『日本一の「ふつうの家ごはん」 自由の森学園の学食レシピ』より
子どもに安全な食材でおいしいご飯を毎日作ってあげたいという思いはどの親にも共通するでしょう。ただ、家事に育児に仕事に忙しい日々の中で、それを実現するのは簡単なことではありません。
星野源さんなど多くのアーティストを輩出している私立自由の森学園(埼玉県飯能市)では、創設時から35年に渡って、安全な調味料や食材を厳選した食事を提供し続けています。今回は、食生活部の泥谷さんに、子どもに必要な食について、話を聞きました。
「子どもに『自由』をどう教える?」の続きです。
お話をうかがったのは…
●泥谷千代子(ひじや・ちよこ)さん自由の森学園食生活部のリーダー的存在。栄養士の資格を持ち、学園創設時から学食の運営に携わり続けてきた。
■ここがすごい! 自由の森学園の学食
昼食時には学食は生徒であふれかえっていた
――そもそも、自由の森学園の学食はどのようにしてできたのですか?
35年前に自由の森学園が創設されることが決まったとき、学食で
「本来の食事」を提供したいという話になったのです。伝統的な製法で作られた調味料や農薬や添加物を使用しない食材で、丁寧に作った食事を子どもたちに食べさせたいと。
軌道に乗るまでは手探りの状態でしたが、5~6年たつと、メニューが決まり、食材の仕入れやローテーションも確立されてきて、だいぶ落ち着いてきました。
食堂が大きく注目されたのは、2010年に「日本で一番まっとうな学食」(家の光協会)という本が出された時からでしょうか。今では、全国の学食の方々からの視察や、メディアからの取材もたびたび受けるようになりました。
――自由の森の学食は、どういったことをモットーにしているのでしょうか。
自由の森では、子どもたちに
「自分が何をしたいか」をじっくり見極めさせるような教育をしています。
私たちはそのサポーターで、家庭でお母さんが作っているような食事を、安心できる食材で提供したいと考えているんです。
調味調選びにはこだわりをもつ(『日本一の「ふつうの家ごはん」自由の森学園の学食レシピ』より)
――調味料や材料について厳選されたもののみを使っているというのは、すごく特別なことのように思えます。
「
その子がその子らしく生きてほしい」ということが、この学校の根本的な考えです。だから、食堂でも余計なものを使わない、本来の自然の生き方を子どもたちに伝えていきたいと思っています。
自然はお日様をもらい風を受けて、小さな種から大きくなりますよね。私たち人間も、そもそも自然の生き物なので、いろいろ加えるのではなく、本来のおいしさをそのまま体に入れる状態もいいんじゃないかなと。だから、
特別なことをしているとは思っていませんね。
■大人気メニューのカレーにこめた思い
――カレーのバリエーションが多く、とても人気のメニューなんですよね。
ポークカレー、チキンカレー、ドライカレー、ベジタブルカレー、豆のカレー、ラムカレーなどがあります。
生徒たちの要望に応える中で、どんどん増えてきたのですが、「ラムカレーなら食べる!」と言う生徒などもいて、好みはわかれているようですね。
――どんなところが、他のカレーと違うのでしょうか。
『日本一の「ふつうの家ごはん」 自由の森学園の学食レシピ』より
スタッフがインドで学んできたレシピをベースに、市販のルーではなく、
複数のスパイスを調合して、それを乾煎りしてから使っています。チキンカレーの場合は、鶏肉をヨーグルトなどの下味に漬けてから調理して、味をまろやかにしてみたり、仕上げにガラムマサラで香りづけをしています。
――手が混んでいますね。
インドでは、日本での「みそ」のように、各家庭でカレーの味が違うそうなんです。だから、それと同じように、ここの学食でもいろいろなスパイスの調合を試して、今に至ります。
毎年入ってくる生徒によって、食の好みが違うのですが、それに合わせながらこちらも提供するものを調整していきます。
本来の家庭の形を目指しているんですよね。
――子どもたちは、学食の食事についてどう思っているんでしょうか。
ここの学食が特別だということは、あまり感じていないと思います。卒業生に聞くと、多くの子は「ここで食べていた時はもちろんおいしかったけど、それが普通だと思っていた。気づいたのは卒業してから」と話しますね。