2017年4月6日 14:00
自閉症児の母である私にも…「よその障害者」への”壁”に気づいた瞬間
療育帰りの長男を待つバス停で、話しかけてきた少女
3年前、バスで療育から帰ってくる長男を待っていたときのことです。私と次男は、同じ施設に通う子のお母さんと3人でバス停で立ち話をしていました。
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そこへ一人の少女が近づいてきました。
少女は中学生くらいでしょうか――私たちに向かって話しかけようとしているのに、目はどこか遠くを見て小さな体をぶるぶると震わせています。特別支援学校の制服を着ているその少女は知的障害があるようでした。
彼女の額には汗がにじんで、ひどく焦っているように見えました。ぎゅっと結んだ手の中には何かが握られている様子……。
彼女は私達のそばに来ると握った拳を開きました。
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少女が拾った落し物に困惑
見るとその手のひらには、小さなカラーゴムが乗っていました。
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おそらく子どもが落としたものでしょう。ラメが入っているのかキラキラと光っていますが、人の足に何度も踏まれたのか全体に汚れ、古ぼけていました。
彼女は一生懸命言葉を探すように、ゆっくり、ゆっくりした口調で言いました。
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こんなものを……とっさに私は言葉に詰まり、何と返していいかわかりませんでした。
金銭の入った財布ではないし、真新しい手袋や綺麗なハンカチですらない。カラーゴム一つを落し物として持って行ったって、おまわりさんが相手にするはずがないでしょう。
そして私自身、古びたゴムを宝物のように扱う彼女に「かわいそうに……。この子は交番に持っていくものとそうでないものの区別がつかないんだな」という同情を感じました。
そのくせおまわりさんが「そんなもの持ってくる必要ないよ」と心無い一言をもしこの子にかけたなら、この子はひどく傷つくだろう、そんな傲慢な心配まで頭をよぎりました。
知的障害の人たちに対して、かわいそう、という上から目線の感情が自分の中にありながら、一方で他者がその人たちを傷つけることに憤るという矛盾したものが存在していたのです。
「届けなくていいよ」と言おうと思った瞬間、一緒にいたママ友は
「届けなくていいよ、そのまま地面に置いたままでいいんだよ」出来るだけ優しい口調で言ってこの場をしのごうかと思った時です。一緒にいたお母さんが、すっと手を差し出したのです。