■【子どもの熱中症】教えてドクターQ&A
最後に、「教えて!ドクタープロジェクト」に熱中症にまつわる心配事について、教えていただきました!
――マスクをしながら、熱中症を予防するためにどのようなことができますか?
まず大前提として、マスク着用している場合はとくに子どもが熱中症を起こしやすくなります。このためマスクをしながら熱中症予防を考えるということは、「暑い日に長袖で外出しても暑く感じない方法を考える」と同じようなものです。
ですから、「
子どもは必要なときにマスクをつける」という考え方をお勧めします。
――子どもの体にはどのような特徴があるのでしょうか?
まず、子どもは大人より呼吸回数が多いです。大人は1分間に12〜20回ですが、乳児は30〜50回/分、幼児は20〜30回/分です。呼吸回数が多いことは、
マスクで口元が覆われていると十分な空気を吸えないことになり、大人より苦しくなりやすいことを意味します。
また、呼吸筋が発達していないため、息を深く吸い込む
深呼吸が大人ほど上手にできません。そのため、呼吸が苦しくなると深呼吸ではなく、呼吸回数を増やして対応します。
ただでさえ多い呼吸回数がさらに増えます。心臓や肺も未発達なため、十分な空気を取り込めないと、これらの臓器にも負担がかかります。
――子どもにとって、マスクの着用が大きな負担になることがわかりますね
日本小児科医会は、
2歳未満のマスク装着はしないように注意勧告しています。3才以上でも注意が必要です。
そもそも、
子どもは大人よりも熱中症にかかりやすいという特徴も知っておいてください。
汗腺が未発達で、体温調節が大人ほどうまくできない、体重あたりの体表面積が大きく、暑いところで体温が上がりやすい、などです。息を吐くことで、人は体の中の熱を外に逃がすことができるのですが、
マスクをすることで熱がこもってしまいます。子どもの熱中症リスクはさらに高くなります。
――それでは、子どものマスク着用についてはどのように対応すればいいのでしょうか?
これまでの報告から、子どもの感染の多くは
保護者から感染していること、学校や保育所などでの
クラスター発生の可能性は高くはないことがわかっています。
子どもの行動範囲は学校・保育園と家が中心です。いろいろな所に出かける大人の行動範囲と比べるとはるかに狭いのです。
つまり、感染リスクは大人が圧倒的に大きいのです。子どもを守るためには、
大人自身の感染症対策がもっとも大切だと言うことを知ってください。
したがって、熱中症対策としては、「
必要なとき以外にはマスクをしない」ことをお勧めします。外で遊ぶとき、運動するときにマスクをしてはいけません。
また、「
暑くて嫌だ」、「
気分が悪い」という子どもの訴えを尊重し、3才以上であっても強要してはいけません。
そして普段の熱中症対策と同じように、こまめな水分補給と、しっかり休養をとることです。病み上がりは体力が落ちていて熱中症のリスクが上がるため注意が必要です。
マスク以上に効果的な感染症対策が、
手洗いです。みんなで遊ぶ前と後、食事の前後、トイレに行った後は必ず手洗いをしてください。
――熱中症による頭痛や発熱などの症状は、新型コロナウイルスをはじめとする他の病気との見分け方が難しく感じます。どうやって判断すればいいでしょうか?
もともと夏に増える熱中症は、
胃腸炎や夏かぜとの見分けが難しいです。この見分けは医師でも難しい場合が少なくありません。
今年の夏も、頻度としては新型コロナウイルス感染症より圧倒的に夏かぜや胃腸炎の方が多いと思います。
保育園や学校で胃腸炎や夏かぜが流行している、家族に似たような症状がある、などは参考になる情報です。また公園で遊んでいる途中にぐったりするようなら熱中症の可能性も考えなくてはいけません。
夏に流行る病気はいずれもウイルス感染症が多く、
水分を摂って安静にすることでよくなります。熱中症の対策もこまめな水分補給と体の冷却です。
見分けは難しくても、
最初の対策は大きく変わらないので、本人の様子をしっかり観察し、ぐったりする、水分摂取ができないなどの症状があれば早めに医療機関で相談してください。
※本連載で紹介する情報は、2020年6月30日時点のものです。
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