発達障害の徴候?ハイハイしない、発語が遅い、手づかみ食べしない…検索魔になった日々。1歳半健診を待てずに発達相談に駆け込んで
産院ではスヤスヤとよく寝ていた息子、退院したら豹変!?想像以上に大変だった新生児期。
予定日より5日ほど早く産まれてきた息子。入院中、病室では全く泣くことなく良く眠る赤ちゃんでした。寝息も聞こえないくらい静かだったので、息をしてるか何度も確認していたのをよく覚えています。そして完全母子別室の産院だったので、授乳時以外は助産師さんがほとんどお世話してくれて、夜もぐっすり眠ることができました。ベッドに寝ているだけで、高級レストランのような食事が運ばれ、赤ちゃんはスヤスヤとよく眠り、母親としてやることは授乳だけ…。まるで天国のような入院生活でした(笑)。
そんな入院中、唯一の不安は授乳でした。今思えば息子の吸啜(きゅうてつ)力も少し弱かったのと、私も初めての育児だったこともあり、30分以上かけて授乳しても体重を計り比べてみると1グラムも増えていないことがほとんどでした。
しかしここでも、母乳が足りない分はミルクを足してくれる産院だったので、入院中に息子のお世話に大変さを感じることはあまりありませんでした(フラグ)。
Upload By 海乃けだま
いざ退院してくると、息子は入院中とは別人のように豹変しました(早すぎるフラグ回収)。
産院では授乳の終わりと共に、抱っこだけでスヤスヤと寝ていたのに(むしろ授乳中に寝ていた。笑)、退院した途端に抱っこで歩きながらでないと寝なくなりました。しかも背中スイッチも装備され、産後ボロボロの身体でなんとか抱っこして寝かしつけても、布団に下ろすと目を開ける…(恐怖)。あの手この手でやっと布団に寝かせても、膝がパキッとなるだけで簡単に目を開ける敏感過ぎる息子。この終わりのないループを幾度となく繰り返し…気づくと次の授乳時間が迫っていました(白目)。
Upload By 海乃けだま
息子が寝ない間、気晴らしに見ていたのがスマホでした。
当時の私の脳内は息子のお世話で育児一色だったので、自然と育児関連の記事を見るようになりました。少しでも気になることがあれば、スマホですぐに検索するようになっていました。そしてその習慣がいつしか産後のホルモンバランスと睡眠不足も相まって、思考をだんだんとネガティブにしていき…スマホの息抜き時間はいつの間にか“検索魔”となっていったのでした。真夜中の薄暗い部屋で調べれば調べるほどだんだんと怖くなり、さらに眠れなくなる…という悪循環でした(検索魔、本当良くないですよね。汗)。
運動面の発達がゆっくりなのは少し気になっていたけれど、特性に気づかずに見逃していた日々…。
1ヶ月健診を終え、保健センターの親子イベントにも参加するようになりました。そこで出会った息子と同学年の親子と仲良くなり、よく遊ぶようになりました。とはいいつつも、まだまだ家の中での生活が長かったので、あいかわらず膝が「パキッ」となるだけで起きる敏感な息子を起こさないよう忍びのような生活を続けていました。
3~4ヶ月になるころにはだんだんと起きている時間も増えてきて、“検索魔”になる時間もとれなくなっていました。母子手帳の3~4ヶ月ごろの記録ページに「あやすと良く笑いますか?」という項目があるのに、息子が“あまり笑わない赤ちゃん”ということが少し気になってはいましたが、全く笑わないということはなかったため「こんなもんかな…」とスルーしていました(いや今検索してー)。
そしてこれは下の子が産まれてから気づいたのですが、息子は赤ちゃんのころから物音に敏感なところがある反面、音のする方を気にして見ようとしたり、追視することがほとんどありませんでした。
ママ友とは定期的に会っていて、子どもたちの成長・そのときの困りごとなど話し合っていました。離乳食が進まないことや、スプーンの持たせ方など話していましたが、息子はスプーン以前に手がベタベタするのを極度に嫌がり、手づかみ食べすらしていませんでした。このころから少しずつママ友との悩みがズレ始めていたように思います。
8~9ヶ月あたりを過ぎたころ、少しずつ周りの子どもたちよりも息子の運動面の発達が遅れていることが目立つようになってきました。ハイハイやつかまり立ちする子どもが出てくる中、息子はお座りの一点張りでした。
正確には、お座りの姿勢から動けない…の表現が正しいかもしれません。息子はそれまで寝返りをすることが一度もなく、自分でお座りの姿勢までもっていくことができなかったのです。私がお座りの状態にさせて、後ろに倒れてしまったときは起き上がれないので(寝返りをしないので)、泣いて私を呼ぶという状態でした。運動面の遅れを感じながらも、個人差だろうと安易に考え息子のペースでハイハイしてくれるのを待っていました。
Upload By 海乃けだま
集団健診で声をかけられるものの、様子見にしてしまった私…
ちょうど息子が1歳になろうとするころは、バタバタしていてママ友と遊ぶ機会も減っていました。そんなとき、集団健診の時期がやってきました。相変わらずハイハイはできないものの、このころには息子も寝返りを習得していたため、お座りの姿勢まで自分で持っていくことができるようになっていました。
健診の時間がちょうどお昼寝時間とかぶっていたこともあり、健診にきていたほかの子どもたちも泣いていたり、歩き回っていたりと、割といろんなお母さんたちが大変そうにしていました。
そんな中、まだ歩けない息子は私が抱っこすると大人しく抱っこされていたため、特段大変とは思いませんでした(このときそう思ってしまったことが後々に響くとは知らずに…)。
ほかの子どもたちが健診を終えて帰って行き、息子が呼ばれたのは最後の方でした。
案の定お昼寝できずに不機嫌な息子は、発達検査のテストはほぼできませんでした。健診のころには今思えば分かりやすく特性が出ていた息子。手先の感覚が過敏で手づかみ食べをせず、一粒でもご飯粒が手につこうものなら、全力で手をブンブン振って払おうとするので、食後はそこらじゅうに米粒が飛び散っていました。また、机に置かれた「おしぼり」もすごく嫌がり、一切触ろうとしませんでした(“おしぼりの防波堤”を作っておけば、それ以上手を出してくることもなかったので、外食の際には重宝していました。笑)。
そしてあまり笑わない・目が合いにくい、名前を呼んでも振り向かない・運動面もゆっくりでハイハイをしようとしない…指差しもしない。
とにかく反応が少なかった息子なので、保健師さんも言葉を濁しつつ「育てにくいと思ったことはないですか?」と聞いてきましたが、私は初めての息子の育児で「こんなもんやろ」と思い込んでしまっていたのと、呼ばれるまでの間に私よりもっと大変そうな親御さんがたくさんいると感じていたので、こんな私が大変だなんて言えないと気持ちに蓋をしてしまったのです。そして…保健師さんの様子観察の提案に対する私の言葉は「大丈夫です」でした(あぁーーー…←心の叫び)。
今まで可愛いと思っていた行動が特性だった⁉︎メンタルはどん底に…
1歳1ヶ月を過ぎたころ、息子はついにハイハイを習得し徐々に表情も豊かになっていました。このころに気に入っていた遊びは、表裏柄の違う薄っぺらい布や、葉っぱなどを目のすぐ横でヒラヒラとさせることでした。ある程度勉強した今ならすぐに、「同じ行動を繰り返す」という、ASDの特性の一つ「常同行動」では?とピンときますが、当時はただただ「ニコニコしながら布などを振る」その謎の行動が可愛くて仕方ありませんでした(親バカ炸裂)。
Upload By 海乃けだま
ようやく新居への引っ越しも落ち着いたころ、ママ友と久々に会うことになりました。たった2~3ヶ月会わないだけでママ友の子どもは喃語から単語を少し話すようになっており、母親のお話に対して“はい/いいえ”の意思をしっかり示していました。このころの息子はと言うと、名前を呼んでも10回に1回振り向くかどうか、単語はおろか母親である私でも解読不可能な喃語パラダイスでした。
未だに指差しもなく、欲しいものがあるときは「あー!!」とぐずるスタイルでした。それでも産まれてから片時も離れず、1日中一緒に過ごしていたので、指差しや発語がなくてもだいたいの息子の要求は汲み取れていました。
…が、さすがに無知な私もこのころから「…あれ…なんか息子、ちょっと様子が違うかも…?」と思うようになりました。そう感じてからは児童館へ行っても、スーパーへ行っても、公園に行っても、同じ月齢の子どもを無意識に見ては、息子との差を比べてしまっていました。ただただ「息子と同じくらいの発達の子どもはいないか」と、自分を安心させたい気持ちだけでした。しかし…どこへ行っても息子ほど反応が少ない子どもはいませんでした。私の疑問の気持ちは確信に変わっていきました。
それでも息子の時間は過ぎてゆく…1歳半健診を待てずに発達相談したあの日。次のステップへ進むために。
真っ暗闇の出口の見えないトンネルに息子と2人きりでとり残されている心境でした。「妊娠中の食べ物がよくなかった?」「産むときに何かあったんじゃ…」「私の育て方が下手なせいで…」答えなんてないのに、自問自答を繰り返していました。発達障害は母体の環境や親の育て方は関係ないと言われていますが、自分を責めずにはいられませんでした。食事も喉を通らなくなり、1週間で3キロ痩せました。少しでも暇があれば発達障害について調べるようになり、“特性があったけど発達障害ではなかった”という記事を見つけては、ほんのひととき安堵するも、また目の前の息子を見ているとやっぱり発達障害があるんじゃないか…と育児が楽しめなくなっていた自分がいました。
モヤモヤした気持ちのまま息子と過ごしていましたが、発達障害のことを調べていくうちに“早期療育”の文字が目に入りました。息子の貴重な幼少期、「少しでも早く環境を整えてあげたい!!」と1週間後に迫っていた1歳半健診を待てず、気づくと発達相談の予約窓口へ連絡をしていました。
発達相談の日、保健センターの発達相談員さんに新版K式発達検査を実施してもらった結果、息子の発達年齢は「10ヶ月程度」と言われました。息子はそのとき1歳10ヶ月でした。頭によぎるのは、夜寝なかった乳児時代の息子、ヒラヒラと布を揺らして喜んでいた1歳のころ…あのときから行動に移していれば、息子にもっと早く療育を受けさせてあげられたのに…後悔ばかりが募っていました。
Upload By 海乃けだま
後ろばかり見ていた私でしたが、「とにかく息子のために今できることをできる限りやるしかない!」と夫と共に病院へ行き、療育先を探しに行きました。
正直なところ今でも「息子にASDがなかったら、どんな子どもになったんだろう」と思わない日はありません。でもそんなとき、超楽天家な夫は「息子は息子やん!おもろいやん!」と私のネガティブな気持ちを軽く吹き飛ばしてくれます(吹き飛ばない日も多々あります(笑))。
Upload By 海乃けだま
私自身、息子が発達障害かもしれないと落ち込んでいたとき、藁にもすがる思いで見ていた発達障害に関する記事に背中を押してもらいました。この私の体験談が、誰かのお役に立てれば幸いです。
執筆/海乃けだま
(監修:室伏先生より)
けだまさん、発達障害かもと思われたきっかけや、療育へ繋がるまでのエピソードを具体的に共有していただき、ありがとうございました。もっと早く療育を受けさせてあげられれば、と後悔があると書いてくださっていますが、1歳半健診よりも前に発達相談窓口にご連絡されたとのことで、とても早い段階で発達相談や療育につながれたのではないかと思います。もちろんお子様、ご家族が直面しているお困りの内容にもよりますが、3歳児健診で指摘されたり、就学前の段階で園の先生からご相談があったり、ということを契機に医療や療育につながる方が多いように思います。就学後や、成人になってから診断を受けられる方も少なくありません。自閉スペクトラム症の場合、1歳のお誕生日を迎える前の段階では、夜泣きや癇癪が強い、逆にとてもおとなしい、人見知りをしない、あまり笑わない・目が合いにくい、名前を呼んでも振り向かないなどの徴候が見られることもありますが、受診をしていただいてもその時点での診断は難しく、コミュニケーションの発達(言語発達だけでなく非言語的なコミュニケーションも含みます)、遊び方の発達、情緒の発達、感覚の偏りなどを見て、総合的に判断していくことが多いです。発達障害であるかどうかについて判断がつきにくい時期であっても、発達に関して不安な点があれば、ぜひ発達相談や受診を考えてみていただきたいと思います。
けだまさんは、発達相談につながるまで、ママ友とも悩みごとを共有できないままに、お一人で悩まれたり、自分を責めてしまったりと、おつらかったですね。時間のかかる寝かしつけや、手の感覚過敏などもあり、育児も本当に大変だったことと思います。
発達に関して相談することは、勇気のいることかもしれませんが、早期に療育機関につながりやすくなったり、関わり方のアドバイスをお伝えできたり、睡眠の困難さに対しては必要に応じて薬物治療を検討できたり(成人で使用される睡眠薬とは異なり、眠るためのホルモンを調整するようなお薬があります)と、いろいろメリットがあると思います。自閉スペクトラム症は関わり方が原因で発症するものでは決してありませんが、家庭でできる療育的な関わりにより、言語や社会性の発達を促すことも期待できます。1歳半健診では、言葉が出ているか、アイコンタクトや模倣、表情などの非言語的なコミュニケーションが育っているか、などを確認していますが、短時間の診察になりますし、個人差もあるため、多少のおくれがあっても指摘されないこともあります(3歳児健診も同様です)。健診で指摘がなくても、不安や違和感を感じた時点で相談を検討していただければと思います。
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
ADHD(注意欠如・多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
SLD(限局性学習症)
LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。