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「なかなか手強いです」自閉症息子が書けない、覚えられない「文字」。特別支援学級の先生の対応は【小児科医アドバイスも】

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自閉スペクトラム症のある太郎と文字


太郎は保育園時代、文字に興味を示さなかった。鉛筆を握ることも少なく、周りの園児が文字を書いていても太郎だけは書かずにウロウロしていた。

保育園時代は文字を書けなくてもなんの問題もなかった。しかし小学生になると話は違ってきた。文字を覚える、書く、読む、ということが学習をするうえで大前提となった。

小学1年生のとき。当時の自閉症・情緒障害特別支援学級の先生からはこう伝えられた。

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「太郎ちゃんはですねえ…なっかなか手強いですよ、お母さん」

この言葉を言われても全然嫌味を感じなかった。
私は「やっぱりそうですよねえ…」と答えた。

一つの問題なら解決しやすいがそうではなかった。
文字の理解、認識
文字を書くという動作
書きたいけど書けない葛藤、羞恥心、プライドなどの感情

今振り返っても、文字を学習するうえでの問題は複合的だったし、実際にはもっと多くあったかもしれないと思っている。

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文字をなかなか書けない、覚えられない、ということを問題にしなくてもいいのではとも思ったが、太郎の意思は「覚えたい」の方向へ向かっていることが見ていて分かった。

固まりながら、机の下に隠れながらも決して文字から逃げることはなかった。切り替えに時間はかかるが、自ら再び文字と向き合い、書くことや覚えることをあきらめなかった。家でも、「学校は楽しい」と言っていたし、行き渋りもなかった。

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太郎は文字を見る視点がとても細かいことが分かった。


同じ「は」や「な」でも、明朝体やゴシック体など書体が異なると違うものに見えているようだった。

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書くことと同時に、カードを使ったクイズ方式で文字を覚えていった。

先生は授業中、抜き打ちでクイズを太郎に出していた。3回正解をした文字はクリアというシステムだった。先生からは、「自宅でも、できるときに、本人のストレスにならない程度にやってみてはどうか」と伝えられていた。

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太郎も楽しかったのだろうか、文字をどんどん覚えていった。明朝体、ゴシック体などの書体の違いも、文字慣れしたのかスルーできるようになった。

文字を覚えていくと、自然と書く方も進んでいった。
ゆっくりではあるが一生懸命丁寧に一つひとつ書いていく。いまだにゆっくりと文字を書く太郎は周りから「読みやすい字だね」と言ってもらえることが多い。

その後はひらがなからカタカナ、そして漢字と覚え、書くことができるようになっていった。字を覚えたあと、小学1年生の間は、私に手紙を書くことがブームになるほど文字を楽しんでいた。

先生の雰囲気づくりに感銘を受けました。どうすれば太郎がストレスを感じずに、文字を覚えられるかを考え、時間をかけて寄り添ってくれた先生。本当に感謝しかありません。「手強いです」の一言からは、本気で寄り添ってくださってる優しさが伝わってきました。
だから嫌味も感じなかったのだと思いました。

私は社会人ですが、職場の雰囲気は働くうえで重要だと思っています。個人個人のモチベーションにも関係し、個人のモチベーションが保てると良い動きになり、結果的に良い職場になり会社としての利益につながると思っています。それくらい雰囲気づくりは重要なものだと認識してるので、当時の「クイズ方式」など楽しさを含めた指導や声かけ一つのニュアンスや口調、すべてから優しい空間がつくられていて、感銘を受けました。

「なんでできないの?」と押さえつけることもなく、「どこが分からないのかな?」といつでも太郎に寄り添ってくださる姿勢に私も太郎も安心と信頼を感じることができました。先生とは、ここから3年間学校生活を共にすることになりました。

執筆/まゆん

(監修:鈴木先生より)
このようなお子さんにはユニバーサルデザインの文字をおすすめしています。文字間や行間が適度でいいのです。
また、縦書きよりは横書きのほうが読みやすい傾向があります。国語の教科書はほぼ縦書きですが、すべて横書きに書き換えた親御さんもいます。

読めないと書けないので、まずは読む練習からでいいと思います。また、文字を図として扱っているため漢字などの書き順が曖昧なお子さんも多く見かけます。極端な場合、漢字を下から書く子もいます。できるだけ早くから正確な書き順を習慣として覚えさせることも重要かと思います。

コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。


神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。


ADHD(注意欠如・多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

SLD(限局性学習症)
LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。

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