「学校は怖い」不登校歴2年の小3発達障害息子。当初は精神的に不安定だったけれど…今は目指せ「ホームエデュケーション」!
むっくんが不登校を選ぶまで――これまでの経緯
私たちは小1の秋から不登校を選びました。不登校に踏み切るまでのお話は以前のコラムにまとめています。当時のむっくんは大人に気持ちを伝えることが難しく、私たちも本人の様子を観察することで気持ちを汲み取る必要がありましたが、最近では当時感じていたいろいろな気持ちを言葉にして教えてくれることが増えてきました。
「学校はとてもうるさくて疲れること」「学習で理解できていることを何度もやらなければならないつらさ」「上級生にからかわれた嫌な思い出」「友達に対する先生の学習指導が納得いかなかったこと」「突然予定が変わる不安」「いろんなことをじっと待たなければいけない不快感」「自分の発言や行動を周囲の人たちがどう感じているのか分からないという不安」「ほかの生徒が叱られている様子を見たこと。次は同じように自分が怒られるのではないかと心配で仕方なくなること」「何故これをやるのか教えてもらえないこと。質問しても納得する答えがもらえないこと」「なにもかも、勝手に決められてしまうこと」そういうものすべてひっくるめて「学校は怖い」ということ。
むっくんの当時の心境は?
むっくんがぽつり、ぽつりと話す当時の思いからは、彼は私たちが思うよりずっと繊細に周囲の様子を見聞きし、感じ取り、彼なりに考え、彼なりの努力をしながら、小さな心を痛めていたことを改めて知らせてくれます。学校へ行かない理由は単純なものではなく、ちいさな綻びがたくさんたくさん積もった結果だということが感じ取れます。
話を聞けば聞くほど「彼には学校というシステム自体が合わない。どれだけ配慮があろうとつらさを感じてしまうだろう。だから行かない選択が彼の心を守ることにつながるのだ」と潔く思えているのが現在の親としての正直な気持ちです。
休校があった年の新1年生なので、むっくんが小学校へ通った時間は約2ヶ月半。本人は学校へ通っていたころを振り返り「少しだけ行ったから、学校がどんなところか知ることができた。行ったから、知れて。知ったから行かないって決めることができた。だから少しだけど行ってよかったんだよ」と話しています。
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不登校選択後の家庭での様子
むっくんは不登校を選んだ当初、精神的に不安定で私から離れられない、外出を嫌がる、夜眠れない様子などが見られました。そのため初期のころはとにかく無理せずゆっくりと、心と体が休まるように過ごしました。むっくんの周囲の大人は、私や夫をはじめ祖父母に至るまで彼の不登校を肯定的に捉えているので、家庭や家族が安全基地として機能することができました。また、学校へ行きたくないと話してから不登校の決断までも早かったので、無理をさせた時間が短かったことも幸いしたのか、むっくんは半年程度でそれなりに元気を取り戻すことができました。
元気を取り戻してくると「暇だな~、なんかすることない?」と活動を求めることが増えていきました。そのため、私たちは学校が担っていた役割を今後どう担保していくか、ということを考えるようになりました。学校へ行ってくれたら正直な話、私は楽に過ごせます。だけど、再び学校へ戻ることを求めると、むっくんはまた心を壊してしまうと感じていました。
そこでここからはホームエデュケーション(家庭を拠点に、子どもを尊重しながら、社会の資源を生かして学ぶこと)を目指していくことに決めたのです。
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家庭での体験学習
最初に家庭をベースに取り組んでいくことにしたのが【体験学習】になります。【体験学習】といっても、なにか特別なことをするわけではありません。本人がやりたがることができるように、環境を整えたり、一緒に活動したりするだけです。普段の過ごし方は以前まとめたコラムがあるので参照してみてください。
もともとむっくんはとても好奇心旺盛な人なので、次から次へいろいろと手を出していろんなことを楽しんでいます。中途半端感は否めませんが、楽しそうにくるくる動くむっくんを見ていることはうれしくもあります。特に料理に関するスキルが良く伸びていて、最近では私にお昼ご飯をつくってくれたり、弟のおやつを手作りしてくれたり。
毎日好きなことをして過ごすうちに、こんなことを知っているんだ、こんなことできるようになってたんだと驚かされることもあり、何をしても学習になり、いろいろなことをどんどん吸収して成長していくのだなぁと感じています。さらに最近では、公営施設が行う子ども向けのイベントや公開講座などにも参加できるようになり体験の幅も広がってきました。子ども向けの講座は探せばたくさんあるので、本人の「好き」を大切にいろんな体験を積むことはそう難しくないのだと感じています。
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執筆/ウチノコ
(監修:初川先生より)
むっくんにとって、学校というシステムが合わない。本人の語りや様子をふまえ、ウチノコさんがご決断されたこと、さまざまな考えが逡巡したことと思いますが、ご家族みなさんが今はむっくんの不登校という選択を肯定的に捉えていらっしゃるとのこと何よりです。
不登校になった当初は精神的に不安定になるお子さんは多くみられます。まずは休養を取られたこと、とてもよかったと思います。「暇」と言い始めるのが元気が回復してきた証拠なのはその通りです。
体験学習を中心に過ごしているのもいいですね。むっくんは公営施設での子ども向けイベントに参加できるのですね(それは何よりです!)。家庭の中だけでは経験しづらいこともあるので、そうした催しをうまく利用できるといいですね。
また、学校というシステム(セッティング)には合わなかったということですが、学校教育は膨大な内容を提供してくれる装置である側面もあります。学校ではどんなことを扱っているのかという視点も、大人の側は持っておくのもよいと思います。自分の生きるこの世界にはさまざまなもの・こと・不思議があるのだということを、さまざまな観点・視点から提示し、その中でお子さんが興味関心を持つものを見つけられるといいなと思います。