パニック予知も夢物語じゃない!?発達障害支援にもつながる、可能性に満ちたデバイス研究を紹介!
パニックは、いつだって突然に…!
出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=11017006658
「き…き…キターーー」
息子のパニックが爆発したとき、私はいつも思考停止しかけてしまう頭を茶化すために、こんな風に呟いていました。
自閉症スペクトラム障害、ADHDと診断されている息子のパニックは、一切の予測ができません。いつ来るのか分からない、何が引き金かも分からない、突然訪れて、そして何時間も続く「地獄」でした。
声をかけてなだめても火に油。抱きしめてみたら、暴れる息子に頭突きをされて自分がけがをすることも。私はなすすべもなく呆然とその場に立ち尽くすことしかできず、その様相は本当に滑稽で哀れとしか言いようがありませんでした。
そんな息子も小学校1年生になり、最近はひどいパニックに陥ってしまうことはほとんどなくなりました。
それは、息子が自分自身で「嫌な感覚」を説明できるようになったから。
息子は「音がうるさい」「人が多い」「疲れた」「静かなところに行きたい」などと自分から言うことができ、周りの人に伝えることができるようになったのです。また、自分にとって嫌な刺激は、自分自身の行動で回避することができるようになったことも大きく関係していると思います。
けれども、息子が自分の快不快の表現がまだできなかった頃を思い出すと、いまでも目を背けたくなるような辛い気持が思い返されます。
知らず知らずのうちに不快刺激を我慢し続け、顔は青ざめ、道路に座り込み、耳を塞いだまま立ち上がれなくなったり。あるいは泣いて泣いてどうやっても泣き止むことができなかったり。
こんなとき、いつも私は思いました。
「パニックになることを予告してくれる警報機があったらなあ…」
ストレスを感知できるリストバンドがある!?
出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=10387001753
発達障害のある子どもががパニックを起こす前に「ストレスがたまっています」「クールダウンさせてください」と警告してくれるような機械がもしあったら…。そんな夢のようなことを考えていたら、たまたまこんな海外の記事を見つけてしまったのです!
https://www.technologyreview.com/s/421316/sensor-detects-emotions-through-the-skin/
"Sensor Detects Emotions through the Skin" (「センサーで皮膚から感情を測定」MITテクノロジーレビュー)
2010年に書かれたこの記事には、アメリカのマサチューセッツ州にあるAffectivaという会社が、人の興奮や苛立ちを検知することのできるリストバンド型のセンサーを開発したということが書かれています。
このリストバンドに組み込まれたセンサーが皮膚の水分量に応じて変化する電気伝導率を測定することにより、ストレス反応を検知することができると言います。
この記事では、このリストバンドを自閉症の当事者の支援に活用できる可能性があるかもしれない、と書いています。
自閉症の人はストレスを表現しづらいという特性を持つことが多く、またそもそも自分自身の「感情」や「ストレス」についてよく分かっていない場合もあります。そしてギリギリまで我慢した結果、パニックになるというのです。
自閉症の人に限らず、人は誰でもこのような状態になると、交感神経の働きが活発になり、皮膚の水分量が増えて皮膚の電気伝導度が高まるのだそう。このリストバンドに搭載されたセンサーは、その電気伝導度の変化を、「ストレス反応」として捉え、ストレスレベルを測定するのです。
交感神経が活発になるのは、必ずしも「ストレス反応」に限らないのですが、それでも自閉症の人の情緒に何かしらの変化が起こったことは分かると、この記事では言われています。
製品化は進むのか!?その後の開発動向を追跡してみると…
出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=10161005336
待ち望んでいる人も多いであろうこのリストバンド。
この記事で紹介されてから7年あまりの時間が経過した現在の開発状況はどのようになっているのでしょうか。
気になった私は、開発に取り組んでいるマシュー・グッドウィン博士(ノースイースタン大学准教授)にコンタクトを取ってみることに。すると、この技術を継承したリストバンドが既に商品化されていることが分かりました。
上で紹介したAffectiva社は開発・販売を休止しましたが、そこから独立して設立された会社が他社と合併を行い誕生したEmpatica社が、現在でもセンサーの販売行っているというのです。
それがこちら!
Upload By 林真紀
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Empatica Inc.(Empatica社のホームページ)
https://www.empatica.com/
Empatica社が販売しているのは、このE4とEmbraceという2種類のリストバンドです。E4は、体温や心拍や皮膚電位等を検知することにより、自律神経系、交感神経系、副交感神経系の働きを計測することができるといいます。Embraceは、皮膚電位や体温、動き等に大きな変化があった場合に、アラートを出すこともできるとか。
このような急激な変化は、身体になんらかの発作が生じたときに見られる場合が多いため、現在は主に医療目的で使われているようです。
自閉症へのフォーカスはまだ。でも今後の発展に期待!
出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=11044029639
残念ながらこれらの製品のWEBサイトでは、まだ自閉症の人に対しての有効性などには触れられておらず、あくまで体の情報を取得するセンサーとして紹介されています。
しかし、開発段階においては、自閉症児の子どもや保護者、支援者からの要望がとても多かったというのは事実のようです。また自閉症の当事者も、ストレスをうまく表現できない苦しみと、それを周りに違って解釈されてしまう辛さに悩み、自らの感覚を他者に伝えることができるセンサーの開発を待ち望んでいた人が多かったと言います。
現在の製品は自閉症の人に特化した商品ではないものの、将来的にはデータの蓄積と精度の向上が進めばさらなる活用が期待できるかもしれません。また、リストバンドのお値段は日本円にして約18万円とだいぶお高いですが、これから開発が進み、一般向けに普及していくようになれば、もっと安い値段で手に入る日がきてもおかしくないでしょう!なにより、実用化すれば言葉や表情に頼らず、自閉症の人の感じている辛さをリアルタイムに知ることができる画期的なツールになるはずです。
テクノロジーが、いろんな人の生きづらさを変えていく時代が来ているのかもしれない…
私はこのリストバンドのことを知って、とても明るい未来を想像したのでした。
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