せっかく入った中学校なのに進路変更!? 発達障害長男の進路と勉強の悩み――児童精神科医 三木先生に聞いてみた!
中学2年生の長男の「勉強や進路について」の悩み
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私、スガカズは、現在4人の子どもを育てているママです。
・長男(中2 ASD、ADHD)
・次男(小5 、ADHD)
・長女(年長 、定型発達)
・三男(年中、定型発達)
長男がせっかく入学した学校を変えたいと言い出しました。勉強へのモチベーションが影響しているようです
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スガカズ(以下、――)わが家の自閉症スペクトラムとADHDのある長男の進路と勉強について相談したいです。最近まで、「ゲームプログラマーになりたい」と言っていたのですが、1ヶ月前急に、「将来定食屋を開きたいから学校を変えたい」「今やっている勉強って意味あるの?」と言い出しました。ものづくりの仕事に精通しそうな工業大学付属の中学校に進学したのに、コミュニケーション能力が重要で、マルチタスクが必要そうな接客業への希望に、正直私は困惑しています。どうやら勉強へのモチベーションも関係していそうです。
中2なのでいろいろと悩みの多い時期だとはわかっていますが、本人にどうやって現状を納得してもらえるでしょうか?
三木先生:中2は難しい年頃ですよね。長男くんはどんな特性があるのでしょうか?
――知覚推理指標が高くパズルや工作など、一人でもくもくと一つの作業に打ち込むことが好きです。
社会秩序は守れるのですが、周りの状況を理解したり自分の考えをうまく伝えることが苦手です。
勉強では、文系が苦手で理数系はまだ大丈夫な方ですが、その中でも得意不得意はかなりばらつきがあります。
小学校のころからそういった特性を見てきたので、本人がやりたいことを応援したいのはやまやまではあるのですが、「定食屋はこの子に合った職業ではないのでは…」と、どうしても感じてしまいます。
そういう点で言うと今の学校は理数系で、文系よりも理数系のほうが得意な長男には合っているように思いますし、長男と似た性格の子も多く、友達も増えてコミュニケーションの幅が広くなったと感じます。環境としては最適だと思うので、母親としてはできる限り今の学校に通い続けてほしいと思っているのですが…。三木先生:なるほど。ただ、長男くんの特性や意向を考えたときに、「(勉強を)やりたくない」と思ったらやらないんじゃないでしょうか。
――そうです。ちょうど今、否定したい時期みたいです。
こういう時期は、親として静観してあげたいという気持ちがあるのですが、長男の特性を考えると「こっちより、あっちのほうがいいんじゃない?」と意見するのも親の支援だし、子どもへの理解でもあると考えています。
ただ、無下に否定するのではなく、「定食屋を開きたいならまずは料理する機会を増やしてみよう」と長男に提案をして、学校のお弁当を本人がつくるようにしたり、日曜の家族の昼食は長男につくってもらったり、と料理をする経験の場はつくるようにしています。
嫌がっている様子はないのですが、あまり本気ではないようにも見えます。
普段、長男が本気の場合は明らかに目がキラキラしているので…。
どうやら、進路に関しては「勉強への逃げ道」として利用しているようでもあるんです。本人も「勉強から逃げたい気持ちもある」と言っていました。
ほかの学校(高校)に変えたからといって、定食屋のスキルが身につくかと言われると疑問があるので「まずは今の学校に通い続けて、調理の専門学校にいく(大学は内部進学しない)のがいいと思うよ」と伝えてはいるのですが…。
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三木先生:勉強するしないに関しては、日本の教育就労システムが難しくしていますよね。
勉強がある程度できればOKで、勉強以外はOKとしない仕組みなので。
ただ、「定食屋」といった風に、内容で絞るのはそのあと仮に失敗したときに修正が難しくなると思います。
本人の意向も大事にしたいところですが、そこは大人が間に入ってうまくコントロールしてあげる必要がありそうですね。
子どもの進路への親子の向き合い方
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三木先生:例えば定食屋になって何を実現したいのか?もくもくと作業するのが好きなら料理じゃなくてもいいのでは。そこを大人と一緒に見極めていくことが重要だと思います。
方向性を見据えるために抽象度を上げた彼の願望を知って、理解したら親としてほかの選択肢も提示できると思います。一生懸命一緒に考えた結果、もし違う方向にいったとしても彼の気持ちがやわらかくなるのでは。
実は私は、もともと医者がやりたい訳じゃなくて、「困っているご家庭の方々を笑顔にしたい」というのが抽象的なモチベーションなんですよ。
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三木先生:今の年齢でもできる実践を積んでおいたり他者からの話を聞くのも良いと思います。例えば抽象的な願望が「もくもくと何かを作りたい」というものであれば、もくもくと作っている人と、もくもくと作っていない人に「仕事の楽しいところ、大変なところ」をインタビューしてみるのもいいかも知れませんね。
――そういえば私の職場の元同僚に、システムエンジニアからサンドイッチ屋さんに転身した人がいます。エンジニアから接客業(起業)なので、開業する際に自分で店のウェブサイトを作って集客したり、顧客分析をして結果繁盛しているので、元同僚の話から得られることは多そうだと思いました。
三木先生:それはいいですね! 丸腰(思いつき)で定食屋をやって繁盛する確率って低いのではないかと思うんですが、その同僚の方からは、一度社会人をやってから起業してみてよかったという意見も聞けるんじゃないでしょうか?
スポーツ選手なんかは小さいころからやっていないとできない職業ですが、定食屋の経営は、人間的に成熟してからでもいい職業ですからね。まわり道をしたほうが特長や付加価値がでてきますし。
長男くんが成長していく中でこの先「思ってたのと違う」という経験は出てくると思います。たくさん親子で悩んで乗り越えましょう。
子どもの勉強への親子の向き合い方
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三木先生:先ほども言いましたが、長男くんの特性や意向を考えたときに、「やりたくない」と思ったことはやらないと思います。
それに、「これをやるとだれでも勉強するようになる!」という魔法の支援はないんですよね。
――そうですね。私からできることってあまりないと思っていて…。
先ほどの進路のお話にあったように、根回しして他者から言ってもらうのはどうかなと思うんですが。例えば家庭教師の先生に「とはいえ勉強も大事だよね」と言ってもらうとか…。
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三木先生:本人が気を許していたり尊敬しているなど、「この人なら」と思える相手にお願いするのはいいと思います。
あとは、「勉強したくないから言ってるんじゃない?」という印象も含めて、保護者は一歩下がって見ていきましょう。
子どもって「親にこれを言ったら嫌がる」と分かっていることって、正直に言わないということが多いので、子どもの意見をはなから否定してしまうと、「勉強が嫌」とも言わなくなりますから。
「勉強は嫌でいいけど最低限これはやってね」という「枠の提示」は必要です。
枠を提示をしながら、時間をかけて本人のやる気の芽を見つけてあげましょう。
――分かりました。お話を聞いていて思ったのですが、総じて親子関係を悪化させる発言は避けて、あまり干渉しすぎず普段ニコニコしているのがいいのだろうなと思いました。
否定するべきか肯定するべきか悩んでいたので、「嫌なのは分かるけど、最低限これだけはやってね」と提示をしてもいいと言ってもらえたので少し安心しました。
「勉強が嫌」「学校を変えたい」と言ってくる今の状況は、「多少なりとも私を信頼しているのかな?」と思うようにします。
感想
その後、長男とこれからの進路や勉強について話をしましたが、先生のお話にあった、「抽象度を上げた願望」を深堀りするまでには至っていません。
思春期ということもあるのか、「あまり深く考えないようにしている」という様子が伺えるので、もうしばらく様子を見てみます。
しかし、枠の提示をしたところ「高校行かないで、すぐ働きたい」と言いながらも理解はしてくれているようでした。「がんばって勉強する」と言っているときもあって、やはりコロコロ言っていることが変わりますが、私も長男の気持ちを受け止める努力はしていこうと思います。
親の熱量と子の熱量は、近いほうがよいと思っているので、あまりしつこく話をもちかけて、「やる気の芽」をそぐ形にならないように、長い目でこれからも見守っていこうと思います。
執筆/スガカズ
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