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なぜあの子は失敗しても挑戦し続けるのか——研究が示す、魔法のほめ言葉

なぜあの子は失敗しても挑戦し続けるのか——研究が示す、魔法のほめ言葉



できなかったことが、できるようになる。
昨日まで届かなかった鉄棒に、今日はぶら下がれた。
読めなかった字が、ある日すらすら読めた。
何度もこぼしていたスプーンを、ようやくこぼさずに口に運べた。

子どもが嬉しそうに笑う、その瞬間。
どんなに小さく見えることでも、それは紛れもなく、子どもとあなたの達成です。たくさんの「できない」を一緒にくぐり抜けてきた日々があって、今日のその笑顔がある。本当に、すごいことです。


そして、これからもこういう瞬間が、まだまだたくさん訪れます。
この記事では、その一つひとつの成長を、子どもと一緒にもっと深く楽しんでいくための声かけを、発達心理学の研究をヒントに見ていきます。

その達成の裏には、たくさんの試行錯誤があった


少しだけ、立ち止まって考えてみてください。
なぜ、子どもはそれができるようになったのでしょう?

鉄棒にぶら下がれた日。その前には、何度も手が滑って、何度ももう一度握り直した時間がありました。すらすら読めた字。その前には、たどたどしく一文字ずつ追っていた何十日もの夕方がありました。こぼさず食べられたスプーン。
その前には、テーブルを拭いて拭いてまた拭いた、あなたの手があったはずです。

子どもの「できた」の裏には、必ず、子ども自身の小さながんばりと、それを支えたあなたとの試行錯誤の時間が積み重なっています。今日その瞬間が訪れたのは、能力が突然花開いたからではなく、その積み重ねがあったから。当たり前のようでいて、ふだんは見過ごしてしまいがちな、大事な事実です。

そして、ここからが本題です。
何かができるようになるには、練習や、工夫や、あきらめずに続ける力が要ります。親にできることのひとつは、そのがんばりに価値があると、子ども自身に信じてもらうこと。今日できるようになったのは、君が続けてきたからなんだよ——そう感じてもらうこと。
子どもがそれを心から信じられたとき、次の「できない」に向かう力が、自然に湧いてくるのです。

じつは、この「がんばりに価値があると信じてもらう」ことの大切さは、発達心理学の研究でも繰り返し裏づけられてきました。

「能力をほめる」と「努力をほめる」——分かれる道


たとえば、ある実験で、こんなことが分かっています。小学5年生(10〜11歳)の子どもを2グループに分け、課題に成功した直後にちがう声かけをしました。一方には「あなたは頭がいいね」と能力をほめ、もう一方には「よくがんばったね」と取り組み方をほめたのです(コロンビア大学のキャロル・ドゥエック博士らによる、1998年の研究)。*1

その後、より難しい課題を与えたときの反応には、明らかな差が出ました。

能力をほめられた子どもたちは、新しい挑戦を避けるようになり、失敗したときに課題を楽しめなくなり、タスクのパフォーマンスも落ちていきました。一方、努力や工夫をほめられた子どもたちは、失敗してもなお課題を楽しみ、粘り強く取り組み続けたのです。


ここで大事なのは、研究が問題視しているのは「ほめること」そのものではないという点です。問題なのは、「能力をラベル化する声かけ」が日常の中心を占めること。「頭がいい」「センスがある」「上手だね」——便利で口にしやすい言葉が連発されはじめると、子どもは少しずつ「自分の価値は能力で決まる」と感じはじめます。すると失敗は「能力がない証拠」に見えてしまい、難しいことから距離を置くようになるのです。




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親の「信じる力」が、子どもに伝わっていく


そして、ここからが大切な話です。
じつは研究は、もう一歩先のことも明らかにしています。親が「努力で力は伸びる」と信じているかどうかが、そのまま子どもに伝わっていく——ということです。

たとえばデンマークで、こんな実験が行なわれました。
小学校低学年の子どもを持つ親に、「子どもの読み書きの能力は努力で伸びる」というメッセージを丁寧に伝えたパンフレットを配ったのです。その結果、パンフレットを受け取った親の子どもは、受け取らなかった家庭の子と比べて、3か月後の国語の学力テストの偏差値が約2.6ポイント高くなりました。しかも、その効果は7か月後にも持続していたのです(デンマークのオーフス大学などによる、2016年の研究)。*2

この実験で変わったのは、子どもへの教材でもなく、勉強時間でもありません。変わったのは、親自身の信念です。親が「この子の力は、伸ばせる」と信じる。たったそれだけのことが、日々の声かけのトーンや、子どもの努力を見る目線を変え、結果として子どもの学力にまで届いていく——。

子どもは、親の言葉のひとつひとつを聞いているだけではありません。
その言葉の奥にある「親が何を信じているか」を、敏感に受け取っているのです。だからこそ、声かけの工夫は、テクニックである以上に、親自身の姿勢の問題でもあります。「この子のがんばりには意味がある」と心から信じることが、最初の一歩なのです。

「すごいね!」のあとに、ひとこと足してみる


とはいえ、「すごいね」「えらいね」を言わないようにしよう、なんて——正直、無理な話です。

だって、嬉しいんですもん。
我が子があきらめずに練習してきたことが、できるようになる。その瞬間、こっちのほうがガッツポーズしたいくらい嬉しい。口より先に「すごい!」が飛び出すのは、もう反射です。
我慢なんて、できるわけがありません。

だから、提案はとてもシンプルです。「すごい!」のあとに、もうひとこと足してみる。それだけ。歓声はそのままで大丈夫。引き算はしない。足し算でいきましょう。

1. 「途中で起きていたこと」を添える
逆上がりが回れた瞬間。
「すごい!」のあとに、「足のけり方、何回も変えてたよね」。

テストの100点。
「えらいね!」のあとに、「あの問題、すごく長く考えてたもんね」。

なわとびの二重跳びが続いた日。
「やったね!」のあとに、「毎日ちょっとずつ練習してたもんね」。

子どもが結果を出すまでに、必ず「途中」があります。粘った時間、変えた方法、続けた習慣。歓声のあとに、その「途中」を一言で言語化してあげると、子どもは「結果」だけでなく「自分が何をしたか」も自分の手柄として受け取れるようになります。

2. 親自身の感想を添える
「すごいね!」は評価ですが、そのあとに「お母さん、見ていてドキドキしちゃった」「うれしくなっちゃった」と、自分の心が動いたことを伝えると、評価とはちがう種類のメッセージが届きます。

評価は外側からの判定ですが、感想は内側からのリアクション。子どもにとっては、「自分が誰かの心を動かした」という実感が伴います。これは「うまくできたかどうか」とは別の軸での承認になります。

3. 過程に関心を向ける問いかけを添える
「すごいね!」のあとに、「どうやってできるようになったの?」「どこが一番むずかしかった?」。

結果ではなく過程そのものに好奇心を向ける問いかけは、子どもにとって「どう取り組んだか」を語る機会になります。サッカーの試合のあとなら「勝った?」より「今日いちばん難しかったプレーは?」、ピアノの練習なら「弾けるようになった?」より「どこが一番むずかしかった?」。質問を一段変えるだけで、子どもは「結果」ではなく「自分の体験」を語りはじめます。

もちろん、子どもが疲れているときに矢継ぎ早に聞くと負担になります。話したそうにしているときに添える、くらいの軽さでちょうどよいでしょう。




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「引き算」ではなく「足し算」で考える


ほめ方の本を読むと、「能力をほめるのはNG」「結果をほめるのは逆効果」といった引き算の話に出会うことがあります。けれど、嬉しい瞬間に出る「すごい!」を我慢するのは、親にとっても子どもにとっても、あまり自然なことではありません。

大事なのは、「すごい!」をやめることではなく、「すごい!」だけで終わらせないことです。
歓声はそのまま。そこに、途中に起きていたことを一言足す。心が動いたことを一言足す。問いかけを一言足す。引き算ではなく、足し算でバランスを取っていく——そう考えるほうが、ずっと続けやすいはずです。

***

「すごいね!」のあとに、ひとこと。
たったそれだけのことが、子どもの中で「結果が出たからほめられた」を「途中の努力も見てもらえていた」に変えていきます。そして子どもは、評価される対象としてではなく、取り組む主体として自分を捉えられるようになっていくのです。

よくある質問(FAQ)


Q1. 毎回ひとこと添えるのは大変です。続けるコツはありますか?

A. 毎回でなくて大丈夫です。一日のうち、印象的だった瞬間に一回でも添えられれば十分。「すごい!」だけで終わる日があってもいいのです。大切なのは比率なので、長い時間軸でバランスが取れていれば問題ありません。

Q2. とっさに何を添えればいいか思いつきません。

A. 「途中で起きていたこと」を思い出すのが、いちばん使いやすい型です。「練習してたもんね」「あきらめなかったね」「やり方変えてたよね」——どれも、たいていの場面に当てはまります。迷ったらこの3つのどれかを口にする、と決めておくとラクです。

Q3. 兄弟がいる場合、つい結果が出た子だけをほめてしまいます。どうすればよいでしょうか?

A. 結果ではなく途中に目を向けると、ほめる対象は自然と全員に広がります。「先にゴールしたね」より「最後まで走り切ったね」、「100点取れたね」より「自分で見直してたよね」。途中は、結果のように一人勝ちにはならないのです。

参考文献


*1 APA PsycNet|Praise for intelligence can undermine children’s motivation and performance(Mueller & Dweck, 1998)
*2 PNAS|Reading intervention with a growth mindset approach improves children’s skills(Andersen & Nielsen, 2016)/日本語による紹介:中室牧子『科学的根拠(エビデンス)で子育て』(ダイヤモンド社、2024年)


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