2月17日、東京・品川区の「GGKIDS戸越校」で保育や教育、子育て×ITの分野で活躍する方をゲストに招いて「環境」「教育」の両面から議論を交わすパネルトークイベント『One Childcare -"孤"育てから"Co"育てへ-』が開催されました。
経済産業省では、月に1回、保育や教育サービス、保育事業者を招き、育児や教育に関する興味深いテーマを掲げて、勉強会を開催しています。今回のイベントはその勉強会を外に向けて発信しようというもの。
昨年、産後うつが原因で自殺をしたママが過去2年で92名もいる(※1)というニュースが流れました。本来、幸せなはずの子育てですが、母親の「孤育て」になっている現状があります。その現状を打破すべく、社会全体で子育てをしていく、これからの「Co育て」について考えるのが今回のイベントの趣旨になります。
会場には小さなお子さんを抱いたお母さんだけではなく、お父さんの姿もチラホラ。中には子どもを膝の上であやしながらトークを繰り広げるパネリストの姿もあり、始終和やかなムードで行われました。
オープニングは経済産業省サービス政策課 課長の浅野大介氏による基調講演
遊び心満載の空間で自由に遊ぶ子どもたち。会場となった「GGKIDS戸越校」は、モデレーターのひとり・空田真之氏が代表を務める『コソダテリノベ』が空間デザインを手がけています。
■アンケートによると、自由時間が欲しいと答えたママは90%
パネルトークに先立ち、ウーマンエキサイトがパパママを対象に調べた「子育て環境」「教育」に関するいくつかのアンケート結果を紹介してもらいました。
たとえば、子育て中のママを対象にした「自由時間が欲しいですか?」というアンケートに対して「すごく必要だと思う」という回答は91%という結果に。なかなか自分の時間を作れないお母さんの厳しい子育ての現状が浮き彫りになりました。
また「親が望む義務教育でやって欲しいこと」で一番多かったのは「国際コミュニケーション能力の向上」、続いて「日本の伝統や文化、歴史に関する教育」という結果も出ています。
<アンケートの詳細はこちら>
■子育てをアップデートし、育児の負担を減らすには?
パネルディスカッション前半では「子育てしやすい環境はどうやってつくる?」をテーマに、以下のメンバーでさまざまな意見が交わされました。
現在、虐待や待機児童などさまざまな子育ての問題がある中、パネリストの皆さんはどのように感じているのでしょうか。
(左より)
モデレーター:矢澤 修 氏(株式会社イースマイリー 代表取締役)
パネリスト:
彦坂 真依子 氏(株式会社カラダノート)
村田 学 氏(株式会社インターナショナルタイムズ 代表取締役)
園田 正樹 氏(CI inc. CEO)
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ここからはパネルトークの一部を抜粋して紹介します。
▼今目の前にある子育ての問題とは?
株式会社カラダノートの彦坂真依子さんは、アプリを利用する300人にアンケートを実施したとのこと。
彦坂「子育てをアプリやITツールを使って効率化したいと思う一方で、キャラ弁作りに代表されるような「丁寧に手をかけることで愛情表現をしたい」という人の割合も高く、まだまだそうした考え方は色濃く残っています。
一方育児中にスマホを利用していて、周囲からネガティブな反応があったという人は約6割も。中には“スマホで育児記録を取っていたら、義母に子どもがいるときはスマホを触らないでと言われた”という声もありました。
子どもにとって祖母や祖父にあたる世代と今の子育て世代には大きな世代間ギャップがあるようです。
過去の成功例を参考にすることも大事ですが、時代とともに子育てもアップデートしていき、アプリやITツールを使って効率化することも大事ではないでしょうか」
CI inc.の園田正樹さんは、産婦人科医の視点から、病児保育を使うのもひとつの手だと発言。
園田「僕が全国調査を行ったら、病児保育を使ったことがある人は12%でした。使ったことのない75%の人の中には病児保育の存在すら知らない人もいてビックリしました。
子どもの急病時の仕事の調整という課題は10年前から変わっていません。今後もっと病児保育を活用する土壌ができれば、子育て世代が直面する職場での問題も解決できるんじゃないかなと思っています」
会社の体制が変わってくれればいいのですが、なかなか難しい現状があるのも事実です。そんなときに、病児保育を使い子育ての負担を軽減するのも手段のひとつでしょう。
▼産後うつの裏にある、夫の育児不参加問題やアウトソーシング問題
園田さんいわく、8人に1人のお母さんが産後うつになるのだとか。そしてその人たちの共通点は「旦那さんが育児を(ほとんど)サポートしないこと」だといいます。
彦坂「私は産後うつの経験者です。当時夫は忙しくてほとんど帰宅せず、ワンオペ育児をしていました。そんな状況の中で、子どもがずっと泣いていて、ひととおり手を尽くしても、泣いている原因がわからず、子どもをかわいいと思えない瞬間が増えて…病院に行ったら産後うつだと診断されました。
今思うと、もっと周りの手を借りたり、アプリを活用するなどして、もっと楽をしようと思えれば良かったのかなと。その分親子で触れ合う時間を増やせたらよいのですから」
株式会社イースマイリーの矢澤修さんは、“イクメン”という言葉の弊害について触れました。
矢澤「最近はイクメンという言葉が良いように扱われていますが、イクメンと言われている多くの旦那さんの育児の割合はせいぜい10%程度、育児の良いところ取りをしているだけじゃないかな? と疑っています(笑)
以前勤めていた会社の上司に“自分は育児をしているのではなく、育児をさせていただいていると思えばいい”とアドバイスされたことがあって。パパたちもそういうマインドで子どもと触れ合ってみると、感じ方が変わるのではないでしょうか」
インターナショナルスクールの情報を発信する村田 学さんからは、育児に「海外の軸(価値観)」を取り入れてみることのメリットが紹介されました。
村田「これは極端な例かもしれませんが、来年、小学生向けのボーディングスクールが広島に開校します。
そこではなんと小学校1年生から寮生活を送るんです。この“育児と教育のプロフェッショナルにすべてアウトソーシングしてしまう”という日本にない視点は新鮮ですよね」
矢澤「実は、来年度から渋谷区では、認可保育園に入れなかった0-2歳児を対象に1時間250円でベビーシッターをお願いできるような仕組みができるそうです。(※2)
行政も着実に動き始めているので、この先、育児や教育のアウトソーシングが定着していくのは時間の問題かもしれませんね」
▼「子育てしやすい環境」のために明日からできるアクションは?
とはいえ、いますぐにできるアクションを知りたい、と思っているママやパパもいるでしょう。そんな皆さまに対して、最後に各パネリストからの提案がありました。
彦坂「1歳未満のお子さんがいる方は、ぜひ授乳ノートをダウンロードしていただきたいです(笑) ツールを使い記録することで、この時間はお子さんが寝る時間だとわかるようになり、自分の時間を作れるようになります」
村田「マインドセットというところで言うと、子育て奴隷から解放されることが大事だと思っています。アウトソーシングとテクノロジーを使ってどんどん楽になってもらいたいです」
園田「寝ないと鬱になりやすくなりますので、きちんと眠ることです。寝るだけでかなり回復します。実現は、確かに難しいですが、ぜひ本人、また周囲の方が意識していただければと思います」
矢澤「僕の友人で夫婦円満なファミリーの共通点は、月に1回など定期的に夫婦でデートしていることです。
子どもがいると夫婦でデートできなくなってしまうので、意識的に夫婦でデートして息抜きするのもいいと思います」