小1自閉症息子の教室脱走劇。入学前は座ってられると太鼓判を押されたのに、ついには校門の外まで⁉担任の先生への感謝の気持ちと今後への思い
脱走なんてしないと思っていた
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息子のまちゃには自閉スペクトラム症と知的障害があります。就学前には特別支援学校にするか特別支援学級にするかで迷いました。
年長の1学期のころ、当時通っていた療育園の担任で就学担当でもあったベテランの先生から「まちゃくんは45分間座って授業を受けられそうですから特別支援学級に入学することも考えて下さい」と言われました。確かにまちゃは、私がいつ見学しても落ち着いていました。
特別支援学級の見学のとき、特別支援学級の先生に「こちらに入るのに“これはできていてほしい“と言うことはありますか?」と質問したら「座って授業を受ける意欲があるお子さんはできるだけサポートします」と言われました。
私は(生徒がどこかに行ってしまい追いかけながら授業をするのは難しそうだから、それは当然だな)と納得した記憶があります。
入学後に始まった脱走
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ところが、療育園のときにはあんなに落ち着いていたまちゃは特別支援学級に入学すると授業中や少しの空いた時間に脱走するようになりました。行き先はだいたい決まっていて、体育館に行ってグルグル走ってくるか、数階上の誰もいない特別教室に行くか、校庭を突っ切った先にある体育倉庫の壁をタッチして帰ってくるか…いずれにしても脱走しても戻ってくるそうです。
ただ走るのが早くて補助の方ではなかなか追いつけないとのことでした。
授業参観に行ったとき、課題が終わったまちゃがサッと席を離れて私の横を通り過ぎて教室の後ろのほうに行ったので(ロッカーに何か取りに行くのかな)と思ったら、サーッとそのまま教室を出て行ったのでとても驚きました。この一件から私もまちゃの脱走について改めてあれこれ考えるようになりました。
まちゃは機嫌良く脱走して機嫌良く戻ってきていて、脱走を止められたときにも少し悔しそうにしているものの笑っているようでした。もしかすると、これまで療育園など施錠してある施設に通っていたまちゃにとって、思いついたときにフラッと抜け出せることが、息抜きになっているのかなと思いました。
増える脱走
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1年生の終わりから、まちゃは学校に慣れたのか、家ではタオルを畳んでくれたり、お父さんの飲んだ缶酎ハイの缶を潰してくれたり、できることも増えましたが、脱走も増えました。
そして、2年生になって新しい担任の先生になり、教室の人数も4人から8人になるとさらに脱走は増えて、ついに朝、開いていた校門から学校の外に出てしまいました。ちょうど近くにいた先生が捕まえてくださったそうなのですが、その報告を受けたとき、私はさすがにとても心配して焦りました。
担任の先生が「教室のドアを施錠してみてはどうだろう」と相談してくださり、私は「やってみてほしい」と答えました。
2つある廊下への教室のドアのうち、まちゃに近いほうが施錠されると、まちゃは窓から出ました。そのあと、まちゃの近くの窓際に電子オルガンが置かれ、すぐには出られないようになりました。窓には「窓から出てはダメ」と言う意味の絵カードが貼られました。効果があったそうで、先生は「席に座ります」や「トランポリンをとびます」「トイレに行きます」などの絵カードもつくってくださいました。
SNSで作業療法士にも相談をして、まちゃのストレスが溜まらないように、まちゃのすぐ近くに絵を描いたりパズルをしたり、リラックスできる場所があるとよいというアドバイスを受けたので、先生に伝えるとさっそく教室に取り入れてくださいました。
放課後等デイサービスの先生にも相談すると「まちゃくんは自分がみられていると感じている間は脱走しません。気を抜いた瞬間が危ないのです。
頭のうしろにも目が必要です」と、まちゃを脱走させないコツを教えていただきました。これもさっそく担任の先生にお伝えしました。
減ってきた脱走
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現在、小学2年生が始まって2ヶ月目ですが、まちゃの脱走は減ってきています。
今の所、家でも放課後等デイサービスでも癇癪も行き渋りもありません。
常に対応してくださる担任の先生にはとても感謝していますし、まちゃもよく頑張っていると思います。でも本当に特別支援学級がまちゃに合っているのかということは、考えていかないといけないと思いますし、今後もまちゃの様子を注意深く見て行こうと思っています。執筆/カタバミ
(監修:新美先生より)
教室から脱走してしまうまちゃくん、先生方も安全確保のために気を遣って大変だと思いますが、なによりも、脱走したくなるほど大変な思いをして教室で過ごしているまちゃくんのことも心配です。
新しい環境で、慣れず、その場で今何をすべきなのかがわからないと、普段よりもそわそわして落ち着かなくなり脱走リスクは高まります。
入学当初、慣れなくて脱走というのは、ある程度はやむを得なかったかもしれません。1年ちょっと経って、脱走は減ってきているとはいえまだあるようです。
学校で問題行動がある場合、以下のことを見直していくとよいかもしれません。
1. 学習・活動内容について、本人が理解できる形式(視覚支援など)で説明されているか(スケジュール・手順書など)
2. 学習・活動内容は本人に合った内容か
3. その学習・活動をしたくない場合、「拒否する」ということが随時表出できて(例えば「やりたくない」という絵カードをいつでもつかえるようにしておくなど)、受け入れてもらえ、代わりの行動の選択肢を提示してもらえる環境になっているか
4. 「ちょっと休憩する」「気分転換する」などが表出できて、それを受け入れてもらい、休んだり気分転換できる環境が用意されているか
こういったあたりについて、学校の先生に見直してもらったり、療育の専門の先生などにもご意見もらったりするとよいかもしれません。本人が脱走しなくても、安心して充実して過ごせる学校環境にしていけるとよいですね。
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
ADHD(注意欠如・多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。
ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
SLD(限局性学習症)
LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
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