自閉症息子の癇癪は近所迷惑?家族で孤立しかけて夫婦会議。「町内行事」に欠かさず出るようにした結果
外出は苦難。だけどご近所さんにバーベキューに誘われて…
ほぺろうは現在、特別支援学校に通う小学1年生。今でこそ経験を重ねて少しずつ改善してきたものの、もっと小さなころは場所見知りが壮絶で外出するのも苦難でした。
一般的に子どもが喜びそうな場所やイベントに遊びに行くなんてとても無理。泣いて暴れて収拾がつかなくなり、逃げるように帰るのが常。
ほぺろうが3歳のとき、良かれと思ってチャレンジした動物園も、遠路はるばるやって来て入園できたと思ったら大号泣!…結局、入園料だけ支払って即また遠路はるばる帰宅したという記憶があります。
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そんなほぺろうが就園し年中になったある日、私たち家族はご近所さんからバーベキューのお誘いを受けました。しかし、お誘いを受けてもほぺろうの事情で参加することは難しい。
「子どもはみんな泣くもの。
大丈夫!ほぺろう君 連れておいで~」と優しく言ってくださるが、ご近所さんが想像する「泣く」とほぺろうのものは絶対違う。みなさんを困惑させ迷惑をかけてしまうことが目に見えていたのでバーベキューをお断りしました。
が、しかし…。
ご近所さんを見送ったあと、私たち夫婦は自分たちの対応を思い出して落ち込みました。言葉で説明するのが難しいほぺろうの状態。親切で誘ってくれる相手から見たら、頑なに断るわが家の態度はワケが分からなかっただろうと。そんなつもりはないのに輪に入ることを拒絶しているように見えたのではないかと…。
ご近所さんにほぺろうのことを口頭では説明していたけど、実際に様子を見てみないと障害の程度や事情は伝わりにくいのだと悟ったのと同時に、伝わらないままだと「ワケの分からない家族」として孤立してしまう気がして、それはほぺろうのために良くないと反省しました。
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ほぺろうを見てもらおうと決意した夫婦会議
当時は、今よりさらにほぺろうの困りごとが激しかったので、人を避けたいという気持ちがなかったと言えばウソになります。でも、中途半端にほぺろうを人から遠ざけたままでは周囲から心配や誤解を招く可能性があると考え直しました。今後どうしていこうか夫婦で会議したときの夫の言葉が印象的でした。
「ご近所さんにはちゃんとほぺろうを見てもらった方がいい。『自閉スペクトラム症があります』だけでは普通は伝わらない。どんな子どもか知ってもらった上で受け入れてくれる人がいればありがたいし、逆に抵抗のある人がいれば距離を置くように配慮しよう」
「迷惑をかけるのは生きている限り避けられないだろう。でも、ご近所さんには知ってもらおう…」
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人への挨拶を大切にしてきた私たち夫婦ですが、ほぺろうの癇癪が酷くなってからというもの「迷惑かけないために」と ほぺろうを遠ざけるように即撤退することが多くなっていました。
でも、ほかの場所ではそれで良くても、長期的に考えると『生活圏』でこのままの状態は良くない。
なぜなら、人を避けてばかりだと不可解さで周りに不安を与えてしまい、その結果ほぺろうの印象が悪くなる可能性もある。
保育園や学校は数年で卒業するけど家はずっと暮らす場所。ここで暮らしていくほぺろうのことを考えると、口で説明するだけではなく私も勇気を出してもっとほぺろうの様子をご近所さんに見てもらおうと思いました。
これだけは!親子で頑張って参加する行事
それからは、相変わらずお出掛け的なイベントには行かないわが家ですが、ゴミ拾いや花火大会など町内行事だけは積極的に家族で参加するようになりました。
ほぺろうが場所見知り人見知りしてパニックになるのでご迷惑をお詫びしつつ途中リタイアがほとんどですが、5分だけでも顔を出すところから始めて、少しずつ滞在時間を延ばしていっています。
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自宅=生きていく場所
ほぺろうを知ってもらうことで優遇してほしいとか可愛がってほしいとか、ましてや発達障害について勉強してほしいとかでは決してありません。ただ「こういう子どもなんだな~」とフンワリとでも思ってもらえたらありがたいのです。
ほぺろうが生きていくための居場所とは…と考えたとき、「自宅」のウエイトは非常に重い。
ほぺろうもご近所さんもお互いが気持ち良く暮らせるには?と思うと「少しでもほぺろうをオープンにすること」「親である私たち夫婦が周りに不安を与えない、話しかけやすい雰囲気をつくる」ことを心がけています。特別な行為ではありませんが、小さな積み重ねでほぺろうが社会の一員に加えてもらえたらと願って。
ほぺろうが小学生になった現在、いまだに「ご近所さんに障害が十分伝わった」というワケではないし、理解を押しつけようとも思いません(逆の立場で考えてみても、難しさを感じます)。
でも年月が経ち、最初は顔を出すだけでも大変だったほぺろうがご近所さんの顔を覚えてきて、相変わらずコミュニケーション取れないまでもリラックスしてその場にいられるようになってきました。夏に開催された花火大会では、小学1年生にしてやっと!最後まで泣かずにその場に居続けることができました。
わが家に一番近いお宅の方は 泣き暴れの激しい時代からほぺろうのことを見てくれていました。ずいぶん騒音で迷惑をかけてしまったり心配させてしまったりしたはずなのに、「今日のほぺろう君、最後までいられてスゴイ!成長したね」「これからも一緒に楽しめたらうれしい」と言ってくださって、私は目頭が熱くなりました。
ずっと見守っていてくださったんだなぁ…と感謝せずにいられません。
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執筆/ぼさ子
(監修:新美先生より)
場所見知り・人見知りが強かったり、多動・癇癪などが強いお子さんの場合、お子さんにつらい思いをさせたくない気持ち、目立ちたくない、とがめられたくない、そもそも大変すぎて疲れるという親の気持ち両面から、人が集まる場を避けるようになることはありますよね。そういう中で、ご夫婦で話し合い、地域の中で生きていくためにも、少しずつ慣れていこうと決めて出ていかれたというエピソードは大変に勉強になりました。ありがとうございます。
おそらくご夫婦で話し合って決めて、協力して連れていかれたというところが鍵なのかなと思います。エピソードにあったような5分だけでも連れて行って、あとのお仕事はご主人に任せて子どもは奥さんが連れてささっと帰るというように、外担当と子ども担当をわけて協力されるのはいいなと思いました。そういったことを積み重ねて、お子さんもだんだん慣れて、ご近所さんにも知ってもらえるというのは理想ですね。余裕がないときはそこまでできないと思うこともあるかもしれませんが、ご家族で協力してできることであれば、地域に出ていくことも大事ですね。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。
現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。
ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
ADHD(注意欠如・多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
SLD(限局性学習症)
LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。