2017年1月18日 16:00
子どもの精神薬服用をどう考える?揺れる親心に寄り添うスクールカウンセラー
多動が続き、抑制できない小学4年生の場合
出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=10272002477
こんにちは、國學院大學教授の池田行伸です。
私はこれまでスクールカウンセラーとして、定期的に学校の教育相談室に勤務し、カウンセリングにあたってきました。
今日のお話は、15年程前、新年度になり新たな小学校にスクールカウンセラーとして赴いた時のエピソードです。
教育相談担当教員に紹介されて、担任教師が相談に来ました。
4年生にもなるのに5分と椅子に座っていられない男子生徒がいるという相談でした。放っておくと立ち上がり、後ろの黒板に絵を描いて遊んでいる。教師が手を引いて椅子に座らせると抵抗せず素直に従う。しかしまた数分後には立ち歩く、と言うのです。
教師が椅子に座っている生徒の手を握っていると立ち歩かないのだが、四六時中手を握っているわけにもいかず困っているとのことでした。
ちょうど、このような多動が顕著な子どもに対して薬物療法が開始された時期でしたから、医療との連携も選択肢に入れた支援を検討することにしました。
まずは生徒の親と話す機会を設けて欲しいと担任にお願いし、母親との面会を実施します。
すると母親は、開口一番に、
「実は子どもが万引きして悩んでいます。」
と、学校での問題行動以上にもっと深刻な悩みを打ち明けてきました。
友人と店に入り代金を払わず店外に出て、出たその場で商品を開けるのだと言うのです。そのためすぐ店員に見つかります。親が弁償し、父親が万引きがどんなにいけないことかを深夜に及ぶまで教え、懇々と諭しました。生徒も泣きじゃくり、「もうしません」と何度も何度も繰り返したそうです。
母親の目にも本当に改心したのだと映ったのですが、次の日また、同じことをやってしまうということでした。
この話を聞き、私は専門医への受診を勧めました。しかし母親は「それを考えているのですが父親が受診、服薬に反対しているのです。」と答えましたが、「このまま放置しておくと、改善する方向には向かわないだろう。専門医の支援を受けた方が良いと思う」と説得しました。しばらく経った勤務日、朝登校するなり教育相談担当教員が喜々とした表情でやってきて、「病院で薬を処方され、医師の指示に従い、朝に服薬して登校したら1時間立ち歩くことなく椅子に座っていたと、担任が驚いていました。