パニック障害(パニック症)の治し方は?薬や治療法、発作が起きたときの対応を紹介。併存症や発達障害との関わりなども医師が解説!【医師監修】
パニック障害の治し方、治療期間の目安、処方される薬は?
パニック障害(パニック症)は、突然理由もなく動悸やめまい、発汗、息苦しさ、吐き気、手足の震えなどのパニック発作を起こし、自分ではコントロールできないほどの恐怖を感じる精神疾患で、完治までには数ヶ月~数年ほどかかると言われています。
パニック障害の治療を受けるまでの流れと対処法、治療期間の目安を解説します。
1.問診など
不安の度合い、日常生活や仕事など、またどのように育ってきたか(成育歴)を質問し、情報はカウンセリングなどの治療に生かします(守秘義務に基づく)。
2.体の病気がないか調べる
内科的な検査をして異常がないか、脳波や脳の画像検査を行う場合もあります。
3.問診・パニック発作の確定
発作ではどんな症状があらわれたか、どんな状況で起こったか、発作の前後の状況などを詳しく聞いて「パニック発作の診断基準」と照らし合わせ、確定診断を行います。
4.パニック障害の診断
パニック発作の確定診断があれば、次は「パニック障害の診断基準」と照らし合わせます。「症状が1ヶ月以上ある」「予期不安がある」などを調べ、場合によってはほかの不安障害などによらないか調べることも必要になります。
5.広場恐怖の有無
「広場恐怖の診断基準」に照らして、広場恐怖があるかどうか調べ、あれば治療法を検討します。
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カウンセリングなどを中心とした精神療法と共にストレスへの対処を中心に治療します。特に、支持療法を中心に行うことが多いです。支持療法とは、医師や心理士が本人の話を聞いて、医師や心理士と信頼関係を築きながら、自尊心や自信、適応力を身につけていくことを目指す治療法です。
そのほかにも補助的に認知行動療法などを取り入れる場合があります。
パニック障害に処方される薬にはパニック発作を抑える抗うつ剤と精神を安定させる抗不安剤があります。パニック障害の症状には、ほとんどの種類の抗うつ薬が有効であると言われています。
アルプラゾラムなどの抗不安剤(ベンゾジアゼピン系薬剤)は、抗うつ薬と比べてすぐに効果があらわれやすい特徴がありますが、薬物依存になる可能性があるほか、副作用として眠気、協調運動障害、記憶障害、反応の鈍化などが起こりやすくなると言われています。薬物療法により発作が起こらなくなったり、発作が起こる回数をかなり抑えられることがあります。
しかし、平行して精神療法を行わず服薬のみになってしまうと「薬があると安心(逆にいえば、薬がないと不安)」で薬が手放せない状況に陥り、根本的な改善を妨げることがあります。また服薬を止めてしまうとパニック発作が再発することも多く、長期間の服用と平行して精神療法を行うことが必要になります。
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パニック障害の症状は理由がなく不意に起こることから、すぐさま救急車を呼ばなければならないという気持ちになってしまうかもしれません。しかし、一般的に発作は10分以内にピークになり、数分で治まります。
■パニック発作が起きたときの対処法
・ゆっくりと息を吸って、ゆっくりと息を吐くことを意識して呼吸を整える
・衣類が窮屈な場合は緩める・室内や車内のときは、窓を開けるなどして外の空気を入れるなど自分に合っている対応を見つけることが重要です。リラックスしたイメージをする、飴を舐めるなど落ち着くことができる方法を見つけられるとよいでしょう。
周囲の人は突然の発作に驚くかもしれませんが、慌てずに本人がゆっくりと呼吸ができるように安心させ、症状が落ち着くのを待つことが大切です。
■日常生活で気をつけること
パニック障害と付き合う上では、生活上のストレスをなるべく減らし、規則正しい生活を送ることが大切です。
人間関係だけではなく、過労や睡眠不足もストレスの原因となります。回復をあせらないようにしましょう。また、コーヒーなどのカフェインを摂取しすぎることも悪化の要因になることがあります。適度な量にとどめておくとよいでしょう。
発作が治まってもすぐに治療が終了するわけではありません。また服薬をしている場合、急に服薬などを止めると、再発する可能性もあります。治療をどのように、どの程度継続していくかは、必ずかかりつけの医師に相談し、独断で治療を中止しないようにしましょう。
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パニック障害と併存症
パニック障害は、不安障害(特に広場恐怖症)、双極性障害、うつ病などと併存することがあります。
この章では、広場恐怖症、双極性障害、うつ病との関わりを解説します。
広場恐怖症とは、大きな不安に襲われたときに「すぐに逃げられないかもしれない」「誰も助けてくれないかもしれない」と強い恐怖を抱き、その状況を回避しようとする精神疾患です。広場恐怖症を発症する前にパニック障害を発症している人が多くいることが分かっています。
双極性障害とそのほかの精神疾患が併存することは多く、特にパニック発作を併発することが多くあります。
調査によって併存する割合にばらつきはありますが、パニック障害とうつ病を併存することがあることが分かっています。
パニック障害と発達障害との関わり
ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)の併存症としてパニック障害を含む不安障害の症状があらわれる場合があります。
また、厚労省の調査では、大人になってから発達障害があることが分かったという人が多くいることが分かりました。自身に発達障害があることに気がつかないまま生きづらさを抱え、二次障害としてパニック障害を併発することがあります。
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2017/172091/201717005A_upload/201717005A0024.pdf
参考:成人期発達障害者の生活実態に関する調査 〜全国の発達障害者支援センターの新規相談者の1202例の分析〜|厚生労働省
パニック障害は完治する?自力で治せる?医師に聞いてみました
A:パニック障害は早期に適切な治療を行えば完治することも多いので、心療内科、精神科などに相談することが大切です。薬物治療に加えて精神療法の併用が重要だということが分かっています。
A:パニック障害は医師にかからずそのまま放置をして完治するものではありません。
そのまま放置をしたり、気合いで乗り越えようという対応は、逆に症状の悪化や慢性化を引き起こしてしまいます。パニック障害は治療が遅れやすいので「もしかして…」と思ったら早期の専門家への相談をしてみましょう。
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パニック障害の治療には周囲の理解も必要です
パニック障害とは、突然の動悸やめまい、発汗と共に恐怖を感じ、いつ次の発作が起きるかという不安を伴う精神疾患です。ほかの精神疾患との併存や、発達障害の二次障害として発症することもあります。
パニック障害は適切な治療をすれば完治することが分かっています。
もしかしてパニック障害かもしれないと思ったら、医療機関などに相談しましょう。
また、パニック障害の治療には周囲の理解も必要です。周囲の人たちは、完治を焦らせずに、長い目で見守りながらサポートしていきましょう。
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_panic.html
参考:パニック障害・不安障害 | 厚生労働省
イラスト/にれ
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
ADHD(注意欠如・多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
SLD(限局性学習症)
LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
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