連載記事:イクメン脳研究者が教える“脳から考える子育て”
子どもの言葉「一つを繰り返し? いろいろを同時?」言葉が早く身につくのはどっち?【イクメン脳研究者が教える“脳から考える子育て” 第8回】
■2歳頃の言葉学習「同時に教える言葉は3つがベスト」
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―― なるほど。同時に周辺の言葉も教えたほうがいいんですね。
池谷先生:そうですね。ただ、2歳頃の子なら、同時に教えるのは3つくらいにしぼるのがいいですね。例えば、色の名前を教える時は「あか、あお、きいろ」という具合に。
一度にたくさんの言葉を教えると、これまでに覚えた言葉と混ざってしまうのです。専門用語で「記憶の干渉」といって、ある記憶がこれまでの記憶に影響される(干渉される)ことをいいます。
大人でも一度に多くの言葉を覚えようとすると混乱しますよね。
大人は記憶のお皿が大きいですが、小さな子どもはお皿がほとんどないので、複数の言葉を教えられても大人のようにちゃんと覚えられないのです。1歳の頃は「あか」と「きいろ」を教えるだけでも、「あかろ」と新しい言葉を作って言ったりします(笑)。かわいいですけどね。
―― 欲張っていろいろ教えてしまいそうですが、発達に合わせることが大切なんですね。ほかにも教える際のポイントはありますか?
池谷先生: 同時にいくつかの言葉を教えるなら、どれか一つの言葉にウエイト(比重)を置いて、くり返し教えてあげるといいと思います。先ほどの「あか、あお、きいろ」の例なら、「あか、あか、あか、あお、きいろ」みたいに。その子が言いやすそうな言葉を選ぶのもポイントですね。
■子どもの言葉の「言い間違いは気にしない」
―― 言いやすそうな言葉を選んでみます。この時期は言葉をたくさん聞かせたほうがいいと聞きます。
池谷先生: 言葉を教える時はしぼり込みますが、小さい頃に絵本の読み聞かせなどをしてさまざまな言葉を聞かせるのはいいことです。ちなみにわが家では車に乗っている時、音楽の代わりに日本の昔話の朗読データを聞かせています。
言葉をシャワーのように聞かせていると、子どもはずっと流れている文章でも単語と単語の区切りを認識して「文節化」できるようになります。今まで話したことのない外国語でも文節化できるのですから、脳ってすごいですよね。言葉の意味がわからなくても、「単語の切り出し」ができるんです。
―― 子どもの脳ってすごいんですね。よくわかりました。ちなみに、言い間違いはかわいいですが、気にするママもいます。
池谷先生:言葉ってそのものがそこにあるわけではなく、概念や象徴的な(=シンボリックな)ものを表していて、それを操作(=シンボリック操作)してコミュニケーションを取るものです。
今は言い間違えをしていても、親子で会話が通じているなら、子どもは言葉の概念を獲得していて、シンボリック操作ができていると言えますよね。立派なことですよ。子どもの時期は「正しく言えない」ことを気にする必要はまったくないと思います。いずれはちゃんと言えるようになりますよ。
言葉を話せるのは生物でヒトだけなんですが、言葉を話せることそのものが奇跡なんです。どうして話せるようになるのか、まだ科学的に解明されていません。
なぜ話せるのか、考え始めると夜も眠れないくらいです(笑)。言葉って奥が深いですね。
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