イラスト:まえだゆずこ
「その子自身の成長に着目してあげると、学習意欲と向上心が育ちます」と言うのは、花まるグループ「西郡学習道場」代表の西郡文啓(にしごおり ふみひろ)さん。失敗を「今、できないこと」と考えたら、「明日には、できるかもしれない」と、目線が未来に向かいます。
そうはいっても、そもそも「失敗するのが嫌」とトライする前にフリーズしている場合は、どうしたら良いのでしょうか? 引き続き西郡さんにお話を伺いました。
■「失敗するのが怖い」と思う人に伝えたい言葉
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失敗するのが嫌だから、絶対にやりたくない。正解はわからないけれど、自分自身で何らかの判断を下さなければいけない…。
そんな状況は、大人になってからもたくさんあります。そんなときに、背中を押してくれるフレーズを、西郡さんに教えていただきました。それは、
「まぁ、なんとかなるんじゃない?」
「どんな状況でも、人の背中を押してくれるのは、『まぁ、なんとかなるんじゃない?』という根拠のない自信、いわば
自己肯定感なんです」(西郡さん)
■「失敗しないでね」と言いがちな親に必要なこと
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自己肯定感。この言葉も、教育の取材をしていると必ずといっていいほど出てきます。では、自己肯定感は、どうすれば育つのでしょうか?
「自己肯定感。いわば自分の芯とも言える部分をしっかり育てていなければ、人は自分自身を認めることはできません。
その芯とは、
親からの絶対的な愛情です。親からの惜しみない愛情が、人生を生きていく上での拠り所となるのです」(西郡さん)
「子どもを絶対的に愛する」ということ。
そんな境地に強い憧れは、あります。けれども、自分が想定する「枠内」に子どもが入ってくれていれば愛せるけれど、そうでなければそこまで言い切ることはかなり難しい…。正直に言ってしまえば、筆者は「その程度」をウロウロしている母です。
そして、それは、そのまま「失敗しないでね!」「そんなことしちゃダメでしょ」という子どもへのメッセージに繋がっていくということに気がつきました。このあたり、どんなふうに考えていけば良いのでしょうか?
■正解のない世界を生きるための「自分軸」とは
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西郡さんは言います。「自分だけの基準がなければ、判断はすべて世間的な価値基準に従うものになってしまいます。
これからは、
自分自身で何が正しいかを選ぶ軸が必要です」
そのために必要なことは、
「感覚」を蓄積していくことだと言います。
「『感覚』とは、外から与えられた知識や世間的な価値基準などとは別のところで判断を下すための
絶対的な自分自身の基準ともいえます」(西郡さん)
「『感覚』という、一見捉えどころのないものを言語化できるようになることで、ただ感じるだけではなく、自分のなかに哲学を蓄積していくことができるようになります」とも西郡さんは言います。
「行動して、感じて、考えて、言葉にする。その連続が自分の哲学となり、
正解のない世界を生きていく上での自分なりの基準になるのです」(西郡さん)
■世界的に重視されてきていること
実際のところ、欧米では「感覚を磨く」という意味でアートの重要性が高まっているといいます。かつてビジネスの世界で重視されていたMBA(経営学修士)を持っている人よりも、MFA(美術学修士)を持っている人の方が評価されるようになってきているそうです。
たしかに、いままでの教育のなかでも、「感覚」を養う勉強はありました。わかりやすい例としては、図工や音楽、美術です。
「それだけではなく、じつは国語や算数の中にも感覚を磨く要素が潜んでいるんですよ」(西郡さん)
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●算数で「感覚」を磨く
平行四辺形を見たとき、その中に二つの三角形をつくる補助線がパッと浮かぶ
●国語で「感覚」を磨く
小説などを読んで、主人公に感情移入したり、細かな描写に自分と近い感覚を見出す