連載記事:イクメン脳研究者が教える“脳から考える子育て”
子どもの言葉「一つを繰り返し? いろいろを同時?」言葉が早く身につくのはどっち?【イクメン脳研究者が教える“脳から考える子育て” 第8回】
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1歳を過ぎて言葉がポツポツ出始めてくると、親としては早くいろいろな言葉を覚えてほしいですよね。そこで、気になるのが言葉の教え方です。
くり返し一つの言葉を何度も教えたほうがいいの? それとも、さまざまな言葉を順番に教えたほうがいいの? 脳研究者の池谷裕二先生に、素朴なギモンにお答えいただきました。
池谷裕二先生 プロフィール
研究者、薬学博士。東京大学・薬学部教授。専門は神経科学および薬理学で、脳の成長や老化について研究している。『海馬』(新潮文庫)、『進化しすぎた脳』(講談社ブルーバックス)など著書多数。近著に『パパは脳研究者』(クレヨンハウス)がある。
プライベートでは二児の父。
■子どもの言葉学習「一つの言葉のくり返し」か「さまざまな言葉を同時進行」か?
―― 子どもが言葉を覚え始めてくると、うれしくて早くいろいろなことをしゃべってほしくなるママもいると思います。でも、思ったように言ってくれないことも当然あるわけで……。子どもに言葉を教える時に、一つの言葉をくり返し教えるのと、周りにあるさまざまな言葉とあわせて教えるのと、どちらがいいのでしょうか?
池谷裕二先生(以下、池谷先生):言葉を身につけるうえでは「両方」必要です。子どもは世の中の原理・原則を習得するためにくり返しが重要になってきます。だから、大人だったら3回言われたら覚えられることも、子どもにはそれ以上にくり返しが必要になってきます。子どもは大人以上に何度も同じことをくり返す傾向がありますよね。
―― しつこく同じことを言い続けたり(笑)、同じ遊びを繰り返したり。思い当たりますね。
池谷先生:でも、同じ言葉のくり返しだけではダメなんです。実験で、子どものネズミに(ピアノなどで)音程の「ラ」だけをひたすら聞かせたところ、「ラ」はすごくよくわかるようになったそうです。でも、そのネズミが大人になって、脳ができあがったところで「ソ」を聞かせても、識別しなかったという実験データがあります。
人間とネズミがまったく同じとはいえませんが、一つの言葉だけではなくて、同時にほかの言葉も教えたほうがいいと推測できますね。