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抱きしめたいけど拒否される!?感覚過敏のある息子が教えてくれた感覚の違い。気づいた今、心がけていること

LITALICO発達ナビ

むっくんのことを抱きしめたい


子どもを抱きしめて、隙間なく体をくっつける。ぬくもり、肌のやわらかさ、シャンプーの匂い、背中にまわる小さな手のひら。安心して体を預けてくれる様子に子どもからの信頼を感じ、愛おしさが育くまれていく大切な抱っこの時間。

だけどむっくんは小さなころから抱っこが苦手な子どもでした。私はこのかわいらしい子をぎゅうっと抱きしめてしまいたいのに、抱きしめるとのけぞって逃げ出したり、癇癪を起こしてしまったり…。むっくんが私の腕の中でじっとしてくれるのは、ぐっすり眠る真夜中だけでした。眠ったことを見計らって抱きしめて、私は寂しさを埋めていました。

「スキンシップを大切に」は育児のセオリーなのに、それができないこの子にどう愛情を伝えたらいいか分からず、私はよく途方に暮れたものでした。


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「感覚の違い」によるすれ違い


私は当時「子どもは抱っこが好き」と思い込んでいたため、抱っこを嫌がるむっくんは私を必要としていないと悲観していました。だけど、むっくんと付き合っていくうちにその背景には感覚過敏や多動ちゃんならではの理由があって「抱っこ嫌い=私を嫌っている」ではないと理解できるようになりました。

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「感覚の受け取り方」「感覚によって与えられる感情」というさまざまなことを理解する上での「基盤」がむっくんと私は違います。抱っこ一つとっても、そこから受け取るさまざまな感覚が私にとっては「心地よいもの」ですが、むっくんにとっては「不快なもの」。抱っこをしないほうがむっくんにとっては「安心」で、私にとっては「寂しい」。私たちは親子なのに感覚や感情を共有しにくく、小さなすれ違いが起こりやすい親子です。

そんなすれ違いを防ぐために、いつからか意識するようになったことがあります。それは「感覚や感情を余すことなく言葉にして伝える」ということです。
感覚も感情も見えないし聞こえません。感じ方が異なる以上、私の感じ方を、動いていく心を、意識して伝えなければ伝わりようがないと思い至ったのです。

言葉を尽くして伝える


むっくんが抱っこが好きではないことは知っていますが、私はやっぱり抱きしめたい気持ちを抑えられないときがあります。だって私は大好きなむっくんをぎゅうっと抱きしめる幸せを感じたいからです。

そこで、ときどきむっくんに抱っこの許可をもらった上で抱っこさせてもらいます。そのときはむっくんがつらくないように、できる限り言葉を使って具体的に感覚と感情を伝えることを心がけています。

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心を言葉で実況中継すると、むっくんは抱っこ中にいくらか安心した表情を見せてくれることに気がつきました。言葉で伝えはじめたころはとにかく恥ずかしく感じたものですが、以前よりも今の方がむっくんに私の気持ちや幸せが伝わっている感じがするのです。


また、伝える言葉を紡ぐため、私も自分と向き合う必要があり自己理解まで深まった気がして、言葉を尽くす清々しさに目覚めた気分です。

さらに、意識して言葉で気持ちを伝え続けるうちに、むっくんにも変化が…。私と同じように、むっくんも言葉を使って感覚や感情を伝えてくれることが増えてきたのです!

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気持ちを伝えてくれながら、恥ずかしそうに抱っこを求める様子はひたすら愛おしくって。私たちはこれまでスキンシップで育めなかったものを、今言葉を使って育んでいるようにも感じています。ひょっとしたら感覚の受け取り方は違っていても「言葉を使うことが得意」「言葉で感覚を共有しやすい」という部分が私とむっくんは似ているのかもしれません。

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自分を知って、人を知る


特性の有無は関係なく、人それぞれ感覚の感じ方、感情の動き方、伝わりやすい方法などは違って当たり前です。だけど、私は息子と出会うまで、自分がどんなふうに感覚を受け取り、その感覚から何を感じ取って生きてきたのかを言語化できるほど考えたことはありませんでした。

また、目の前の人がどんなふうに感覚を感じ、どのように感情が動くのか、また理解しやすい方法が何なのか、なんて真剣に考えたこともありませんでした。
それらを意識せず、ただ漠然と人と関わっていた私の生き方は、他者とのすれ違いを生み、大切な人を傷つけていたのだろうと思います。

だから、自分と相手は「心地よい感覚や感情の動き、伝わりやすい方法」が違うのではないか?という視点を持つことがとても大切だと思うようになりました。それに気づくことができれば、明日から見える景色は大きく変わるかもしれません。むっくんのおかげで、私の世界は外に内にどんどん広がっていくように感じています。息子を通して世界と自分を知る。こんなにも面白い経験をさせてくれるむっくんにただただ感謝です。

執筆/ウチノコ

(監修:初川先生より)
抱きしめることをめぐるプロセス、素敵な気づきのシェアをありがとうございました。読みながら、うぉぉぉ…なんと素晴らしい…!!!と心の中で声にならない声をあげながら拝読しました。
可愛いわが子を抱きしめたいのにそれを拒絶されるつらさ、いかばかりだったかと思います。

「私を必要としていない」と思い至ってしまう面は、多くの保護者の方で何らか思い当たる節があるのではないでしょうか。(赤ちゃんのころなど何をしても泣き止まないときに途方に暮れつつ悲しくなったご経験をお持ちの方は多くいらっしゃるのでは)感覚の受け取り方が違うのだと頭では理解していてもそれでも苦しかったことと思います。

しかしながら、そこからウチノコさんが言葉で伝えながら抱きしめるという方法を実践されてゆきますね。むっくんが言葉の理解が得意だった面もよかったのかなと推察しますし、何よりお母さんがむっくんに安心してもらおうと一生懸命説明しながら関わる、そして嫌だと思う前に撤退する、ということ。そこから、むっくんとウチノコさんの2人が納得し満足するあり方を模索していかれている…。そこが本当に素敵です。コミュニケーションというものは、相手を理解して付き合うということは本来そういうプロセスだったんだろうな、という基本に立ち戻らせていただいた気持ちになります。


さらに、むっくんはむっくんで自分の気持ちや抱きしめてもらいたいときのこと、強さについて言語化していることにも驚きです。すごい。お互いの歩み寄り、2人で心地よい距離感を探る。素敵です。

最後の【自分を知って、人を知る】にて書かれていること、私もまさにそうだと思いますし、そこを自らのご経験から気づき、学び、語られているというところで感心するばかりです。いろんな方に今回の記事を読んでもらいたい!と勝手に興奮しています(笑)。プロセスと気づきのシェアをありがとうございました。

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