自閉症息子の就学先は通級指導教室、特別支援学級どちらがいい?友達関係、勉強内容…就学してみてぶつかった壁も【読者エピソード】
自閉症息子の就学相談。通級指導教室、特別支援学級どっちがいい?
わが家の小3の息子は5歳で自閉スペクトラム症(ASD)、小2でADHD(注意欠如・多動症)の診断を受けました。今は通常学級に在籍しながら通級指導教室に通っています。
息子は小さなころから基本的にはおとなしい性格でしたが、こだわりが強く、一旦こだわりが出てしまうと癇癪に繋がってしまうタイプです。幼稚園に通っていたころは、友達からからかわれることもありましたが、当時はからかわれていること自体に気づいてなかったのか、本人的には楽しく通っていました。
そして年長になり就学相談の時期に…。すでに自閉スペクトラム症の診断を受け、療育には通っていたので私は息子の就学先を「通常学級在籍で通級指導教室に通う」と「特別支援学級在籍」で悩んでいました。
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特別支援学級のほうが手厚い支援を受けられる?通常学級在籍は周りの友達に影響されて成長できるかも…。私の中でどちらにしたら良いのか希望はなかなか決まらないまま、就学相談で息子は発達検査、行動観察、グループ観察などを受け、11月になり教育委員会からの結果は…。
通級指導教室と判定されて。母の気持ちは…
教育委員会からの結果は「通級指導教室判定」でした。息子の場合は「知的障害特別支援学級は、IQが入級基準以上のため対象外」「集団観察のときにおとなしく、問題がないと思われた」ようですが「自閉スペクトラム症の診断はあり、療育に通っている」という部分で、通級判定につながったようです。
その判定を聞いて、母である私はホッとしました。私だけでは、息子にはどんな支援が必要なのかが判断しきれず、悩むばかりで息子の進学先を決められなかったからです。子どもの発達に詳しい職員や、専門家の方々がそう判断してくれる進路ならと、心強いものがありました。夫や親戚たちにも伝えたところみんな口を揃えて「良かった!」と言っており、「4月から通級指導教室で頑張っていこう」という気持ちで息子の就学問題は一旦解決をしました。
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入学後、うれしい配慮を感じながらも問題も出てきて…
そして入学後、通常学級在籍ですが担任の先生が配慮をしてくださり、息子の席は一番前、周りには息子がよそ見をしていたら声をかけてくれそうなしっかりしている子どもたちを配置してくれました。
しかし、新たな悩みも…。
通級指導教室へは毎週2コマ授業を途中で抜けていくのでクラスメイトから「なんでいなくなるの?」「どこに行っているの?」と聞かれることがしばしばありました。しかしまだ小1ということもあり息子自身もなぜ行くのかよく分かっていないので「なんでだろうね~」とうまく答えられなかったようです。
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その様子を見ていた先生がある日私に「こんなことが多くなってきたので、ちゃんとクラスのみんなに伝えたほうが良いかもしれません」と相談をしてくれました。
みんなに説明して変な風に思われないかな?と正直怖い気持ちもありました。ですが、息子のことを理解もしてほしい…悩みましたが先生とも話し合い、朝の会のときにクラスのみんなに伝えよう、という話になりました。
クラスメイトに通級指導教室へ通っている理由を説明。みんなの反応は?
そして朝の会の当日…息子は自分で通級指導教室に通っている理由を言いました…が、まだ幼いということもあり、なぜ自分が通っているのかよく分かっていない息子。私と先生が渡したメモをそのまま読んでいましたが、本人の口から言うことが重要だと思ったので、そこは良かったと思います。
そのあと先生が「みんなはガヤガヤしてるところで疲れちゃうことはない?」「〇〇くん(息子)はみんなよりそういう部分を感じやすいから少し離れて違う場所で勉強をしているんだよ。」とフォローしてくださったことで、クラスメイトたちも理解をしてくれたようです。
その後は通級指導教室に行くときも「なんで?」と聞く子どももいなくなり、「いってらっしゃい!」と明るく送ってくれるようになりました。小3になった今は通級仲間もできて「自分だけじゃない」と安心して学校生活を楽しんでいるようです。
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しかし、また別の問題も出てきて…
友達関係はうまくいっていますが、小3になるとどんどん勉強も難しくなり、通級で支援を受けていてもついていけなくなることが増えてきました。
宿題の量も増え、終わらず癇癪を起こしてしまい、私も息子もイライラ…これでは良くないと特別支援学級への在籍移動を担任に相談しましたが、「特別支援学級は今これ以上人数を増やせない」「空きができても、息子さん以上に支援の必要な子どもが優先になってしまう」と断られてしまいました。
もちろんその部分の優先順位は理解しています。ですが、それが息子が特別支援学級に入れない理由になってしまうのはまた違う問題になってきます。小学生のうちに、改めて在籍級について悩むことになるとは…通級指導教室に通えば一安心という訳ではありませんでした。
今も担任や校長先生たちを交えてどのような形が一番息子に良いのかを話し合っています。
これからもたくさん悩むこともあるだろうけど、先生方や息子の意見も聞きながら息子に合った環境を模索していければと思っています。
イラスト/keiko
エピソード提供/かけうどん
(監修:鈴木先生より)
「指導」と言う言葉はどうしても上から目線になってしまいがちなのでやはり「支援」という言葉にした方が私はいいと常々思っております。どちらにしても支援が必要なお子さんなので、ご本人や親御さんの意見を伺いつつ学期ごとにあるいは日ごとに変えられるような柔軟性が必要だと思います。
今の制度では年度初めに決めたら1年間はそのままで行くことが多いようです。通級か在籍かを議論する特別支援教育委員会では有識者も含めて個人個人について話し合いますが、あくまでも紙の上での話だけであり、みんなが実際に本人の姿を見ているわけではありません。主治医の意見書などはなく、IQテスト中心に話が進んでいることが多く、実際に通ってみないと分からないのが現状です。
どちらにするかは親御さんが決めることで、教育委員会の指示に従う義務はないのです。事務的な手続き優先ではなく、子どもファーストの考えを持って対応できる学校環境が望ましいのです。
また、通級などで途中退席する子どももいることを事前に担任がみんなに分かりやすく説明して周知しておく必要があります。そうすれば「なんでいなくなるの?」ではなく、「頑張ってね」という言葉が必然的に同級生から出るはずです。隠さずにみんなで支援していく空気が必要なのではないでしょうか。毎年同じようなお子さんはいるので教員は先のことを見据えて早めにみんなと共有すべきだったのです。
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
ADHD(注意欠如・多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
SLD(限局性学習症)
LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。