「自閉症の長男のために私が頑張らないと」思いつめる私に先生が教えてくれた、一番大切なこと
療育で変化が見られない長男。母である私がもっとできることはないの…?
我が家の長男は重度の自閉症のため、3歳から療育施設に通っていました。けれど通い始めて最初の1ヶ月、長男の行動には目立った変化はありません。せめて私の声かけに反応できるようになれば…
そう期待していましたが、自宅では、読みきかせてあげようとした絵本を破り、ひたすらボールを回しています。
このままでいいのだろうかー私がもっと努力して絵本に目を向けさせ、ボールを取り上げて他の遊びを覚えさせたほうがよいのだろうかーそんなことを悶々と考えてしまいます。そんな矢先、療育の先生から心理療法士さんの発達検査を受けてみないかというお誘いがありました。
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初めての発達検査の担当は怖そうな心理療法士さん。ドキドキしながら見守ります
発達検査は教室とは別の部屋で行われました。療法士さんは厳しいと評判の女の先生です。机を隔てて長男と先生が対面する形で座り、私はその様子を離れて置かれた椅子に腰掛けて見ています。
机の上には、検査に必要な人形や積み木、帽子や靴が置かれています。
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まず先生は長男に対し「このお人形に帽子をかぶらせてくれるかな」と問いかけました。すると長男は人形をさっと取ったのですが予想外の行動をします。
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「くつをはかせてくれるかな」と先生がさらに問いかけると長男は人形を床に投げました。そんな長男の様子を見ながら、私はたらっと冷や汗が流れました。
先生は厳しい目で長男を見て、手元にあるノートになにやら書き込んでいます。もはや検査にならないことは明らかです。
明らかにイライラしている長男、厳しいと評判の女の先生、しーんとした室内の空気…。
耐えられなくなった私は先生におそるおそる聞きました。
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「お母さん!」先生の大きな声に思わずビクリ
すると先生はぱっと顔をあげ、私の方に目線を合わせると大きな声で言いました。
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「責められる…」
先生の声に私も思わずびくっとなります。すると先生は声のトーンを落として続けます。
「お子さんを療育していくための場所です。つまりお母さんの代りに教育してくれているんですよ。余計なことを考えない!」
そして先生はふっと笑顔になりました。
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3度のご飯を食べさせ、寝る布団を用意する――それは母親として当たり前のことで褒められるべきことではないと思っていました。
けれど「それだけでいいんだよ、十分なんだよ」、その言葉を他人からかけてもらえた瞬間、私は涙ぐみそうになるのを必死でこらえました。
親は「子どものために自分が頑張らなくちゃ」と背負い込むけれど
発達障害の子を持つ親は特に、子どものために何ができるか必死に模索したり悩んだりすることでしょう。けれど時には他人の手を借りて、休まなければ心に余裕が生まれません。余裕がなければ優しい笑顔を子供に向けることもできないのではないでしょうか。
長男はこの後療育の訓練で大きく変わりました。私は先生の言う通りのことをしただけで、特別な働きかけはしませんでした。けれど長男は沢山の人の手を借りて少しずつ成長していったのです。
発達検査の後、部屋を出ようとした瞬間先生はこんな言葉をかけて下さいました。
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あれから何年も経っているのに、この時の先生の言葉が蘇ってくるときがあります。そして今も魔法のように私の心を癒してくれるのです。
今育児で悩み苦しんでいるお母さん、お気持ち痛いほどわかります。だからこそあえて、私がこの先生から教わったことを、あなたにも伝えたい…。
「これ以上頑張らないで、お母さんが休んでもいいんです。沢山の人がきっと手をかしてくれるはずだから」