発達障害の息子へのいじめを目撃。叩かれた息子が取った行動は…
友達との遊びでも刺激を求め続ける、ADHDの息子
出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=30702000024
わが家には、自閉症スペクトラム+ADHDと診断されている6歳の男の子がいます。
息子は基本的に自分から進んで他人と関わるということはなく、幼稚園でも「友達に誘われれば遊ぶ」「たまたま隣にいた誰かと遊ぶ」ということが多かったようです。
積極的に関わって来てくれるお友だちに関しても『仲良しのお友だち』という意識はないようで、誰と遊んでいたかもすぐに忘れてしまいます。楽しそうにしているのは、ADHDの特性の一つでもある「刺激を求める」という部分が満たされるからではないかと考えています。
そしてその「刺激を求める」という特性が、一歩間違えるといじめの原因になってしまうのではないかと思う出来事がありました。
ある日プールで見た、友達と「遊ぶ」息子の様子
出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=11021000862
先日、水泳教室で泳ぐ練習をしている息子を眺めていた時のことです。
10人ほどのグループレッスンで順番待ちをしている際、後ろにいた女の子たちが息子に声をかけ、楽しそうに遊び始めました。そのうち、女の子の一人が息子の持っていたビート板を取り上げたのです。
息子は「新しい遊びが始まった!」とばかりにぴょんぴょん跳ねてビート板を取り返そうとしました。女の子は隣の女の子にビート板を渡し、息子はいつまで二人の間を行ったり来たりしましたが、なかなか取り返せません。
そのうちに、女の子が息子の頭をビート板で叩き始めました。やめて、という素振りを見せながら逃げる息子。女の子はケラケラ笑いながら息子を叩き続け、その様子を見ていた隣の女の子も同じようにビート板で息子を叩きはじめました。
息子は水に潜って逃げます。でも女の子は息子をビート板で上から押さえつけます。息が続かず水面に顔を出したいけれど、押さえつけられて出れず、息子はもがいていたのです。
担任の先生は順番が回ってきた子を指導しており、監視員はあいにく反対側にいて気づいていません。私が慌てて別フロアのスタッフに止めてもらうようにお願いに走っている間も、それは何度も繰り返されたそうです。
ようやく注意が届き、一連の行為は治まりました。
しかし驚いたことに、息子はまだその女の子たちと遊ぼうとしています。
遊びがエスカレートし、いつの間にか暴力を受けていたり、命が危険にさらされているということに気がついていないのです。
息子はどうすれば「嫌なことをされている」ことに気づいて、逃げることができるだろう
出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=10161017472
女の子の行為にも問題はあります。しかし、刺激を受けて喜んでいる息子の様子が、行為をエスカレートさせてしまったという側面も見逃してはいけないのだと思います。
決して「いじめられる方にも原因がある」という意見を受け入れているわけではありません。
発達障害やその疑いのあるお子さまを抱える小学生のお母さん方から、「周囲から自分の子どもがいじめられていると報告を受けて、自分の子どもに話を聞いてみても『遊んでいるだけ』という返事ばかり」「トイレやロッカーに閉じ込められたり、殴ったりされても笑っている」という話を何度も聞いてきました。
そのたびに、子どもが「自分が今どういうことをされているのか」という視点を持つことは、とても大切なことだと思うようになったのです。
息子の場合も、「いじめ」が始まる前段階で、「こいつは何をしてもいい奴だ」という認識が周囲に行き渡ってしまうのを阻止する必要があります。そのためには、ADHD要素の強い息子の「刺激を受けると無条件に喜ぶ」という部分に何らかの働きかけをしていかなければならないと思いました。
ではどうすれば、「嫌な事をされている」ということに気づき、行為がエスカレートする前にその場から逃げたり、毅然とした態度でNOが言えるようになるのでしょうか。
出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=11017015458
家に戻ってから、息子と話をしてみました。
私「今日、水泳教室で女の子と遊んでいたね」
息子「うん!ビート板をね、取られたの。返してって言っても返してくれないんだよ~」
私「頭も叩かれてたね」
息子「バンバンってね、二人でやるから逃げたんだけど追いかけてくるんだよ~」
私「水に潜って出られなかったでしょ?」
息子「そうそう!僕が逃げられないように邪魔するんだよ~」
息子はあくまでも「遊んでいた」としか認識していないようで、のんびりと楽しそうに話しています。
私「あのね、叩かれて痛くなかった?」
息子「もちろん、痛いに決まってるよ」
私「息が出来なくて苦しくなかった?」
息子「そりゃ苦しいよ!いっぱい体を動かしたけど出れなくてさ~」
私「あのね、あなたは自分の大切な人に痛いことや苦しいことをする?」
息子「え、そんなの絶対にしないよ?」
私「そうだよね。でも今日はずっとそんなことをされてたでしょ?」
息子「うん、そうだよ。あれ?おかしいね?」
私「それはね、遊んでるって言わないんだよ。あなたはずっと嫌なことをされていたんだけど、わかる?」
息子「そうなの?だからやめてって言ってもやめてくれなかったの?」
私「そうだね。お友だちっていうのはね、あなたのことをちゃんと大切にしてくれる人だと思うの。痛いことや苦しいことをしてくる人はお友だちじゃないよ。すぐに離れないとダメだよ」
息子「逃げても追いかけてきたら?」
私「そんな時はね、周りの人や大人に助けを求めてるんだよ。プールの場合だったら、プールサイドに上がって先生を呼びなさい。
どこかの道だったら、知らない人にでもいいから『助けて』って言ってごらん?ずっとママが助けてあげられたらいいけど、そうじゃない時もあるでしょ?自分の身は自分で守る練習をしていかないとね!」
息子「わかった!今度から痛いことと苦しいことをする人からは逃げたらいいのね?」
母親の私が、今の息子に伝えられること
出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=10161008970
たった一度の話し合いで、息子が刺激を受けて喜ぶのを止められるとは思っていません。これからも他の子どもたちからの悪ふざけを、喜んで受け取ってしまうことがあるかもしれません。
「強い刺激を受けて喜ぶ」というのは脳の構造の問題で、幼い息子がそれを理性でコントロールできるはずがないからです。
それでも今、私が親として息子に伝えられることは何だろう。息が出来ずに水中でもがいている息子を何度も思いだし、胸が張り裂けそうになりながら考えました。
「あの時、君はいじめられていたんだよ」
私は息子にそうはっきりと伝えました。
殴る蹴る突き飛ばすなどの暴力行為、心を傷つけるような暴言を吐かれる、やめてと言ってもからかわれ続けるなど、今の時点で私が「嫌がらせ」「いじめ」だと思うものを紙に書いて教えました。
「遊び」と「いじめ」の違いが自分のなかでも曖昧な上、刺激を受けて喜ぶ特性を持つ息子には、どんな行為が嫌がらせやいじめなのかをきちんと教えておかなければならないと思ったからです。
今から繰り返し情報をインプットすることによって、いつか「あれ?これは嫌がらせをされているのかな?」と気づく場面が出てくると思います。その時には、その場所や人から離れたり助けを求める必要あるので、その方法も合わせて伝えておくことにしました。
なかなか改まってお子さまと「いじめ」についてお話をする機会は少ないと思いますが、子どもがいついじめの被害者になったり、逆に加害者になってしまうのかは、誰にもわかりません。わからないから、情報をしっかりと伝えておくことが必要なのではないかと思います。
もうすぐ新学期が始まります。
周囲の環境やお友だち関係ががらりと変わってしまう今が、お子さまとゆっくりとお話しをされるいい機会かも知れませんね。