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自閉症息子「授業中の姿勢が悪い」と学校から指摘!サポートグッズも効果なし?椅子に座る姿勢維持、どうすれば…【作業療法士に聞く】

LITALICO発達ナビ

姿勢維持のサポートグッズを試すもうまくいかず…


ゆきみ(以下、ーー):小学2年生、自閉スペクトラム症のある長男けんとは、姿勢維持が苦手。食事のときは、まっすぐな姿勢で食べていられることが多いのですが、それ以外のときは椅子に座ると姿勢が悪くなってしまいます。

特別支援学級での授業を見学させていただくと、机に伏せてしまったり、座面に膝をのせてエビぞりのような姿勢をとったり、あぐらをかいたり…と、まっすぐに座れている時間がとても少なかったのです。通っている学校の交流級での授業は、姿勢維持を大事にされているようで、サポートをしてくださる先生が、2~3分間に1回くらいの頻度で姿勢を正していました。

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学校から「姿勢の維持が難しいです」と何度も指摘があり、インターネットや本で調べて、いくつかのサポートグッズや対策方法を試してみました。

骨盤サポートクッションを購入したり、椅子の足に「踏む感覚」を得られるゴムひものようなものを張ってみたり、小さなツブツブのついたバランスクッションを敷いてみたりしました。今もそれらを愛用していますが、それでも姿勢を維持するのが難しい現状です。さらに何かやれることはあると思いますか?何をどうしたらいいのか、もう分かりません。


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100%ではなくても…まずは環境調整をしてみましょう


野田先生:すでにいろいろ試されたようなので、一周まわっている前提でお答えさせていただきます。姿勢が崩れやすい理由や背景はさまざまです。

例えば、
・人間には筋肉の緊張をとらえるセンサーがあり、ある程度、適切な筋肉の張りを自動的に保てるようになっているのですが、張りを保つのに努力が必要で、疲れやすい人がいる。
・感覚的に姿勢が崩れていることに気づきにくい人がいる。
・椅子と机の高さがあっていないなど、適切な大きさや形の道具を使えていない場合がある。
・学習レベルが合っていない場合がある。難しくて分からない、つまらない、だと姿勢を保ちにくい。
・多動性や衝動性が高く、じっとしているのが難しかったり、ちょっとした刺激で動いてしまったりする。
など。

姿勢が崩れることにはお子さまなりの理由があることを理解し、対応方法を考えることが大切です。

アプローチの方法としては…
・椅子や机の高さが身体に合っているか、確認する。
・環境調整という意味でいうと、椅子に滑り止めシートを敷くと、頑張らなくても腰が椅子の前の方に滑りにくくなり、姿勢維持が楽になることがある。(クッションを使用する場合、クッションが滑るようならクッションの下に敷き、身体が滑るようならクッションの上に敷く)
・感覚を求める傾向がある場合、足元に人工芝などの感覚刺激を入れられるものを置いてみると、感覚が入り落ち着く子どももいる。
・合理的に立ってもいい時間をつくる。

例えば授業中、答案用紙を教室の後ろや廊下に貼り、答え合わせをしに席を立つ時間をあえてつくることで、立つことへの感覚を満たすことができるのです。
ほかにも、机上の勉強の前にトランポリンなどで5分ほど身体を動かすと、椅子に座れる時間が長くなるお子さんもいらっしゃいます。


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環境調整によって、無理のない形で座れる状況をつくり、適応的な形で身体を動かせる機会や環境をつくることが大切です。100%ではなくても、うまく場面を選んで姿勢を変えられればいいですね。

すぐにできるように、というより…


ーー:低緊張などで姿勢を維持するのが苦手な方は、今後もずっとこのままなのですか?

野田先生:もともと筋肉の張りが緩めという可能性もありますが、「思春期に入り身体が大きくなって筋肉がついた」、「スポーツを始めた」など、身体の発達、経験でも変わってきますので必ずしも現状から変わらないわけではありません。

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ーー:身体を動かすことが大切なんですね?

野田先生:手押し相撲、つなひき、手押し車、座りながらキャッチボール、マットを登るなどの遊びの中で体幹を使う場面を増やしてあげると、支えがしっかりしてくる可能性もあります。ただし、姿勢を保つための身体の変化には時間がかかります。
「すぐにできるように」というよりも、特性を理解したうえで、「将来的には身体の成長やスポーツの経験などで少しずつ身体が変化することで、もしかしたら今よりも楽に姿勢維持ができるようになるかもしれない」と頭に入れながら、今は環境調整や遊びなどできるところから取り組まれたらいいと思います。ーー:ごはんのときだけ姿勢が崩れにくいのは理由があるのでしょうか?

野田先生:活動の種類に応じたモチベーションの違いが関連しているのかもしれませんね。
また、人は自然とその人にとっての合理的な動作や姿勢をとることが多いです。
けんとさんの場合、ごはんを食べるときの道具の使い方や口にもってくる動作が、姿勢を保つことにフィットしているのかもしれませんね。

対談を終えて


対談後、家では滑り止めシートを試してみました。様子を見ていると骨盤サポートクッションからお尻がずり落ちている印象だったので、上側に敷くことに。以前よりズリズリ前にいかなくなり、姿勢をまっすぐできる時間が長くなった気がします。ほかにも身体を動かしてから勉強をしてみたり、途中で身体を動かす時間をつくるようにしています。

最近、自ら椅子の前にバランスボールを持ってきて、足をのせてビョンビョンさせているときがあります。もしかしたら好みの感覚なのかもしれません。

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けんとは人の話を聞くことが苦手です。
学校の授業では「聞く」ことが多く、モチベーションを保つことが難しいのかなと思います。最近はテストのときや、書写で字をキレイに書く場面では、自ら姿勢をキレイにしてやり始めることがあるそうなので、持久力はないけれど「やらないといけないときはやる」と思うようになってきたのかもしれません。

身体の使い方を遊びの中で身につけていくことで、天気がいい日はアスレチックのある公園へ行くようにしています。先生からの教えを胸に、「すぐできるように」というより、「いつかできるように…」という気持ちでやっていこうと思います。

執筆/ゆきみ

コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如・多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。

ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

SLD(限局性学習症)
LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。

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