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ASDの私、完璧主義が引越しの足かせに!?特性を逆手に取った「環境変化のストレス」緩和策

LITALICO発達ナビ

環境の変化が苦手な私が引越しすることに


この秋、私は引越しをしました。引越しすることが決まってから出発当日まで1ヶ月しかないというタイトスケジュールです。

引越し作業本体というか、梱包自体は黙々と自分のペースでやれば済むことなので比較的気楽でしたが、大変だったのがあいさつ回りや転居に伴うもろもろの手続き。車を運転できる夫とスケジュールを合わせなければならなかったうえ、私は通っている病院がいくつもあったので、紹介状を書いてもらって受け取るだけでも予定がどんどん埋まっていきました。

プレッシャーと慣れない社交タスクの連続で片頭痛が連続して出るようになり、予防薬を飲み続けてやっと動ける状態でした。

完璧主義と認知のスローさが足かせに


引越し前の梱包作業でも、引越し後の買い物でも改めて思ったことですが、私は時間に追われる中で素早く決断することが非常に苦手です。

知能検査の結果をもとに心理士さんに指摘されたことがあるのは、ものごとの認知のしかたが詳細だが動作はスローなため、いわゆる熟考タイプで、急かされると非常にストレスを感じるし本領が発揮できないということでした。

なにをどこに入れるか、どれを買うか… そういったことの完璧な答えを必死に探そうとしてしまって優柔不断になり、半ばパニックになって固まってしまいます。


いっぽう夫は、素早く決断して短い時間で行動することになんのストレスも感じていないようでした。私からするとすごく雑な判断をしているようにも見えてヒヤヒヤするのですが、彼は自分が想定外のできごとに対応できる自信があるのもあって、失敗が怖くないのだと思います。

私は自分が想定外のできごとに非常に弱いし、失敗して叱責されたトラウマがたくさんあるので、失敗が怖くてつい完璧主義になってしまうのです。

タイトなスケジュールでの引越し準備でどちらも疲れていたため、2人の間で雰囲気が険悪になりかけたこともありましたが、夫と自分の特性を対比して見ることができたのはよい経験になりました。

新居で夫に驚かれた食器等の的確な配置、ストレス緩和対応策


新居に着くと私は怒涛の荷解きを開始しました。

ASDの几帳面さをいかんなく発揮し、食器棚の中の食器や食材の位置など、元あったそっくりそのままに収納。あるいは新しい環境でも一定の法則に基づいて非常に使いやすく配置しました。

そういった作業を黙々と一日中続ける様子に、夫は「うーんさすがだ、こまねずみのようだ、こういうことはやっぱりお前が向いてるんだな」と感嘆します。


夫「コーヒーはどこ?」
私「食器棚のここだよ、元あったところだよ、適当なとこに気分でしまったりしないよ笑」
夫「なるほど笑」
というやりとりもありました。

私は、自分が変化に弱いことをよく知っていたので意識してこのようにしたのですが、これは非常によい策だったようです。自分の本棚も梱包する前にどこに何が入っているのか写真に撮っておいて、そのとおりに詰め直したので楽だったし、前のとおりに本の並んだ本棚を見ていたらスッと気持ちが落ち着きました。

また、3日目ぐらいからは、ふだん習慣にしていたヨガの決まったルーティーンを再開しました。

ふだんどおりのヨガを違った環境・状態でやると、どこがどれだけ疲れているのかの違いがよく分かります。特に凝っていると思ったところを念入りにほぐすと、しばらくぶりによく眠れました。

夫はそれを見ていて、「お前のそういう心がけは本当に立派だよな」とこぼします。夫はふだん私より何倍も忙しいのもあるのですが、セルフケアの苦手な人で、私の心がけには一目置いているようです。


引越しを機に俯瞰することができた自分の特性


私は変化が苦手だし嫌いでもありますが、引越しのような、人生の中でときどき起きる大きな変化はいろいろと気づきを与えてくれるので、疲れるばかりではなく収穫もあるなと思いました。

私自身はいつも変わらないし、周囲の環境も変えまいとしますが、今回のように強制的に環境が変わることがあると、自分の特性がよく見えるよい機会となります。

ふだんから見つめていた自分の特性――変化が苦手であること、セルフケアなしに元気を保てないこと―― への意識が引越しの乗り切りを楽なものにしました。また、完璧主義や動作のスローさのように、あまり意識しておらず、引越しの途中でうっかり足元をすくわれた特性もありました。

発達障害の特性の中には、状況に対して有利に働くものも不利に働くものもありますが、いずれも過不足なく事実として認識し、的確に対応することが肝心だと思います。私は今回、悩みながらもきちんと自分の特性への対応ができているなと誇らしくなりました。文/宇樹義子

(監修・鈴木先生より)

環境の変化を「収穫」ととらえたことは素晴らしいことと思います。引越しをしてもできるだけ以前と同じような配置を工夫することで環境の変化を最小限に抑えることができます。
また、ADHDの並存で片付けや整理が苦手な人でもこういう機会に断捨離ができます。そういう意味で引越しもいいものだと思えればいいのではないでしょうか。

夫がASDを理解して、その特性について「立派だよ」と褒めてくれていることは大変重要で意義深いことです。夫婦お互いのできないところを責めるのではなく、できる特性を褒めてくれるやり方が夫婦円満の秘訣かもしれません。想定外の出来事に対応できる夫と苦手な筆者とで調和がとれているのだと思います。

「動作がスロー」なのはRussell A.Barkley先生らのいうADHDの併存症状Sluggish Cognitive Tempo(行動がもたもたする)タイプにあたるのではないかと考えられます。
完璧主義であるASDの裏に隠れたADHDも存在することがあります。そのために叱責され、自尊心が下がっているケースも多いのです。
ADHDがあれば早めに介入して治療することで自尊心を上げることは可能です。

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