子どもの人生を左右する “お金の教育” 何からどうはじめる? 金融教育ディレクター橋本長明さんに聞く【前編】

目次

・「お金の教育」とは “生きる力を育むこと”
・基礎教育 1:お金の価値観
・基礎教育 2:お金を使う
・基礎教育 3:金銭管理
・基礎教育 4:お金を稼ぐ
子どもの人生を左右する “お金の教育”  何からどうはじめる? 金融教育ディレクター橋本長明さんに聞く【前編】
生きる上でなくてはならないお金。だからこそ、子どもには正しい知識を身につけてほしいと願うものです。でも、親である私たちはお金について学校で習う機会が少なかった世代。お金に対して、苦手意識がある方も多いのではないでしょうか。

「お金の知識に自信がなくても、大丈夫。お金の教育は“生きる力を育むこと” で、“知識”よりも先に伝えるべき大切なことがあるんです」と話すのは、金融教育ディレクターの橋本長明さん。


子どもの人生を左右する “お金の教育”  何からどうはじめる? 金融教育ディレクター橋本長明さんに聞く【前編】

橋本長明さんの著書『すてきな相棒! おかね入門』(リトルモア刊)


日本銀行出身でお金についての講演も多数おこなっている橋本さんですが、「じつは私も資産運用は苦手で…」と苦笑い。親しみやすい人柄とポジティブなわかりやすい解説で、2月に上梓された『すてきな相棒! おかね入門』(リトルモア 刊)も評判をよんでいます。

そんな橋本さんに、家庭でいつからどのようにお金の教育をしたらいいのか、2回に渡ってお話を伺います。前編の今回は、親が知っておくべきことや4つの基礎教育についてです。

橋本長明 プロフィール

金融教育ディレクター、ブランディングディレクター、選曲家ほか。
東京生まれ。大学卒業後、日本銀行入行。静岡支店、情報サービス局、金融広報中央委員会事務局、調査統計局などに10年在籍し退職。
日銀では、学校教育における金融教育の概念作りや「金融教育元年」事業に注力したほか、広報、ブランディング、景気分析などを経験。その間、いろいろな個人活動で人々と出逢い、現在は金融教育やブランディングを軸とした講演・執筆活動、企業や個人のブランディング、銀行の金融教育企画・運営、選曲家/DJ、ISETANの企画など、人や社会が楽しくなり、何かを考えるきっかけを創る活動をしている。文化服装学院特別講師、日本FP協会会員。

「お金の教育」とは “生きる力を育むこと”

この春から高校の授業で “債券” や “投資信託” が教えられることになった、というニュースはご存知ですか? じつは2020年には小学校、2021年には中学校ですでに新たな金融教育がスタートしています。

このタイミングでお金の教育をはじめなきゃと考えるご家庭も多いかもしれません。でも、何からはじめていいのか悩みますよね。

子どもの人生を左右する “お金の教育”  何からどうはじめる? 金融教育ディレクター橋本長明さんに聞く【前編】
「“お金の教育”というと、イメージで投資や資産運用など、金融商品やお金を増やすテクニックの話に偏りがち。でも、そもそもお金自体に価値はありません。
だって無人島にお金を持っていってもただの紙切れで、何の役にも立ちませんよね。

お金は、使う場所があってこそ機能するもの。あくまでいまの経済社会のなかで役立つ “便利な道具”なんです。まずそこをきちんと理解したうえで、その道具=お金を使ってどんな夢や目標を叶えたいか、どんな暮らしをしていきたいかを考えることが重要です。

それを理解していないと、お金だけを追い求めたり詐欺に関与してしまったり、人生が大きく狂ってしまいます。まずはお金とは何か、そのお金を使ってどうなりたいかをお子さんといっしょに考えてみましょう!」

子どもの人生を左右する “お金の教育”  何からどうはじめる? 金融教育ディレクター橋本長明さんに聞く【前編】
子どもの人生を左右する “お金の教育”  何からどうはじめる? 金融教育ディレクター橋本長明さんに聞く【前編】
選曲家/DJの顔も持つ橋本さんのご自宅兼オフィスには、大切にしているレコードやアートが並ぶ。大好きで集めているという愛らしい鳥モチーフのオブジェも。

もともと先進国の中では遅れをとっていた日本の金融教育。しかし、キャッシュレス社会でお金を使う実感が乏しくなるなか、成年年齢が18歳に引き下げられて、高校生のうちからクレジットカードや住宅ローンが組めるようになったことなどから、金融教育の授業が必修化されました。

また、少子高齢化が進み、自分たちで資産形成しなくてはならない状況が差し迫ってきていることから、幼い頃から金融リテラシーを身につけて、お金の管理をできるようにしておくことが重要視されるようになってきました。

「そういう時代だからこそ、自分の軸をしっかり持って、将来叶えたいことは何なのか、そのためにお金がどれだけ必要なのか、その必要な分をどうやって稼ぐかという思考プロセスを経ることが大切。

子どもの人生を左右する “お金の教育”  何からどうはじめる? 金融教育ディレクター橋本長明さんに聞く【前編】
たとえば、子どもが“大金持ちになりたい!”といったら、“何のために?”と問いかけてみましょう。その答えが、“お菓子がたくさん食べたいから!”でもいいんです。


自分がどうなりたいか、そのために何が必要かを考えると、社会の仕組みを知ろうとするし、どういう社会にしていきたいかを考えることにもつながります。また、その過程で決断する力も育まれていくはずです。

お金の教育は、広義にいえば“生きる力を育む”こと。日本の金融教育プログラム(金融広報中央委員会<事務局:日本銀行情報サービス局内>)でも掲げられているんです」

基礎教育 1:お金の価値観

子どもの人生を左右する “お金の教育”  何からどうはじめる? 金融教育ディレクター橋本長明さんに聞く【前編】
まずは、お金そのものには価値はなく、道具であるという認識を持たせること。つぎに、その道具を使って自分はどうなりたいのか考えること。

そしてその過程を経てから、金融教育の基礎教育である4つの分野「お金の価値観」「お金を使う」「金銭管理」「お金を稼ぐ」をマスターするといいそう。


子どもの人生を左右する “お金の教育”  何からどうはじめる? 金融教育ディレクター橋本長明さんに聞く【前編】
「お金の価値観では、お金自体に価値はないと覚えてもらうことです。1万円札の場合、製造費用は約22円。国の信用で1万円となるが、戦争・紛争などで紙屑のようになることも。

一方、お金には『価値交換、価値尺度、価値保存』という3つの大変優れた機能を有した、経済社会にはなくてはならない便利な道具。生きるため、夢や目標を叶えるために必要であり、道具であるお金を追い求める人生はおかしいんです」

金融広報中央委員会では、小学生から高校生まで年代別に教えるべき金融教育の目標をまとめています(※)。

子どもの人生を左右する “お金の教育”  何からどうはじめる? 金融教育ディレクター橋本長明さんに聞く【前編】
金融広報中央委員会(事務局:日本銀行情報サービス局内)とは、政府や日本銀行、地方公共団体や民間団体等が協力して、中立公正な立場から、暮らしに役立つお金の情報提供や、金融教育の支援をおこなっている団体。

橋本さんは日本銀行時代にこの委員会にたずさわり、まだ身近ではなかったお金の教育に親しみを持ってもらえるようブランディングに尽力するなど、いまの金融教育のベース作りに注力しました。

※金融広報中央委員会「金融教育プログラム 学校における金融教育の年齢層別目標」(2021年3月改訂版)



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