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スイミング、塾、ピアノも挫折…!ASDの私の「できないこと克服系」習いごと失敗記――子ども時代を振り返って思う何より大事なコト

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カナヅチ克服のために通ったスイミング


ASDのある私は、子ども時代いろいろな習いごとに通いました。しかし、「私には向いていなかったなあ」と感じるものも多くありました。

私は水泳がまったくできませんでした。水が怖いのです。バタ足をしてみてもうまく水が蹴れず、どんどん沈んでいく。無理してクロールしてみれば、息継ぎのときに上げた側の耳にどうしても水が入ってしまうのが嫌だし、息継ぎの瞬間に盛大に沈んでプールの床に足がついてしまう。

親から「水泳の苦手克服のためにスイミング教室に通いなさい」と言われ、仕方なく通ったのですが、特に目立った効果は感じられませんでした。しかも今思えば、室内プールの中って音がすごく反響するので、すぐに疲労困憊してしまう。


当時は誰も私に発達障害があると知らなかったので、特に障害特性に沿った指導がなされなかったのも、目立った効果が感じられなかった理由のひとつだと思います。

算数の苦手克服のために通った塾


国語は飛び抜けて得意だったものの、算数が苦手だった私。苦手克服のために、決まった内容のプリントを繰り返し行うことで基礎力をつけることを謳う塾に通いましたが、これも合いませんでした。

もともと興味の持てない、苦痛なことを単純に繰り返すだけなので、いかに楽をして乗り切るかばかり考えるようになります。もう詳細は忘れてしまいましたが、同じプリントを繰り返しこなす塾のシステムを悪用して、以前やった答案を参照しながら答えを書き写すようなことをしていました。

こういったタイプの塾は、発達障害のある子どもでも、タイプによってはすごく合っていて、ゲームのように何周もこなすうちに確実に力をつけていく場合もあるようです。しかし、私にとってはまったく効果がないばかりか、苦しいばかりの習いごとだったように思います。

30歳を過ぎて受けた知能検査では、IQのバランスが「単純作業を手際よくこなすことが非常に苦手」なものだとわかって、私は初めて、あのときの塾がなぜ自分に合わなかったのか理解することになりました。


習いたくて通ってみたけど、合わなかったピアノ


合わなかった習いごとの中で唯一、私が自ら希望して通い始めたものにピアノがあります。同級生の子がピアノに通っていると聞いて、単純にぼんやりとした憧れを抱いて「私も通いたい」と言ったのですね。しかし、「ピアノを習っている」ということに満足してしまったら、私はまったく練習をしなくなりました。毎週まったく練習せずに教室に行って、毎度先生にこってり怒られるのにまったく意に介さない。楽譜を読めるようになろうという気概もなく、いつまでも楽譜にドとかミとかカナをふっていました。

あなたが言い出して始めたことなんだからまじめに続けなさいと言われて、ものすごく面倒臭かったのを覚えています。仕方なく何年か続けたものの、確か中学受験をするために進学塾に通い始めるタイミングでそそくさと辞めてしまいました。

唯一楽しく続いた課外活動はバトン部、部長にまでなる


自ら希望して始め、かつ楽しんで続けられた課外活動は学校のバトントワリング部でした。


私はスポーツ全般が苦手でしたが、いま思えば障害特性に合った指導をしてくれる指導者に出会えなかっただけで、身体を動かすこと自体は嫌いではありません。特にリズムにのって踊ることが好きで、嫌いな運動会の練習でもダンスの練習だけは楽しみでした。

バトントワリングとはもともと器械体操の種目。そのとき私が通っていた学校のバトン部では、運動会で可愛い衣装を着て、鼓笛隊に先導されてクルクルとバトンを回して踊リながら行進することをメインの活動にしていました。よくある大学のチアリーダー部の妹版みたいな感じで、花形だったのです。

当時は目立ちたがり屋でもあった私には、運動会で出しゃばれるのは行進やダンスだけだったので、すっかりのめり込みました。3年生から始めて4年間続け、6年生になったときには部長まで務めました。

本人のモチベーションが何より大事


いま振り返ると、単純な苦手克服系習いごとをはじめ、私の障害特性と合わない習いごとはやはり私に向いていなかったなあと思います。


根本問題は、当時誰も私の発達障害に気づいておらず、学校においても、私の障害特性に合った指導法がなされていなかったところにあります。私が体育全般が苦手だったのにも算数が苦手だったのにも理由があるから、その苦手な理由をクリアしていない習いごとをいくら重ねても苦手を克服できるわけもなく、負担が増えるだけでした。

発達障害のある子どもの体力は多くの場合、定型発達の子よりも限られていると思います。このため、習いごとや課外活動をたくさん掛け持ちすることには限りがあるでしょう。習いごとや課外活動を選ぶ際には、本人の障害特性に対する理解と配慮があり、本人が自らモチベーションを示すようなものを選んでいくのが大事なのではないでしょうか。

こうした、繊細な条件に合う習いごとや課外活動だけをさせるのは遠回りのように見えます。甘やかしのようにも感じられるかもしれませんが、本人に大きな負担をかけずに楽しく続けられるものを選ぶことが、結局は近道のように思えます。

文/宇樹義子

(監修・鈴木先生より)

いろいろな習いごとで向き不向きはありますが、指導者との相性も重要になります。
「できないことを克服」できたのも理解のある指導者が優しく丁寧に教えてくれたからだと推察します。

また、バランスが悪く、運動嫌いで、不器用なお子さんは発達性協調運動症の並存が考えられます。以前にもお話ししたように、リハビリでは作業療法士(OT)が行っている感覚統合訓練が効果的です。算数が苦手なお子さんは特異的学習症の計算障がいの可能性もありますので専門家と相談して対処するのがいいでしょう。将来的には電卓ができればいいと思います。

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