まだまだ子どもだと思っていたのに、半袖の隙間からちらっとみえたわが子の毛にドキッ! 親であれば、そんなシーンがいつかはやってきます。気になる子どものムダ毛は、どんな方法でケアすればいいのでしょう。皮膚科のドクターにお聞きしました。
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お話をうかがったのは
衣原 公美子先生
美容外科・皮膚科 レイクリニック院長。肌コンディションに加え、思春期、妊娠出産期、更年期といったライフステージも鑑みて、人それぞれに適した丁寧な診察を心がける。一児のママ。
http://www.ray-c.jp/
■顔の産毛も濃く? 意外と知らない成長期の「毛」のメカニズム
体が大人に近づくにつれ、少しずつ生えてくる
わき毛や、濃くなりはじめる
手足や顔の産毛。自然なことではあるけれど、そんなわが子の変化に戸惑うママも少なくないかもしれません。実際、お話をうかがった衣原先生のクリニックでは、わが子のムダ毛相談が増えているそう。
「
10歳前後~中学生くらいの子のママから、お子さんの毛に関するお悩みを相談されることが多いです。最近は女の子だけでなく、男の子のママからの相談も増えてきました」
10歳前後といえば、第二次性徴期に入る子も増えてくる時期です。
この時期にはホルモンの影響などから、体毛にもさまざまな変化があらわれるそう。
「毛の生える順番やスピード、毛の質などは個人差が大きいため目安ではありますが、女の子の場合、まずはおでこや口周りといった顔の産毛が増え、少しずつわき、外陰部周辺の毛がはっきりしてきます。顔の産毛はホルモンバランスが安定すれば自然に薄くなりますので、過度に心配しなくても大丈夫です。
男の子は、顔の産毛、外陰部周辺、そしてわきの毛が生えそろってきます。濃いヒゲが生えそろうのはゆっくりめで、20代中頃から少しずつ増えてきます」
■まだまだ不安定な、成長期の毛周期
ちなみに、成長期の毛は生え変わりのサイクル(毛周期)もまだ安定していないとのこと。
「毛と毛をつくる毛包と呼ばれる組織構造は、成長期に少しずつ完成していきます。この構造が未熟なうちは、
毛の太さがまばらだったり、毛周期が不安定だったりします。わきでいうと、毛周期が安定してくるのは20歳頃です」
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毛周期とは体毛が生え変わるサイクルのこと。
毛は「生えて育って抜け落ちる」を繰り返していますが、成長期の毛周期はまだ不安定なことも
わきに毛が生えてきたり、顔の産毛が濃くなったりするのは成長の課程で誰もが通る道。そうはわかっていても、親としてはムダ毛をからかわれないか心配になったり、子ども自身が気にしていることもありそうです。
「たしかに、第二次性徴期の子は心も揺れやすいものです。もしかすると、大人が思う以上に気にしている可能性もあります。お子さんがムダ毛に悩んでいる様子だったら、
毛が生えてきたり、濃くなったりするのは普通のことなんだよと伝えてあげて、そのうえで剃ったりするなどのお手入れ方法を教えてあげましょう。一時的ではあっても毛がなくなることで、心理的な負担は少しやわらぐと思いますよ。
また、ムダ毛は治療で減らすこともできます。気がかりがあれば、皮膚科に相談してみてくださいね」
■お手入れのコツは? ムダ毛処理方法別、留意ポイント
子ども自身の気がかりをやわらげるのはもちろん、身だしなみの意味でも適切なケアをしてあげたいところです。
そこで、さまざまなムダ毛ケアの方法と気をつけたいポイントを、衣原先生に教えていただきました。
【家庭でのセルフケア】
▼カミソリで「剃る」
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気になったらいつでもお手入れができ、コストも低いため一般的にもよく行われている方法です。上手にケアすれば、肌への負担も少なく毛の処理ができます。ただし、剃ってもすぐに生えるため目立ちやすく、また、カミソリの刃のあて方によっては、皮膚を傷つけてしまうことも。
お手入れのポイントは、
カミソリの刃を皮膚にできるだけ水平にあて、毛だけを剃るように心がけること。肌を傷つけにくいアイテムを利用するのもよいでしょう。お手入れ後には、低刺激性のローションなどで皮膚を保護するとなお安心です。
▼毛抜き・家庭用脱毛器・ワックスなどで「抜く」
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家で手軽にでき、剃るよりも毛のない状態がキープできます。しかし、毛を抜く際に毛包が傷つくため、毛包の中で炎症や感染が起こりやすくなったり、毛周期が崩れたりします。毛穴のブツブツや黒ずみ、皮膚の中に毛が埋まったままとどまる「埋没毛」になることもあります。
ワックスの場合、毛包の炎症に加えて皮膚の表面も薄く剥がされるためバリア機能の低下にもつながります。
子どもも大人も、毛を「抜く」方法はおすすめできません。
▼除毛クリーム・ジェルで「溶かす」/脱色剤で「脱色する」
いずれも、薬剤を使う処置方法です。ここで心配なのが、
薬のアレルギーによる接触性皮膚炎です。使用する場合は必ず目立たないところでパッチテストを行いましょう。
もし赤みやかゆみなどのトラブルが起こったら使用を中止し、早めに皮膚科に相談しましょう。
【エステ・医療機関などでのケア】
▼レーザー脱毛
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毛の黒い部分(メラニン)に熱をあて、毛をつくる毛包を破壊する方法で、専門医のみが施術を行えます。脱毛が完了した後は、剃る、抜くといったケアをしなくてすむので、肌荒れを起こしにくい健康な皮膚を維持しやすくなります。
治療にはやや痛みが伴い、脱毛後は毛包部がやけどを起こしている状態になるため、医師によるお薬の処方が必要です。医療機関を選ぶときは、
知識と経験が豊富な医師がいるかどうか、事前の診察がじゅうぶんかどうかをチェックするとよいでしょう。
▼光脱毛
レーザー脱毛と同じようなメカニズムで、熱で毛包を破壊する脱毛方法です。レーザーより熱エネルギーの出力が弱いため、専門医だけでなくエステサロンなどでも受けられます。レーザーに比べると熱の吸収効率が落ちるぶん、脱毛効果はやや不安定で、細い毛は減りにくいことも。
また、光は皮膚のメラニンにも吸収されるため、人によってはやけどのリスクがレーザーより高くなる可能性があります。
▼ニードル脱毛
毛の1本1本に沿って針を刺し、電気で毛包を破壊する方法です。施術に時間がかかることと、針と熱の痛みもともなうため、最近では行う施設が少なくなってきました。レーザーや光は毛の黒い部分に反応しますが、ニードルの場合は毛を目で認識できればよいので、どんな毛にも対応でき、脱毛結果は確実です。
▼蓄熱式脱毛法
医療脱毛のなかでも新しい治療方法です。痛みが少なく、治療時間が短い特徴がありますが、
歴史が浅いのでデータもまだ少なめです。この点をきちんと考慮し、慎重に検討しましょう。