自閉症息子は特別支援学級、通級指導教室どっちがいい?「動くなら早い方がいい!」年中から小学校を月1訪問。わが家の選択と中学を見据えた今【読者体験談】
「動くなら早い方がいい」と言われ、年中の2月に小学校へ初連絡
現在11歳の息子は、3歳児健診で指摘されたことをきっかけに、保健センターで何度か新版K式発達検査を受けていました。その際に療育についても説明を受けていましたが、まだ早いのではと思っていた私。
しかし、保育園の年中に上がるときに、「このまま年中クラスに上がるか、それとも、もう1年年少クラスで過ごすか、ご家族で考えていただけませんか?」と聞かれ、愕然。保育園の先生に助言されるくらい、息子の発達は遅れているのだと気づき、療育を受けようと決心しました。
療育では、息子の発達支援だけでなく、保育園卒園後の進路についての情報も先生方から得ることができました。「動くなら早い方がいい」と言われた私は、すぐに行動に移しました。特別支援学級、通級指導教室の説明会、以前同じ療育園を利用されていた先輩ママさんの講演会などに積極的に参加。そして年長に上がる前の2月、初めて学区の小学校へ連絡、行事などが落ち着く6月くらいから校長先生との面談を開始しました。
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小学校入学まで、月1ペースで小学校の行事へ。特別支援学級の授業にも参加
校長先生との面談では、主に家庭や保育園、療育での息子の様子をお話ししました。
・発達が気になり始めた時期
・言葉が遅い息子は通常学級での授業形態にはついていけないのではないかという不安
・特別支援学級に入りたいこと
など、進路の希望から、不安に感じていることまであふれるように話し続けてしまいましたが、校長先生はじっくりお話を聞いてくださいました。幸い特別支援に力を入れている小学校だったこともあり、参観日の見学や行事の参加など積極的に声をかけていただき、入学までほぼ月イチのペースで息子を連れて小学校へ行くことになりました。息子も小学校に慣れることができ、とてもありがたかったです。
授業参観では、特別支援学級の見学をさせてもらったのですが、せっかくだからと息子も授業に参加!「韓国のおもちゃをつくって遊ぼう」という内容だったので、当時年長児だった息子も問題なくできました。教室で作業をする息子の姿を見て、おぼろげながら小学生になって学校で勉強する息子のイメージが浮かび、こみあげてくるものがありました。息子自身も、「小学生になったらこんな風に学校で過ごすのかな」と感じられたのではと思います。本当によい経験でした。
おもちゃができ上がると、ほかの生徒たちと広い体育館へ移動。息子はとても楽しそうに走りまわっていました。
その後、通常学級も見学をさせていただこうと思った私。当時の1年生に保育園で仲良くしてくれていたお子さんが何人かいたので、「その子たちが勉強している様子を見に行こうか」と息子に声をかけました。
授業中ということもあってか、通常学級の教室は、にぎやかに工作に取り組んでいた特別支援学級とは大きく違いました。通常学級の教室に近づくにつれ、シーンと静まりかえった廊下を歩く息子は、ただならぬ様子を感じ、ぐずぐずと泣き始めてしまいました。
たまたま各教室を見回っておられた校長先生に声をかけていただいて、すぐに特別支援学級の教室へと移動させていただきました。私は「あぁ、やっぱり息子は特別支援学級に行くほうがいいんだ…」と改めて感じた出来事となりました。
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また、そのほかの行事に参加させてもらったときにも、授業を体験させてもらった際の特別支援学級の先生が息子のことを覚えていてくれて、いろいろと気にかけていただきました。息子も何となく先生のことを覚えていたようで、うれしそうにしていたのも心強く感じました。
わが家以外にも就学前のお子さんが学校行事に参加されていることはあったのですが、ほとんどが在学中の生徒のきょうだいでした。見学目的で参加していたのはうちだけだったと思いますが、いい経験をさせてもらえたので、早めにお願いして本当によかったと思っています。
特別支援学級に入学し、成長していく息子。交流級では友達もでき、一緒に下校も
息子は、予定通り特別支援学級へ入学しました。クラスは1年生の男子が2人、2年生の男子が1人と、近い年齢の子たちばかりで、かつ少人数だったのもあり、息子にとってとても過ごしやすい環境に恵まれました。
担任の先生は、未就学児のときに息子を覚えてくださった先生とは違い、他校から異動で来られた先生だったのですが、前任校でも特別支援学級を担任されていたこともあり、とても慣れた様子。安心してお任せできました。
ただ息子は、2年生の男の子に対してライバル心を抱くようになった時期がありました。その子のことを変なあだ名をつけて呼んだりしていたようで、その都度先生からお電話をいただきいろいろと話をさせていただいたものです。その対抗心もいつごろからか落ち着いてきたようで、今は仲良くしています。
特別支援学級ということで、どうしても通常学級の子どもたちと関わることも少ないのですが、通っている学校では、特別支援学級の様子を通常学級の子どもたちにも知ってもらうという取り組みをしており、授業風景を撮った動画を、通常学級の子どもに見てもらう取り組みなどもあります。そのおかげもあるのか、通常学級の子どもたちからも、それなりに受け入れられている様子です。
息子は、3年生からは理科、4年生から理科と体育などを交流級で受けるようになりました。みんなと協力しながら、実験などにも楽しく取り組んでいるようです。廊下で交流級の友達から声をかけてもらったりすることもあり、先日は一緒に下校したと教えてくれました。
印象的だったのは、「総合」の交流級で点字について学ぶ際、よく気にかけてくれる友達が「一緒に点字でしりとりしよう」と声をかけてくれたんだと、うれしそうに教えてくれたことです。体育も、リレーやサッカーなどチームプレイが要求されるものも出てきましたが、教えてもらいながらがんばっているようです。
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見えてきた中学進学。候補をいくつか考え中です
息子も11歳になり、今は中学進学をどうすればいいか頭を抱えています。
第一候補は学区内の中学の特別支援学級なのですが、現在特別支援学級の様子も不明なので、通常学級+通級指導教室でもいけるのかどうか…と悩んでいるところです。
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母一人、子一人の家庭なので、今後は親なきあとのことも考えなければならなりません。
息子には、しっかりと独り立ちをし、困ったときには周りの人に頼りながら生きていけるような人になってほしいと思っています。優しくユーモアもあり、何とも憎めない愛嬌のある子だと思うので、そこは失わず、楽しい人生を歩んでほしいと願うばかりです。イラスト/吉田いらこ
エピソード参考/あきっち
(監修:新美先生)
小学校に上がる前の、就学時の環境選びについて詳しくお聞かせいただきありがとうございました。
発達の凸凹があったり、集団生活でストレスでかかりやすいお子さんの場合、年中後半ごろに就学に向けて動き始めるのはよいですね。ともすると、「だいぶ成長したから、あと1年経てばもっと成長して、もっとみんなと一緒にやれるようになるのではないか?」と先延ばしにしたくなることもあるかもしれませんが、保育園・幼稚園から小学校に入学するというのは、とてつもない大きな環境変化になります。
幼稚園・保育園の集団生活で一定の期間大変だと感じたことがあったお子さんは、次の大きな環境変化で苦労する可能性はあるので、就学までの準備と引継ぎは通常よりも丁寧にやっていくほうが安心です。早い段階で見学や体験をすることで、小学校という環境でどのようなサポートが必要か必要じゃないか、じっくり見極められるのはとても良いと思います。
ただ、時期については地域や学校によって、早すぎると見学や体験を受け入れていないところもあると思いますので、園や学校、教育委員会などに問い合わせて手順を踏んでいきましょう。
ここ数年のうちに特別支援教育に関することは日進月歩に変化していて、そもそも親世代が小学生のころのイメージとは様変わりしています。実際見学に行ってみると、親のほうも具体的にイメージできるようになるかと思います。お子さんによって慣れない環境で不安になりやすい場合、見学や体験自体で不安を増長させて学校にネガティブなイメージを持ってしまうこともあります。
慣れない場所が苦手なお子さんの場合は、見学や体験の内容自体をよく打ち合わせして、ご本人にしっかり見通しを示して参加されるとよいでしょう。見学や体験は可能な範囲で複数回行けると、いろんな場面が見られますね。
とはいえ、お伺いしたエピソードでは、月1回という高頻度でさまざまな機会に学校に呼んでいただいたいて就学につなげてくれたようですが、近年は特別支援の希望者も増えて、思うようには進まないことも、実際にはあるかもしれません。実際の見学や体験については地域の学校の実情に合わせて相談してみることをおすすめします。
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
ADHD(注意欠如・多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
SLD(限局性学習症)
LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
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