■簡単に家庭でもできる「本来の食事」
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――ここまでお話を伺ってきて、素晴らしい食事を提供されていると思ったのですが、家庭では同じようにするのは難しそうに思えてしまいます。
今のお母さんたちは、とても忙しいですよね。仕事をして、子どもにきちんとした教育を受けさせたいとなると、ゆっくりお茶を飲むとか、好きな映画をみにいくといった何か自分のための栄養になるようなことをする時間が取りにくくなっているように思います。
――その中で、どういった食事作りができるか、何かアドバイスはありますか?
材料を入れるだけでさまざまなメニューが作れる電気調理鍋を使うのはいいですよね。煮込み料理など、とてもいいと思います。
また、冬の間は
鍋がおすすめです。いろいろな味、食材が入れられますから、野菜もたくさん食べられるし、豆腐の日だったりお魚の日だったり、メインも変えられます。
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――「本来の食事」と聞くと、一汁三菜を用意しなければいけないのかなと思っていました。
学食では、マグロの刺身や、きゅうり、山芋、納豆、温泉卵などを全部ご飯にのせて食べる「とろとろ丼」というメニューも出しています。それに、おみそ汁さえあれば十分ですよね。
ほかにも「豆腐丼」とか「焼肉丼」とか、どんどん
「丼チャレンジ」するのもいいですよ。
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親が何を考えて出したかが子どもの栄養になるので、そこが一番大事だと思っています。豆腐だけはお豆腐屋さんでおいしいものを買おうとか、それだけでもいいんです。完璧主義にならなくていいんです。
――生徒の約6分の1が寮に住んでおり、三食をここでとっているそうですが、栄養バランスについてはどのように工夫していますか?
お昼時に生徒たちはうれしそうに食事を受け取る
朝と夜はバイキング形式にしているので、
食材をたくさん使うことで、「これは嫌いだけど、これなら食べられる」と、栄養が偏らないようにしています。舌が未発達な子どもたちは、苦いものが食べられなかったりしますが、大人になる中で変わってくるので、「少しずつでも食べてみて」と言っています。
――一食だけで栄養バランスを完璧にするのは、家庭でもなかなか難しいところです。
毎食、栄養バランスを完璧にするのは無理ですよね。三食でバランスを考えると、なんとか整えることができます。
みそ汁の中に
たくさん野菜を入れたり、カレーにも定番の具材だけじゃなく、キノコやカブなどちょっと違う野菜を入れて一緒に煮込んでいくと、栄養バランスがとれるだけでなく、違う味も楽しめますよ。
■子どもにとって本当に「いい食事」とは?
――子どもに「本来の食事」を提供したい、でも完璧にやり始めると、その弊害もあるように思います。
これは子どもに「食べてほしくない食物」は、親しか防ぐことができません。
でも、友だちの家でおやつをいっぱい食べたらだめだということではないと思うんです。友だちと仲良く過ごす時間だって、とても大事ですよね。
親は、「家ではこういうものを選んでいるよ。こういうものもあるけど、こういった危険性もあるんだよ」と、
食を学びの場にしていけばいい。子どもは必ず、舌で安全なものを覚えるから、そうした学びがあれば、安全なものを選んでいってくれると思います。
――たしかに、食にこだわりすぎて完璧にやろうとすると、親自身が疲れてしまいそうです。
食にいくらこだわっていても、家族仲が悪かったら意味がないですから、何よりも家族が仲良くいることが一番大切です。その仲良くしているところを見て、子どもは育つから、それが
大きな心の栄養になります。
そこに安全なおいしいという要素が加わったら、最強じゃないですか。
学食で泥谷さんは終始生徒と会話を絶やさなかった
――忙しい中でも、やはり食事は未来の子どもたちにつながるから、大切にしていきたいところですよね。
本当にお母さんたちは忙しいけれど、その中でも自分も楽しみ、家族も楽しむような時間を作れるような生活の仕方にシフトしていけるといいですよね。外食をしてもいいし、買ってきてもいい。そこにちょっと何かを付け加えて家族が好きな味にしたり、安全なものを選んだりする。
気持ちをそこに添えてあげるだけで全然違うんです。食を通じて、
「お母さんが自分を見てくれている」というふうに子どもたちは感じられると思います。それが、一番の「いい食事」なのではないかしら。
ここまで、子どもたちの食について、自由の森学園食生活部の泥谷さんに話を聞きました。学食の素晴らしさだけでなく、家庭でも生かせるヒントを多くもらえたのではないでしょうか?
二回にわたって自由の森学園の教育と学食についてお話を聞いてきました。「自由」との付き合い方はとても難しいけれど、やはり大人が子どもを温かく見守ることの大切さは、共通していたように感じます。親自身も自分の好きなことを実現しながら生きていけるよう、しっかりと子どもと向き合っていきたいものですね。
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