連載記事:パパ小児科医の子ども健康事典

【医師監修】りんご病感染「妊娠初期の流産、胎児水腫の恐れ…」症状、予防、潜伏期間<パパ小児科医の子ども健康事典 第18話>



■りんご病の合併症「妊娠初期の流産・胎児水腫」

通常の経過でしたら、少しの風邪症状と発疹のみですが、時に合併症を起こします。

年長児や成人では関節痛を起こすことがありますし、遺伝性球状赤血球症という先天的な貧血の患者さんに感染すると急激に貧血が進む場合があります。

そのほか、肝炎、筋炎、脳炎などまれとはいえ、多彩な合併症があります。なかでも特に注意しなければならないのが、妊婦さんです。
【医師監修】りんご病感染「妊娠初期の流産、胎児水腫の恐れ…」症状、予防、潜伏期間<パパ小児科医の子ども健康事典 第18話>

イラスト:ぺぷり


妊娠初期に感染することで流産を起こす可能性や、おなかの赤ちゃんに感染して「胎児水腫」という病気を発症する場合があります。

胎児水腫は、心臓の機能が低下して全身がむくむ病気で、胎児治療や出生してからの集中治療が必要となる重大な病気のひとつです。

ヒトパルボウイルスB19は、一度感染すると免疫がついて、健常者では生涯感染することはありません。よって子どもの頃にりんご病になったことのある妊婦さんは大丈夫です。


しかし、りんご病にかかっていない(かかったかどうかわからない)妊婦さんは、りんご病に対して不安を抱えて過ごさざるを得ません。

■りんご病の予防「ワクチンも抗ウイルス薬もない」

どのように予防すれば良いのでしょうか?

残念ながら、りんご病を100%防ぐ手段は現在のところありません。

ワクチンは開発中で実用化はされておらず、また抗ウイルス薬もないため治療は自然経過に頼るしかありません。

そのため、できるだけ感染の機会を避けることが重要ですが、多くは幼稚園児〜小学生に流行が見られる感染症のため、特に妊娠初期は子どもが大勢いるような場所は避ける方が無難です。

しかし、前述の通り発疹が出なければりんご病かどうかわかりませんし、症状が乏しい場合もあって感染者がどこにいるかわからないため、知らない間に感染してしまう危険性があります。

手洗いやうがい、人混みを避けるなど一般的な対策しかなく、完全に防ぐことはできませんが、妊婦さんに感染した時の合併症の重さ・不安感を考えると、周囲の人ができる限りリスクを減らすために努力しなければなりません。

つまり、微熱や風邪の症状であったとしても、りんご病である可能性も考え、妊婦さんへの感染を防ぐために登校や出勤を控えるべきでしょう。

そもそも、ほかの病気であったとしても、風邪のような症状であれば休むべきです。
しかし、軽い症状ではつい無理をしてしまうかもしれません。

そんな時「もしかすると、妊婦さんと赤ちゃんに重大な結果を及ぼすかもしれない」と思いをめぐらせていただきたいと思います。

実際、妊娠中にりんご病に感染して赤ちゃんが胎児水腫となったママからも、「りんご病が妊婦にとって怖いものだとは知らなかった」「自分を責めた」「病気への認識が広まって欲しい」といった声が聞かれます。

100%防ぐ方法がないからこそ、妊婦さんはもちろんその周りの大人も子どももみんなが注意することで、感染を防ぐことができるでしょう。

ちょっとした体調不良の時にもできるだけ外出を控えるようにする。それは、りんご病の脅威から妊婦さんと赤ちゃんを守ることにつながるのだと思います。

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