相貌失認とは?症状、原因、相談・診断・受診先から、発達障害との関わりについて解説します

2017年11月13日 15:00
 


相貌失認とは

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出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=10750000085

相貌失認は、人の顔を正しく認知することができないという障害です。正しく認知できないというのは、よく知っている顔、例えば両親や親友、あるいは自分の子どもを見てもそれが誰なのか分からなくなってしまったり、目の前にいる人の性別や年齢が全く分からなかったりするようなことを意味しています。

相貌失認は、単に顔と名前が一致しないということではありません。名前が分からなくても、顔を見た時に、その人がどんな人か思い出すことができたり、その人の顔に見覚えがあるように感じたりするならば、相貌失認である可能性は低いといえます。

相貌失認でない人にとってみれば、相貌失認という障害は想像しにくいかもしれません。また、生まれつき相貌失認である場合には、顔以外の視覚情報や声などから目の前にいる人が誰かを見分けることが当たり前だと感じていることがあります。そのため、顔の認知がまわりに比べて苦手であることに気がつかないことも珍しくありません。

海外での調査では、人口のおよそ2%が相貌失認であると報告されています。日本でも、相貌失認の症例がいくつか報告されており、身近に相貌失認である人がいても、決して不思議なことではありません。

http://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I025471149-00
出典:飯高哲也「先天性相貌失認症候論,認知機能,神経科学的研究について」


相貌失認の症状

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相貌失認になると、目が悪いわけでもなければ、物やかたちを記憶することができないわけでもないのに、なぜか人の「顔だけ」認識できなくなってしまいます。

相貌失認でない人は、友人や家族の顔がちらっと見えれば、それがだれなのか気づくことができます。しかし、相貌失認の人にとっては、自分含めたすべての人の顔が同じように見えてしまい、顔をちらっと見ただけではそれが誰なのか判断することができないのです。また人によっては、視線を向けている方向が分からない、表情から相手の感情を判断できない、男性なのか女性なのか分からない、といった症状があります。

相貌失認の症状については軽度な人から重度な人まで様々な人がいます。そもそも、私たちの周りにいる人でも、顔を覚えるのが得意な人もいれば、相貌失認ではないけれど顔を覚えるのが苦手な人など様々です。顔を覚えるのが得意な人であれば、パーティーで少し顔を合わせたことがあるだけの人でも、町中で見かけたときに気がつくかもしれませんが、気づかない人だって多くいます。

軽度な相貌失認の場合、気がつく頻度が一般的な人に比べてやや少ない程度で、日常生活を送る上でそこまで困らずに生活できることもあります。しかし、重度な相貌失認になると、自分の親や子どもの顔が分からず困難を感じる人も少なくありません。

相貌失認になると、次のような困りごとが生じる可能性があります。

・ドラマや映画で、登場人物の見分けがつかずストーリーが分からなくなってしまう
・待ち合わせの場所で相手を見つけることができない
・以前あいさつしたことのある人に対して、失礼な対応をしてしまう
・学校や職場でよく会う人であっても、ふだん会わないような場所だと無視してしまう
・子どものお迎えにいっても、自分の子どもを見つけられない
・知人に肩を叩かれたときに、不審者に叩かれたかのような反応をしてしまう

私たちは、自分の顔を忘れられるとショックを受けたり、失礼な人だとみなしたりすることがあります。相手の顔を覚えることのできない相貌失認の人は、そのことが社会生活を営む上での大きな障害になってしまいます。

相貌失認とは、わざと覚えていないわけではなく、むしろ人より覚える努力をしているにも関わらず人の顔を認識することができない障害なのです。

https://www.amazon.co.jp//dp/4121505158
参考書籍:山口真美/著者『顔を忘れるフツーの人、瞬時に覚える一流の人ー「読心術」で心を見抜く』(中央公論新社・2015)

https://prosopagnosiaresearch.org/index/information
参考:Information About Prosopagnosia|Prosopagnosia Research at Bournemouth University


相貌失認の原因

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人の顔だけ認識することができなくなってしまう相貌失認は、いったいなにが原因で起こるのでしょうか。この章では、先天性の相貌失認と後天性の相貌失認にわけて原因について説明します。

先天性の相貌失認は、脳内で顔を認識するときに行われるはずの処理を行うことができないために起こるとされています。視覚障害、知的機能障害もなく、脳に損傷も見らないのに、顔を認識することができません。

なぜ先天性の相貌失認が起こるのかは、いまだに明らかになっていないことも多くありますが、最近の研究によると遺伝の影響も否定できないといわれており、遺伝性の相貌失認かどうかを確かめるような質問紙も作られています。

http://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I027748316-00
参考:近藤実知「後天性および先天性相貌失認症例検討をふまえて」

人の顔を見てそれがだれか認識するためには、脳内でさまざまな処理が行われる必要があります。例えば、目で見た情報から相手の顔がどんなかたちをしているのかやどんな色をしているのかを脳内で明らかにします。その後、その顔をした人を今まで見たことあるか自分の記憶と照らし合わせる必要があります。

後天性の相貌失認とは、相手の顔をだれか認識するまでに必要なはたらきをする脳の一部を、事故や、脳梗塞・脳腫瘍などの病気により損傷してしまうことで起こります。交通事故などで相貌失認になってしまった人の場合、病院で目が覚めても、かけつけてくれた家族や友人が誰なのか分からないといった状態になってしまうことがあります。


相貌失認と発達障害の関わりは?

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自閉症スペクトラムがある人の中には、顔を認識することが難しい人がいます。自閉症スペクトラム以外にも、ウィリアムズ症候群やターナー症候群などの疾患がある人々にも相貌失認のような症状が現れることがあります。しかし、発達障害のある人すべてが顔認識に困難を抱えているわけではありませんし、相貌失認の人が必ず発達障害であるということでもありません。

自閉症スペクトラムと相貌失認には、顔を認識する際に細かいパーツは認識できるが、全体として見ることができない傾向があるという共通点があります。

私たちの目や鼻、あるいは輪郭などは一つだけ取り出して見れば、個人差はあまりありません。そのため、顔を認識するときには細かい部分を見るのではなく、顔を構成しているパーツの組み合わせを見ることになります。おそらく、目だけを見て、それが誰かを認識することは、ほとんどの人にとって不可能だと思います。

顔認識に困難がある人であっても、顔を見た時には、目があり、鼻や口があるということから、今見ているものが顔であることを理解できます。しかし、その顔が誰の顔なのか認識する時に、目や鼻などの細かい部分に注目しすぎてしまい、全体の組み合わせから判断することができないのです。

このように、相貌失認と自閉症スペクトラムには共通した特徴も見られます。現在、相貌失認と発達障害になぜ関連が見られるのかについては、諸説ありますがいまだに解明されていません。

https://www.amazon.co.jp/dp/4788515075
参考書籍:熊谷高幸/著者『自閉症と感覚過敏ー特有な世界はなぜ生まれ、どう支援すべきか?』(新曜社・2017)

https://prosopagnosiaresearch.org/index/information
参考:Information About Prosopagnosia|Prosopagnosia Research at Bournemouth University


相貌失認かどうか調べる方法

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相貌失認なのか、単に人の顔を覚えるのが苦手なのかを確かめるにはどうすればいいのでしょうか。ここでは、相貌失認かどうか確かめるために使われる相貌認知課題について紹介します。

相貌認知課題は、大きく分けると次の3種類の項目を調べるものになります。・見たことある人の顔を覚えられているか
・見たことない人の顔を区別できるか
・顔から性別や年令を推測することができるか

それぞれもう少し詳しく見ていきます。

見たことのある人の顔を覚えられているか確かめる課題では、誰でも知っているような有名人や家族の写真を用いて行われます。有名人や家族の写真を見せて、その人が誰か答えてもらう中で、その正答率や思い出すまでにかかった時間を測ります。

この課題では、写真に写っている人の名前を答えてもらうことが多いですが、名前を思い出せなくても、それが誰なのか分かっていれば正解したとみなします。例えば、イチローの写真を見て、名前がでてこなくても、「野球選手で、いまメジャーで活躍していて…」と答えることができれば顔を覚えているとみなされます。

この課題では、2枚の写真を見せて、それが同じ人であるかどうか答えてもらったり、見本の写真と同一人物の写真を6枚の写真から選択してもらったりして行われます。

この課題でも、正答率や答えるまでにかかった時間などを測ります。

2枚の写真を見せて、どちらが男性か答えてもらったり、どちらのほうが若いか答えてもらったりすることで、正しく推測できているか確かめます。

http://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I027748316-00
参考:近藤実知「後天性および先天性相貌失認症例検討をふまえて」


相貌失認の対処法

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私たちは目の前にいる人が、誰なのか認知するとき、顔の情報のみで判断しているわけではありません。例えば、特徴的な髪型や話し方、歩き方あるいは服装なども参考にしながら、記憶と照らし合わせています。

相貌失認の人の場合は、相手のことを顔から判断することは困難ですが、顔以外の情報から判断することができます。生まれつき相貌失認であると、独自の工夫をして、社会生活をそれほど支障なく過ごしている場合もあります。

現在、残念ながら相貌失認を根本的に治療する方法は見つかっていません。相貌失認を抱えながら生活していくには、顔以外の情報にできるだけ注意して相手が誰か判断しなければいけません。相貌失認によるトラブルを減らすために、自分が相貌失認であることを周囲に明言しておく方法もあります。

例えば、『レナードの朝』などの著作で知られる神経科医オリヴァー・サックスも相貌失認であることを告白しています。

サックスの助手は、サックスのもとを訪れる人に対して次のように伝えていたそうです。

「あなたのことを覚えているかどうか、先生に訊かないでください。覚えてないって言いますから。お名前を名乗って、自分が誰かを先生に教えてあげてください」
出典:『心の視力ー脳神経科医と失われた知覚の世界』p104

https://www.amazon.co.jp/dp/4152092556
また、サックスにもこのように言っていたそうです。

「ただ覚えていないと言うのはだめですよ――失礼ですし、人は気を悪くします。『申し訳ありませんが、私は人の顔をちっとも覚えられないんです。自分の母親の顔さえわからないんですよ』って言ってください」
出典:『心の視力―脳神経科医と失われた知覚の世界』p104

https://www.amazon.co.jp/dp/4152092556
相貌失認でありながら、なんとか工夫してトラブルを起こすことなく生活し続けることは難しいことです。また仮に生活できたとしても、常に過度に気を張っていなければいけないため本人の負担がどうしても大きくなってしまいがちです。

相貌失認で困っている人は、周囲に正しく理解してもらえるように、相貌失認であることを周りの人に伝えるという選択肢も考えてみてはいかがでしょうか。

https://www.amazon.co.jp/dp/4152092556
参考書籍:オリヴァー・サックス/著者『心の視力ー脳神経科医と失われた知覚の世界』(早川書房・2011)


相貌失認の著名人

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人口のおおよそ2%が相貌失認であるとされているように、相貌失認というのは決して珍しいものではありません。相貌失認は、たしかに日常生活のなかで困るようなケースも多くあるかもしれません。しかし、相貌失認であっても世界で活躍されている方は何人もいらっしゃいます。

この章では、実際に相貌失認であるまたは、相貌失認の疑いがあるとされている著名人の方を紹介していきます。

ルイス・キャロルは、世界中で大人気な『不思議の国のアリス』をはじめとする童話を執筆したことで知られています。彼は、児童文学の作者としてだけでなく、大学の講師や写真家、牧師としても活躍された非常に多才な人物でした。

ルイス・キャロルは、数字の「42」に対して強いこだわりをもったり、規則を守ることが得意であったり、言動の意図をよく汲み間違えたりしていたそうです。他にも、言葉をどもってしまうような言語障害もあったようです。

今となっては確かめようがありませんが、人の顔を覚えることが非常に苦手であったり、パーティー会場で人を紹介しようとすると席を慌てて外したりと相貌失認であったことをうかがわせるエピソードがいくつも残っています。

アメリカ出身のブラッド・ピットは、日本ではブラピの愛称で親しまれるなど非常に人気があります。アカデミー賞にも、俳優として、プロデューサーとして何度もノミネートされています。

ブラッド・ピットは、2013年のインタビューで自身が相貌失認の疑いがあることをカミングアウトしました。

https://www.amazon.co.jp/dp/4062597020
参考書籍:岡南/著者『天才と発達障害ー映像思考のガウディと相貌失認のルイス・キャロル』(講談社・2010)


相貌失認の診断・相談先はあるの?

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相貌失認が、現在正式な診断名として医療現場で使われることはあまりありません。というのは、人の顔が覚えられないという症状や、顔から年齢や性別が判断できないという症状が見られる場合、相貌失認の可能性が疑われますが、今の日本では、客観的にあるテストを行って、何点以下の場合、相貌失認とするというような基準が作られていないためです。

また、相貌失認であることが判明しても、相貌失認を抜本的に治す治療法が確立していないため、効果的な治療を受けることは難しいと考えられます。しかし、専門的な知識をもった人に話を聞いてもらいアドバイスを受けたり、単なる自分の思い込みにすぎないのかどうか確かめたりすることで、日々の困り事を軽減できるかもしれません。

相貌失認について相談したい場合には、総合病院や脳神経外科のある病院などが受診先として挙げられますが、これらの病院すべてが相貌失認の相談を受け付けているわけではありません。実際に病院に足を運ぶ前に確認をするとよいでしょう。


まとめ

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自分自身で相貌失認だと気づいている人は珍しいかもしれませんが、人によっては日常生活の中でどうしても顔が覚えられず苦労しているかもしれません。

今日の日本で社会生活を営む場合、目の前にいる人が誰なのか判断することは、どうしても避けられません。また顔が覚えられないという悩みは、一朝一夕で解決するようなものではなく、相貌失認は医療の力を頼ることもなかなかできません。

そのため、一人ひとり自分にあった工夫を日々苦労しながら、探していく必要があります。顔以外の情報から、誰か判断するすべを身につけたり、必要に応じて顔の認識ができないことを相手に伝えたりすることが大切になってくるのではないでしょうか。

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