連載記事:今日からしつけをやめてみた

しつけは誰のため? 「良い子」を演じる子どもたち【今日からしつけをやめてみた 第4回】



■「好きなこと」があれば生きていける!

しつけは誰のため? 「良い子」を演じる子どもたち【今日からしつけをやめてみた 第4回】

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――でも「あるがままでいい」と思うことは大人でも難しいことですよね…。まわりに振り回されず、自分の軸をしっかり保ちながら生きていくにはどうすれば良いのでしょう?

柴田先生:そうね。私が小学校低学年のときに、母から「人間、好きなことがひとつあれば、生きていけるから」といわれたことがあるの。

――好きなことがあれば、生きていける?

柴田先生:当時「ピアノが習いたい」と母にいったら「そう。あそこにピアノ教室があるからいっておいで」って。私、1人で教室に「習いたいです」といいにいったの。ほかの友だちはみんな親がついてきてるのに(笑)。

やりたいことは応援してくれたけど、手取り足取りじゃなかったわね。
自分のやりたいことは自分の力で進まなくちゃいけない。

――自分の力で…。「好きなことがあれば生きていける」というのは、好きなことを仕事にして食べていく、ということでしょうか?

柴田先生:当時は私も意味がよく分からなかったけど「好きなことがあれば食べていける」ってことではなかったわね。「今、何かしら好きといえるものがあれば大丈夫」ってこと。

――好きなことがあれば「大丈夫」…?

柴田先生:母は専業主婦で大変だったけど「今日は民芸です」といって、月に1度、外出するときがあった。私はどこへでも母についていく子だったけれど、その日だけは「一緒にいく!」とはいえない空気があったの。

18歳になったとき、ようやく「今日は一緒に民芸にいこう」と連れていってもらえたんだけど、劇団の芝居だったの。社会問題を扱った難しい芝居が多かったけど、一緒にいくことで私は母の考え方を知った。


「母はこういう考え方を支持してるのか」と理解できたわ。

――親がどういう考え方を持っているかって、聞く機会をつくらない限り分からないですよね。

柴田先生:そうね。母は何より、自由を求めていた人だったと思う。「好きなことがひとつあれば生きていける」といったのはたぶん、好きなことがひとつあれば「自分がブレない」ってことじゃないかな。

子育てや仕事で自分を見失ってしまうこと、いっぱいあるじゃない? そのとき、自分が好きといえるものに出会うと、自分を取り戻せるような気がしない? 

好きなことって何でもいいのよ。「その先に何があるの?」ってよく聞かれるけど、そこに意味や価値はなくてもいいの。

例えば、私は山登りが好きで、すごく疲れていても大自然を感じると、空気が体の中にはいってきてホッとできる。
帰ってきたような気分になるのね。

だから、好きなことがあると「私はこういうのが好きなんだ」「私はこう思うんだ」って自分を取り戻せる。まわりにおびやかされず、自分を守っていけるんだと思うの。

■生き抜くために「たくさんの友だち」より大切なこと

――それは、親だけではなく子どもにもいえることですよね。

柴田先生:そう。子どもにとって、お友だちがいるかいないかはそんなに大事なことじゃない。自分がやりたいことを見つけられる力を持っていることのほうが、ずっと大事だと思うの。

あるとき、りんごの木にお迎えにきたお母さんが「今日はお友だちと遊んでましたか?」って聞いてきたのね。
だから私は「お友だちと遊ぶことは、そんなに大事なことではないです」って答えた。

お友だちはだんだんできていくもので、つくろうとしてつくるものではないのね。ひとりぼっちでもいいじゃない? 昨日も2歳の子がずーっとひとりで泥遊びをしていたんだけど、「ああ…! たっぷり自分の時間を過ごしてるなあ」ってうれしく思ったの。

――友だちは多いほうがいい、ひとりでいるより大勢でいたほうがいい。そう思い込んでいた気がします。

柴田先生:大人も子どもも、基本は自分ひとりよ。ひとりでも不安にならず、夢中になれることがあることがどれだけ大事か。

だから、他人の視線を気にするあまり、やってしまうのが「しつけ」だと思う。
他人を気にしすぎて、自分がもろくなっていない? それより、まず自分を大事にしようって思うのね。

――人の目を気にしていると、自分がもろくなる…。

柴田先生:毎日毎日、子どもに「静かにしなさい」「良い子にしなさい」といっていると、お母さんは自分が自分じゃなくなるようでつらくなりますよね。

もし、そう感じたのなら「うちの子うるさいな。耳栓買うか」くらいに思えばいいのよ(笑)。

――耳栓!(笑)

柴田先生:そう思わなきゃ、周囲に気をめぐらしすぎて自分を見失っていくと思う。今のあるがままが、どんなに大事かっていうことね。


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