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自閉症娘、どんな習い事もなじめず「1ヶ月で嫌」に。唯一続いたバイオリン教室との違い

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いろいろ習い事へ連れて行っても長続きしない


まだゆいに障害があるとは気づいていなかった幼児期から小学校低学年にかけて、私はゆいをいろいろな習い事に連れて行っていました。
水泳、クラシックバレエ、体操、合唱、硬筆…。本人が興味を持ったものから親のエゴで通わせてみたものまで、いろいろな習い事に挑戦したのですがすべて続きませんでした。

私のエゴで通わせたものは続かなくても当然なのですが(本当に申し訳ないことをしました)、本人が行きたいと言って習い始めたものも、1ヶ月ほど経つと嫌がるようになり辞めてしまいました。

もちろんどの習い事教室のメンバーも明るく迎えてくれたのですが、本人はなかなかなじめなかったようです。今思えば、すでにできあがっているコミュニティに入っていくということが、ゆいにとってはハードルが高く、緊張してつらかったのかなと思います。しかし本人も「やってみたい」と言ってしまった手前、1ヶ月ほどは辞めたいと言い出せずに堪えていたようなので、つらかっただろうなと感じます。

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小学2年生で習い始めた「バイオリン」


そんな中、ゆいが「バイオリンをやりたい」と言ったのは小学2年生のころでした。


それまで楽器系の習い事の経験がなかったのですが、テレビで演奏する人を見て興味を持ったようでした。私自身が吹奏楽部だったこともあり、音楽の習い事に興味を持ってくれたことがとてもうれしく、近所のバイオリン教室を探して見学の申し込みをしました。

バイオリン教室は先生の自宅がレッスン場所で、完全個別指導でした。今思うとこの個別指導がゆいの特性に合っていたのでは、と思います。もしかしたら今まで続けられなかったほかの習い事も、個人指導タイプだと続けることができていたのかもしれません。

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障害のある子どもに理解のある先生との出会い


初めて先生と対面したゆいは受け答えができず、YesかNoで首を振ることしかできませんでした。当時の私はゆいのことを人見知りが強い子どもだとしか思っていなかったので「この習い事も続かないのかな…」と心配をしていたのですが、実は先生は障害のあるお子さんを何人も受け持っており、子どもの特性に理解がある方で、ゆいに合った進度で指導をしてくださいました。時間はかかりましたがゆいも先生の問いかけに単語で返せるようになり、楽しくレッスンに通うことができるようになりました。
この習い事はなにより個人指導ということがゆいにとって安心できる材料だったのかなと思います。ほかに生徒がいるグループレッスンだと緊張が強く通い続けることが難しかったかもしれません。

ゆいの楽器練習の進度は一般に比べるとかなりゆっくりとしたペースです。けれど、少しずつできることは増えていて、とても楽しそうです。やはり「好き」に勝るものはないなと感じました。

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習い事を通して娘が手に入れたもの


この習い事を始めて私が一番良かったと思うのは、ゆいが自信を持てたことでした。学校の勉強は難しいし、友達をつくることも苦手なゆいが学校以外の場所でイキイキと楽しめることを見つけられたのは、親の私にとってもうれしいことでした。

今、ゆいには居場所が3つあります。
自宅、学校、そして習い事教室。どこかで上手くいかなくなることがあっても、ほかの居場所があれば救われることもあるのではと思います。

バイオリンを習い始めたことで、音楽がゆいと私の共通の趣味になりました。ゆいは今、私と二人で合奏することをとても楽しんでくれています。これからも音楽を通じて世界を広げ、人生をより豊かにしていってくれたらと願っています。

執筆/吉田いらこ

(監修:井上先生より)
習い事がうまくいくかどうかは、子どもの興味関心だけでなく教室の環境的な要因、例えば、人数が多い、騒がしい、先生が厳しい…なども影響します。先生と1対1で学ぶ環境というのは、ゆいさんのお母さんがおっしゃる通り、非常に安心できると思いますが、厳しく叱責したりする先生は向いていません。ゆいさんが出会われた先生のように、本人のペースを尊重したり上手にほめたりすることで、まずは楽器の演奏を楽しくして、周りの子どもができないことを自分ができるという意味で、本人が自信をつけることができるのはとても良いと思います。

みんなの前でお話がしにくい子どもでも、言葉の代わりに音楽で表現できるという点も、良いのではないでしょうか。
先生や家族の前で演奏ができるようになったとしても、先に述べた環境的な要因から、大きなコンサートホールや初めての場所だと一気に不安や緊張が増してしまう場合もあります。無理せずスモールステップで、演奏する喜びを感じながら進められると良いと思います。

コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的能力障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。
論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如・多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。

SLD(限局性学習症)
LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。

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