子育て情報『発達障害のある子の支援を、支える家族の「生きにくさ」とともに紐解く――精神科医・田中康雄が描くこれからの精神科医療』

2019年5月30日 07:00

発達障害のある子の支援を、支える家族の「生きにくさ」とともに紐解く――精神科医・田中康雄が描くこれからの精神科医療

どこにいっても常に一人で、どことも本当は決して馴染まない存在という異邦人的な感覚を持ち続けていました。もちろん、これは僕の単なるコンプレックスなのですが、こうした僕にある心許なさが、僕が出会いたいと切望していた子どもたちと、どこか重なる部分があったのかもしれません。ほかの誰の味方でもなく、キミの味方になりたい、という僕の思いは、僕自身を支える僕の気持ちでもあったのでしょう。

児童部門を背負ってからは、児童相談所の嘱託医となり、子どもだけでなく家族全体を生活の視点で診ることを学び、福祉、教育分野の仲間たちが出来たことで、虐待防止活動や、家族と子どもたちと専門家が一蓮托生の思いで集う会を結成しました。

「専門家の話だけでなく、同じ思いの親と出会いたい、親と話をしたい。教育、福祉の方々とも対等に話を、正直な思いを聞きたい」という切実な思いから結成した「十勝ADHD&LD懇話会」は、昨年結成30年目にその活動にピリオドを打ちました。

僕自身は、こうした院外活動を通して、診察室のなかで、なかなか広がらない話から、たくさんの窓が開き、多くの方々と出会うことになりました。僕は、白衣を脱いで地域、現場に足を運ぶことで、異邦人的な感覚が薄まり、子どもたちや家族が躊躇している社会への接点への橋渡し役をすることが出来るようになりました。


昨年「十勝ADHD&LD懇話会」の幕を閉じるとき、僕は懇話会の合い言葉でもあった“Children First”という言葉が、今も僕たちの心を支えていたことに気づきました。この哲学は、今、目の前の方々を大切に、という思いへと繋がっていきます。

僕たちが向き合い、大切にしてきたのは、「発達障害」ではなく、一人一人の子どもが、親が、そして僕たちが、どうしたら日常をより豊かに生きられるか、という生き甲斐探しのようなものだったのかもしれません。


現在のこと――クリニックで患者さんと向き合う毎日

発達障害のある子の支援を、支える家族の「生きにくさ」とともに紐解く――精神科医・田中康雄が描くこれからの精神科医療の画像

出典 : http://www.minerva.gr.jp/page4/

僕の最初の10年は一般精神科医の時代で、次の10年は児童精神科医と研究機関と大学で教育と医療の境界線上に立ちました。2013年が30年目の節目でしたが、僕はすこしばかり早く大学の職を辞し、2012年からクリニックで日々、受診される方々と向き合い続けています。

クリニックでは朝の9時前から夜の8時前後まで休みない診察が続きます。

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