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発達障害がある子の不登校「ゲーム依存にならない?」「勉強はさせていい?」「反抗期の関わり方」保護者の質問へのアドバイス【臨床心理士が回答】

LITALICO発達ナビ

発達障害のある子どもの不登校。特性のふまえ方は?


不登校の小中学生は年々増加傾向にあります。発達障害のある子どもの場合、「学校」という枠組みや「標準」とよばれるようなものにフィットしづらい傾向があり、困りごとを抱えている中で不登校につながることがあります。

そこでLITALICO発達ナビでは2023年1月に「発達障害のある子の不登校サポートセミナー」を開催し、臨床心理士・公認心理師であり、東京都内でスクールカウンセラーも務めていらっしゃる初川久美子先生に、不登校サポートに関してお話いただきました。このコラムでは不登校生セミナーでの講演から一部を紹介し、さらにあらたな質問と回答を加え「発達障害のある子どもの特性のふまえ方、自宅での過ごし方、学習のすすめ方」を中心にご紹介します。

子どもが「学校に行きたくない」と言い出したときは、子ども自身がさんざん悩みに悩んだ結果のうえで、それでもどうにもならなかったから出している「SOS」であり、問題を解決するよりも先に、まず休養をとることが最優先と考えましょう。

保護者の方自身も悩み、サポートしていくうちに疲れてしまうという声も多く耳にします。大人自身が不安な気持ちを信頼できる人に話したり、今や将来への情報を集めてみる(想像より選択肢は多く不安が少し解消されるかもしれません)、そして保護者が自分自身を休める時間をつくることが大切です。

発達障害のある子どもの場合、「学校」という枠組みや「標準」とよばれるようなものにフィットしづらい傾向があります。
能力として「できる/できない」以前に、学校生活を送るだけで消耗しやすい状態になりやすく、自分自身のコンディションによって思うような行動ができずに困りごとを抱えてしまうことも多く、不登校や行き渋りにつながることがあります。

では、発達障害のある子どもの特性のふまえ方はどう考えたらよいのでしょうか。

発達障害には主に3つのグループがあります。

発達障害がある子の不登校「ゲーム依存にならない?」「勉強はさせていい?」「反抗期の関わり方」保護者の質問へのアドバイス【臨床心理士が回答】

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しかし、「自閉スペクトラム症のある子どもの不登校には○○をしたら正解」「ADHDのある子どもの不登校は、このようにサポートしたらうまくいく」「学習障害のある子どもの不登校の対応はこれ」などといった、型の決まった解決方法というものは、残念ながら存在しません。発達障害は、その子の一部分でしかないため、お子さんの状態は「特性によるもの、性格によるもの、環境によるもの」などさまざまです。そのため特性にだけ焦点をあてて対応するのではなく、特性による対応は「大まかな方針」として考えるとよいと思います。

では、以下でそれぞれの特性のふまえ方の例をご紹介します。

例1、ルーティンがあるほうがよいか
ルーティンを取り入れられるのであれば、家での過ごし方の”大まかなスケジュール”をお子さんとの話し合いで決めてもよいと思います。
例えば「午前中は本を読んで、ゲームは午後からにしよう」「1日1ページは漢字ドリルをやろう」など。
また、何をしていいかわからないと困ってしまい「ルーティンがあったほうが過ごしやすい」というお子さんもいるので、その場合は何かルーティンがあることで、「今日も一日中何もしなかった」「つまらなかった」などとなることを防ぐことができるかもしれません。

例2、学校を休むことに罪悪感が強い場合
学校に行くのはつらいけれど、休むことへの罪悪感が強いお子さんもいます。その場合は、学校との関わり方を模索するとよいでしょう。

詳しくはこちらのコラムをご覧ください。

例3、どこでどう過ごすか
「家で静かに過ごすだけなのは苦痛」というお子さんもいらっしゃると思います。例えば「放課後の校庭開放に行ってみよう」「放課後は友達と遊ぼう」「朝など、保護者と一緒にジョギングしよう」など、少し広い場所などで活動する時間をつくるとよい場合があります。自治体の適応指導教室の利用を考えてもいいかもしれません。


例4、最低限、守ることを決めたほうがよい場合
自分がやりたいことに対して制御できないというお子さんもいると思います。保護者の方もこのままではルールがなし崩しになってしまって危険と感じるようなとき、最低限のルールを決めることは必要だと思います。例えば「ゲームを始めると歯止めが利かず、いつまでもやり続けてしまう」などの場合は「ゲームの終わりの時間を決める」「夜はゲームをしない」「寝る時間を決める」「夕食は家族と一緒に食べる」など、(すべてを制限するのではなく)ルールを厳選して持つことが必要かもしれません。

ここからは、子どもが不登校になったとき保護者はどうしたらよいのか、学校との連携についてなど寄せられた質問に初川先生に具体例を交えてご回答いただきます。

Q.不登校になり家でゲームをずっとやっている息子。依存症にならないか心配


【質問】
不登校の小4の息子(自閉スペクトラム症/ADHD)がいます。ゲームが大好きで延々やっていても楽しそうです。無制限で徹夜でやりたがります。それでも許可してよいのでしょうか。
依存にならないか心配です

【回答】
許可しない方がいいと思います。息子さんの特性的な面を考えると、ゲームのような楽しいものから離れづらい(自らおしまいにすることが苦手な)面があるのではと感じます。子どもは、好きなものには飛びつきやすく、生活リズムや体調管理、そして家族との生活(一人で生きているわけではない)を考慮して自らの行動をコントロールすることについては、まだまだ未熟、未発達な面があります。そういった意味で、家庭としてルールは設定してあげたほうがよい場合があります。息子さんの場合はそうだと思います。その設定の仕方はお子さんの特性や状態と家庭の考え方によるとは思います。終わりの時間を定めるだけにするか、始まりの時間も定めるか(不登校のお子さんのご家庭でよくあるのは「ゲームは午後から」や「ゲームは学校が終わった時間から」ですね)、食事は家族と一緒に取ることも追加するか、そのあたりはお子さんとも話し合ってご家庭の方針でと思います。

不登校なり始めの際に、「学校に行っていないのだから、ゲームは禁止」とされるご家庭があると思います。
また、「学校を休んでいるなら、寝ているか勉強しているか、あるいはお手伝いするかのどれかじゃないとだめ」と考える保護者の方もいらっしゃるように感じます。学校に行けないことの罰として、お子さんの好きなものを取り上げてしまうような対応をすると、お子さんは学校に行けないのもよくないと分かっているのに、さらに家でも苦しい状況に陥ってしまいます。また、休みはじめは疲れ切っていたり、好きなことすらやる気が湧かないような状態のこともあります。そういう場合は、お子さんの好きな活動や遊びをする時間をうまく取り入れていくことはとても意味のある大事なことになります。

子どもは遊びから元気をもらう場合が多くあります。ただ、だからといって、際限なくさせるというのはまた違う話です。結果としてお子さんが一時的に昼夜逆転になることは多くのケースでありますが、昼夜逆転を引き起こすような設定をする(際限なく動画やゲームを許可する)のはちょっと違うと感じます。お子さんが落ち着いて話せそうなときに、生活のルールについて話し合うことは大切です。
ただ、それがあまりにも細かすぎるとそこにもお子さんが疲弊してしまうので、ざっくりとしたルール(消灯時間やゲーム・動画の終わり時間を定めるなど)でよいように感じます。

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Q.ルーティンがあるほうが安心して過ごせるようだが、時間の感覚が苦手な場合、どうしたらいい?


【質問】
子どもは「ルーティン」は好きなのですが、 時間感覚に少し苦手があるのか、 時間で決めるとうまくいかない場合が多く、親子共に困ることがあります。 時間感覚に少し苦手な場合のルーティンづくりのコツがありましたら教えていただけると幸いです

【回答】
ここはぜひご本人とも話し合っていただきたいのですが、時間管理を細かく決めすぎるとせっかくの過ごしやすいはずのルーティンがそうではなくなってしまいます。まずは親子で工夫を考えていただければと思います。私は基本的には時間は決めすぎない方がよいと思っていて、日によって多少ずれるのは自然なことだと思います(コンディションがいいからたくさん何かをやる日もあれば、やる気がどうにも出なくて少しゆるく過ごしたくなる日もあるのは自然です)。そういう意味で、帳尻を合わせるところをむしろ考えたらよいのではと思います。夕食は何時から(多少幅を持たせておいた方が苦しくはならないと思います)、寝る時間は何時といったざっくりさ。あるいは、午前中の間にこれとこれをする、くらいのざっくりさ。
本人とどこで帳尻を合わせるか、つまり、優先順位の高い時間のルールはどこかを定めるという話し合いをぜひしていただければと思います。保護者が声をかけるのはその決めたところだけでいいのか、そのほかもリマインダーとして声をかけてほしいのか、そのあたりも相談できるといいと思います。

ルーティンによって安心がもらえるタイプの方は、ぜひルーティンによって心穏やかに過ごせることを受け取ってほしいと思うので、だからこそルーティンに振り回されないことが大事になります。また、大人になってゆくことを考えると、ルーティンと自分自身のコンディションとを考慮できるようになっていくことも大事なことにはなります。例えば今日は疲れているから今日はこれはやらない、という多少の臨機応変さです。今そこまでできずとも、ゆくゆくそうした臨機応変を入れても大丈夫なだけの余白は残しておきたいという意味で、ゆるめのルーティンを一緒に検討しておくという準備が今からできるのではと思います。

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Q.発達障害があり、服薬をしている娘が最近になりこだわりも増え毎日学校に遅刻。薬の増量をお願いしたほうがいい?思春期特有のパワー不足?


【質問】
自閉スペクトラム症(ASD)とADHDがあり、服薬をしている小学6年生の娘がいます。最近、こだわりも増え、学校に行きたくないと言い出し、理由は自分でも分からないと言いますが、毎日遅刻して登校しています。薬の増量をお願いするのか、思春期でよく起こるパワー不足による不登校が起きているのか、どうやって判断をしたらいいでしょうか?

【回答】
まずは、遅刻してでも毎日通っているのは娘さんはとても頑張っているのだと感じます。娘さんに限らず、学校に行きたくないと感じる子どもは、その理由をしっかりと語れることはあまり多くありません。学校あるいはそのほかの場面で、何らか苦戦している・つらいことがあると理解しておきましょう。

自閉スペクトラム症とADHDがあるとのことですが、その場合、学校生活や集団生活ではさまざまに困難があることが考えられます。予期せぬ展開に戸惑ったり、注意集中が困難で頑張ろうとしているのに気がそれてしまったり。クラスの仲間との関係も気になるところです。そして小6だと授業がとても難しく、進みも速いかもしれません。遅刻によって参加できない授業があると、飛び飛びに受講することとなり、都度戸惑っている可能性もあります。授業はまだ参加さえしていれば過ごしやすいと感じるものの、休み時間をどう過ごしたらいいか分からない、誰かと一緒にいたいのにひとりぼっちになる。こうしたことが学校のつらさの要因になっているお子さんもいます。このように、さまざまな可能性が考えられます。
まずは、担任の先生に、娘さんが学校で過ごしているときの様子(授業場面、生活場面、人間関係についてなど)を聞いてみるのがよいのではないでしょうか。また、娘さんにも学校で楽しい時間や授業があるか、困っていることはないかなど聞いてみるといいと思います。思春期になると、学習がどんどん難しくなり、ある程度の意欲がないとつらくなりやすいです。自分のことも多少客観視できるようになる中で、学校という環境(学習、友達、先生などさまざまありますが)にしっくりくるかどうかというところに自覚的になってくる面があります(これは成長の一つとも考えられます)。「思春期でよく起こるパワー不足による不登校」が何を指すのか私には分かりませんが、ともあれ、型にはめすぎることなく、お子さん本人がどう困っているのか、意欲などのコンディションはどうかなどを多角的に見ていただければと思います。

親が学校に行ってほしい思いが強く、それが子どもにも伝わっている場合だと、子どもが学校の何がどうつらいのかをより一層言いづらくなることもあります。言ったところで反論されることが目に見えると言わないでおく子どももいます。思春期だとそうした面が強く出ることもあるので、そういう場合は親子で話し合うというよりも、担任の先生やスクールカウンセラー、養護の先生など、お子さん本人が話しやすい相手と話をするセッティングを取ることも工夫として考えられます。
そして、もう一つ考えておきたいのは、本人がうまく言葉で説明できずとも、何となく学校が嫌だと感じている場合に、そこに無理に行かせることがよいことかということです。(本人にとっては)耐え難い環境に身を置いてどんないいことがあるのだろうか…と考えてしまいます。もちろんそれがゼロ(全く登校しない)か100(朝から最後までずっと登校している)かという話ではないので、無理なく、学習やさまざまな活動にそれなりに参加できる登校スタイルはどんなものかを考えてみるのは一つ大事なことかもしれません。場合によっては、登校することと併せて、自治体の適応指導教室や教育相談室、あるいはフリースクールの併用なども検討してもいいでしょう。学校のことに限らず、本人にとって意欲的に取り組めること、好きなこと、楽しめることなども同じように一度振り返っておくとよいでしょう。意欲を削がれる局面が多すぎると、好きなことすら楽しめなくなり、いよいよ調子が悪くなってしまうこともあります。

薬については、主治医の先生にご相談をと思います。いかなる薬も、薬で得られることは限定的です。よく言われるのは、イイコになる薬や学校に行けるようになる薬はないということです。ご自身のコントロールの範疇を超えてイライラが止まらない、集中が難しい…そうした場合に服薬の検討が入るのだと理解しています。娘さんにとって学校がどんな場所か、どんなふうだったらもっといやすい場所になるか。学習に取り組みやすいか。そうした本人の心と、それを取り巻く外枠との調整をまずご検討いただければと思います。

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Q.不登校の息子は自分の気持ちを表現するのが苦手、思春期で接し方も難しい。関わり方のコツは?


【質問】
中学1年生の息子は、二学期から不登校です。自分の訴えが中々うまく表現できません。また、思春期、反抗期ということもあり、関わりが難しいです。約束事も少なく厳選していますが、守るのが難しいです。関わり方にコツがあれば教えてください。

【回答】
話すのが得意な子どももいれば苦手な子どももいます。自分の思いがなかなかうまく伝えられないのは本人にとってもつらかろうと思います。伝えたいこと、分かってほしいことはあっても、うまくそこがうまく表現できないと苛立ち、あきらめなどの気持ちがわいてきてしまうかもしれません。そんな中で、不登校があり、家の中でも守るべき約束事があり…保護者の方へ反抗が向くのは自然な流れのようにも感じます。そういう意味では、無理に語らせるというよりも、まずは他愛もない話がお互い窮屈でなくできる関係でいることが大事かなと思います。

昔からよく言われることではありますが、話をするときは同じ方向を向いている方が話しやすいです。面と向かって座ると実は話しにくいのです。散歩をしながら、一緒に料理をしながら。そのほか、何もしない時間を一緒に味わうこともとても良きことなので、おすすめは釣りです。ともあれ、同じ方向を見て、話しても話さなくてもいい時間で、その中で散歩なら目についたものを話す、料理だったら一緒に作業をする。釣りなら釣り糸を眺める。大人は、状況を前に進めるために話をして聞き出したり説得したりしたくなってしまいますが、そうではない時間を大切にしていく。親と話すのは、学校どうするの?勉強どうするの?だけになってしまうと、ますます話さなくなるだろうことは想像できると思うのですが、だからこそ、逆説的にただ一緒に過ごす。そんな時間を大切にしていくことが大事なのではと感じます。

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Q.きょうだいそろって不登校。対応の注意点やアドバイスは?


【質問】
中学2年生の娘と、小学4年生の息子が不登校です。姉弟そろって不登校の場合の注意点やアドバイスなどもあればお聞きしたいです。

【回答】
きょうだい揃って不登校だと保護者の方のご心配や焦りはいかほどかと思います。きょうだいで徒党を組んで保護者の決めたルールを壊しにかかったり、どちらかが何かに意欲的に取り組もうとするともう一人の方が足を引っ張ろうとしたり、そうした難しさがあるのではと想像します。家の生活上のルールに関しては、2人からとやかく言われたとしても、守るべき線がある場合はどうにか守っていただきたいと思います。一度緩めてしまうとそこを立て直すのはなかなか難しいだろうと感じます。

また、娘さんと息子さんの不登校の理由や学校の状況はそれぞれ違うはずです。おそらく、学習に関しての得意不得意や同世代の人間関係の築き方も違う。好きなものや楽しめることも(同じものもあるかもしれませんが)違うことがあるはずです。2人は不登校という広い括りでは似ていますが、違う状況にあると思います。2人がそれぞれ自分の人生を歩めるように、それぞれと話す時間を設けたり、「あなたのいいところはこういうところだね」「こういうことをしているときのあなたはとてもいい表情をしているよ」とそれぞれに伝えていったり。そうして、それぞれが自分のことを自分のこととして考えられるように支えることができたらよさそうだと感じます。きょうだいでお互いがお互いに重ねて理解したり、片方がこうだから自分も…と考えてしまったり、2人の中でそうしたときもあるにしても、そうでない時間や場面を大切にしていただけたらと思います。

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Q.小5息子の休んだ分の勉強のフォローはどうしたらいい?無理にやらせないほうがいい?


【質問】
小学5年生の息子(自閉スペクトラム症)が11月から行き渋りが始まり、午前中の途中から登校しています。勉強が分からない、授業がつまらないと言うので、休んだ分家で勉強のフォローをしようと思うのですが、あまりやりたがりません。今は無理に勉強させないほうがよいのでしょうか?

【回答】
午前中の途中から登校しているとのこと、本人にとって良きペースであれば何よりです。小学5年生の勉強は難しいですね。授業を毎回出ていても難しいと感じるお子さんが増え始めるのが小学4年生の後半以降だなと感じるので、小学5年生はなおのこと難しいと思います。授業が飛び飛びになると、より一層難しく感じられる(抜けた分を想像しながら聞かないといけない)のはありそうですね。ただ、その前からもしかしたらつまずきがあり、1日6時間分の授業を受けることがつらいから朝から学校行く元気が湧かない…というお子さんもいるようにも感じます。

「勉強が分からないなら、その分を家でフォローしたらいいのでは」とおっしゃるのは、ごもっともだと思います。分からない授業を聞くのは「つまらない」ので授業が分かるようにしよう。ただ、それがうまくいくのは、そこにコミットして解決してまで学校の授業に参加したいという強い気持ちがある場合だけだろうなと感じます。また、家で保護者と学習をする際には、保護者が一生懸命になるあまり、子どもと喧嘩になることが多いように感じます。小学校高学年以降の親子での学習は、保護者が熱くなりすぎないよう注意も必要です。

「無理に勉強させて」いいことはあまりありません。「勉強したくなったら一緒にやるよ、分からないところは教えるよ」くらいのスタンスでいいように思います。ここから先はお子さんの学習意欲にもよりますが、親子で喧嘩しながら勉強したいとは思わないけれど、少しは取り組んでみたいと思うなら、通信教材の活用や、今は動画で単元ごとに配信されているものもあります。そういうものを使って取り組んでみる。分からないところは保護者やあるいは担任の先生に聞くということができるといいでしょう。今まさに授業でやっている内容につまずきがある場合に、その前の内容からつまずいていたらそちらの復習が先になるでしょう。小数のかけ算でつまずいているなら、まず簡単なかけ算からやって、「そうだった」「できるできる」を取り戻しながら取り組めるといいでしょう。昔のドリルや問題集をやってみたり、ネットで無料の問題もシェアされています。学校から配布されているタブレットにもタブレットで回答できるドリルが入っている場合もあります。本人に合っていて、やってみたいと思うものをやってみてもいいかもしれません。あまり多くはないですが、勉強は保護者や学校の先生ではない、勉強を教えてくれる専門の人に教わりたいと思うお子さんもいます。塾や家庭教師の先生とだとできる場合もあるので、そうしたことも検討してみてもいいかもしれません。

さまざま書いてきましたが、大事なのは本人がどうしたいかです。こうしたいという気持ちがあれば、それに合わせてさまざま提案することはできると思います。ただ、何もしたくないというときはそれを尊重するのも1つです。午前中の途中から登校することの、本人にとっての良さはなんでしょうか。誰かと会える、給食が食べられる、休み時間遊べる、勉強ができる、放課後に遊ぶ約束ができる、家でゲームができる。いろいろあると思いますが、それと登校スタイルと、そして学習と。負荷がかかりすぎず、それなりにどれも得られるバランスを探っていただければと思います。そしてそのバランスはときどき変わってくると思います。一度決めたやり方にとらわれすぎず、本人の気持ちとコンディションに合わせて、適宜変更を加えながら進めていただければと思います。

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Q.長期化した不登校。親はどこまで関わっていいもの?


【質問】
不登校が長期になってきた場合の家での過ごし方(中学生)どこまで親が関わればいいのか知りたいです

【回答】
中学生で、しかも長期にわたると生活リズムを一定に保つことも難しいことが多くなります。多くの子どもたちが学校で過ごす時間帯、明るい時間帯にたとえ家であっても心穏やかに過ごすことが(自覚の有無は人それぞれですが)つらく感じられたり、家族が寝静まった夜中だと過ごしやすい気がしたり。日中動かないがゆえに自然と眠くなることも少なく、寝ようと思ってもあまりすぐに寝つけなくなっていたり。ネット上などに友達がいる場合は、そうした仲間たちがネットに集まるのが夜間であることも多く、生活時間帯が後ろ倒しになりやすいです。ネットやスマホは○時までとルールを定めたり、あるいは家庭全体夜間はWi-fiを切ったりなどさまざま工夫される保護者の方もいらっしゃいます。そうしたルールや枠組みでうまくいく場合はそれでいいと思いますが、そこで喧嘩したり、ぎすぎすしたりといったこともよくある話ではあります。どこで折り合いをつけるかはケースバイケースだと感じます(単にそうしたものを取り上げるだけだと、お子さんにとって心のよりどころも失うことになる可能性もあるので、ゼロか100かというよりも、折り合いのつけ方なのだと感じます)。

ただ、家族として同じ家で生活をしているので、お子さんの過ごし方が目に余ると保護者としてイライラしてくるのも自然なことだと思います。そういう意味でも、お子さんと家での過ごし方や学習の仕方、あるいは家庭以外での過ごし方(学校に部分登校できるか、適応指導教室やフリースクールに通えるか、相談機関に通えるか)を話し合い、大方の過ごし方について決めて、そこが維持されていればそれ以上は口は出さないという線を決めたいところです。

実際のところでいえば、「高校に(は)行きたい」と考えているお子さんが多く、中学3年生の春夏ごろから高校の見学や説明会に出向くなど動き始めるお子さんは結構います。逆に言うと、そこまでは動きが見られない場合も多いです。動き出す時期のために、進路情報を保護者が集めておく(集めた情報を本人に知らせるかどうかは慎重にと思います。機が熟すのを待つほうがいい気がします)ことなどをしておきましょう。

中学3年の秋以降は志望校に合わせた準備に取り組むこともよく見られます。どのような高校の種類があり、お子さんにはどんな学校が合っていそうかということは、担任の先生や進路の先生、地域のそうした情報に詳しい適応指導教室や教育支援センター、教育相談室などで聞いてみるのもいいと思います。情報は集めつつも、あくまでも本人が通いたいという意志を見せた学校に進学すること、そのために何校か見学すること。保護者はその手伝いをするということ。それを本人にも折々に伝えていただければと思います。

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発達障害のある子どもの不登校。特性はおおまかな指針であり、大切なのは子どもの状態に合わせた対応


発達障害がある子どもが不登校になったとき、その子どもの特性に焦点をあてて解決の糸口を探ることは多くあると思います。しかし、発達障害はその子どもの一部にしかすぎず、特性だけに焦点をあてても状況がよくならないことも多くあります。特性のふまえ方を大まかな指針として、それぞれのお子さんの特性、性格、環境、こころの状態などを見ながら対応しましょう。そして何より、子どもも保護者も学校の先生も途中で疲れ切ってしまわないように持続可能なペースでサポートしていくことが大切です。

コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如・多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

SLD(限局性学習症)
LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。

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