。かつて中野のまんだらけに初めて行った際に「ディズニーランドみたい!!」と言ったときと同じ目をしていたこと、母は見逃さなかった。
いつかの心配もどこへやら、気づけば思いがけず、強く、たくましく育っていた夢見。幼い頃から随分変わったように感じられるけれど、でもその実、案外何も変わっていないのかもしれない、とも思う。幼い頃の夢見は、やっぱり先生の言う通り一人が好きだったのかも。
あるいは、どうしても滑り台の上に登っていたくて、その意志をただ思うままに貫いていただけなのかも。誰が何を教えなくとも、彼女はやりたいことを、やりたいようにやってきていたのだ。
結局、大人が気にかける子どもの心配事なんて、その大半が、大人の方が幸福のバリエーションをちょっとしか知らないことで生じるのかも、なんて思うのである。
イラスト:片岡泉
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