多動で園トラブル…3歳児に表れやすいADHDの特徴や症状は?【医師監修】
ADHD(注意欠如多動症)とは?
ADHD(注意欠如多動症)は、「不注意」「衝動性」「多動性」という特性があり、日常生活に困難を生じる発達障害の一つです。5~15%の子どもにADHD(注意欠如多動症)があるという調査もあり、家庭や園などでさまざまな困り事が見られることがあります。
ADHD(注意欠如多動症)の子どもは、不注意特性によって「集中が続かない」「話を最後まで聞けない」、多動性・衝動性特性によって「常に体を動かしている」「順番を守れない」などの特徴が表れることがあります。症状の表われ方によって3つのタイプがあり、不注意傾向が強いタイプ、多動性・衝動性傾向が強いタイプ、どちらも表れるタイプと分かれています。
ADHD(注意欠如多動症)の原因はまだはっきりとは分かっていませんが、遺伝などの傾向もあると言われています。
診断は症状が6ヶ月以上続いていることや、症状が2つ以上の場所(家庭と園など)で表われていることなどの基準があり、保護者が書いた質問票や子どもの様子を参考にして医師により判断されます。
ADHD(注意欠如多動症)はあくまで特性であって治るものではなく、環境調整や服薬によって困り事が出ないように対処します。
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/23-%E5%B0%8F%E5%85%90%E3%81%AE%E5%81%A5%E5%BA%B7%E4%B8%8A%E3%81%AE%E5%95%8F%E9%A1%8C/%E5%AD%A6%E7%BF%92%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E3%81%A8%E7%99%BA%E9%81%94%E9%9A%9C%E5%AE%B3/%E6%B3%A8%E6%84%8F%E6%AC%A0%E5%A6%82-%E5%A4%9A%E5%8B%95%E7%97%87-adhd
参考:注意欠如・多動症(ADHD)|MSDマニュアル家庭版
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-04-003.html
参考:ADHD(注意欠如・多動症)の診断と治療|e-ヘルスネット
3歳児頃から表れるADHDの特徴とは?違和感や発達の遅れ、気になるサイン
子どもは3歳頃には、手を使わずに階段の昇り降りができたり、三輪車に乗れたり、ごっこ遊びができるようになったりと心身が成長します。
また、園などでほかの子どもたちと集団行動することも増えていきます。そういった状況の中で表れてくるADHD(注意欠如多動症)の特徴を紹介します。
ADHD(注意欠如多動症)の特徴は4〜5歳頃までに表れると言われていますが、3歳頃の年齢の子どもは活動的でじっとしていられないことも珍しくありません。合併症として睡眠障害(入眠障害・中途覚醒)の症状も見られることもあります。実際にADHD(注意欠如多動症)の診断は小学校入学後の7歳頃に受けることが多いと言われています。次に挙げる特徴に当てはまっても、必ずしもADHD(注意欠如多動症)とは限りません。
3歳頃に表れる不注意の特徴例
・一つの遊びに集中することが難しい
・気になるものがあるとすぐ気がそれる
・保育士や保護者の話を最後まで聞くことが難しい
・遊びで使った道具の片づけが苦手
・園などでよく物をなくす
・話したことを忘れることが多い
3歳頃に表れるの多動性・衝動性の特徴例
・手足を絶えず動かしている
・席にじっと座っていることが難しい
・急に話し出したり、走り出したりすることがある
・静かにしている場面でも話したり動いたりすることがある
・友達と遊んでいても順番を待てないことがある
・友達のおもちゃを取ってしまうことがある
3歳頃になると園でも集団行動をする機会が多くなり、それに伴う困り事も表面化してきます。ですが、座って話が聞けないなどは3歳頃の子どもにはよくみられることなので、それだけでADHD(注意欠如多動症)の傾向があるとは言えません。
気になる様子が複数あり心配な場合は、後ほど紹介する専門機関に相談しましょう。
ADHD(注意欠如多動症)の特性があると突発的な行動や集団活動でのトラブルなどが多くみられます。
ただ、子どもは意図して問題となる行動を起こしているわけではありません。そのため、「落ち着きなさい」「順番を守りなさい」などとっても、本人もどう直していいのか分からず、「自分はなんでできないんだ」と自己否定につながってしまいます。そういった状況が続くと、気分が落ち込んだり、不安感がコントロールできなくなったりして、精神的な症状が表れる可能性もあります。ADHD(注意欠如多動症)の子どもへの対応としては、環境調整や行動への介入、薬物療法によって困り事を減らしていくことが有効です。
環境調整とは、困り事が表われないように特性に合わせて周りの環境を整えていくことです。例えば、席でじっとしていられない子どもには、周りに気が散るものが目に入らないような席に変えることや、「5分だけ座っていようね」など短い時間で区切るなどの方法があります。
また、行動への介入とは環境調整によって席に座ることができたときに「座れて偉いね」「最後までできたね」など、できた行動を褒めていくことです。そうすることで、望ましい行動を増やし、望ましくない行動を減らしていく効果があると言われています。また、療育を受けることも有効です。
ほかにも、急に走り出しても危なくない場所で遊ぶことや、ハサミなど不注意によって怪我につながる道具を使わないといった、危険に対する環境調整をしていくことも子どもの安全を守るうえで重要です。
薬物療法では、ADHD(注意欠如多動症)の症状を緩和する薬が処方されます。代表的なものとして、コンサータ、ストラテラ、インチュニブ、ビバンセなどがありますが、主に6歳以上に使用が認められているため、3歳児には処方しません。随伴する症状として、睡眠障害があるために寝かしつけや、日中の活動に支障がある場合には、漢方薬などを使用することもあります。
https://www.pref.nara.jp/secure/178332/sannsai.pdf
参考:3歳児健康診査|奈良県医師会
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/23-%E5%B0%8F%E5%85%90%E3%81%AE%E5%81%A5%E5%BA%B7%E4%B8%8A%E3%81%AE%E5%95%8F%E9%A1%8C/%E5%AD%A6%E7%BF%92%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E3%81%A8%E7%99%BA%E9%81%94%E9%9A%9C%E5%AE%B3/%E6%B3%A8%E6%84%8F%E6%AC%A0%E5%A6%82-%E5%A4%9A%E5%8B%95%E7%97%87-adhd
参考:注意欠如・多動症(ADHD)|MSDマニュアル家庭版
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-04-003.html
参考:ADHD(注意欠如・多動症)の診断と治療|e-ヘルスネット
3歳児に表れることの多いADHDの特性をチェック
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※発達や成長に加え症状や特性には、この時期大きな個人差があります。
当てはまる反応や行動の数が多いからといって、すぐにADHD(注意欠如多動症)と診断されるわけではありません。
子どもの発達が気になったらどこに相談すればいい?
3歳頃の子どもの発達が気になった時に相談できる窓口を紹介します。まず、保健センターで実施している3歳児健診の際に相談することが可能です。3歳児健診では子どもの発達の様子を医師によって見てもらうことができるため、不安なことがある保護者はその際にADHD(注意欠如多動症)についても相談してみるといいでしょう。また、健診とは関係なく、保健センターにADHD(注意欠如多動症)について相談することもできます。予約が必要な場合もありますので、あらかじめWEBサイトなどをご確認ください。
ほかにも子どもの発達について相談するには以下のような場所があります。
・児童家庭支援センター
・児童相談所
・児童発達支援センター
場所によっては対面ではなく電話などで相談することもできますので、確認したうえで相談しやすい場所を利用しましょう。
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/docs/book_P21-26.pdf
参考:困ったときの相談先|厚生労働省
https://www.city.mitaka.lg.jp/c_service/078/078594.html
参考:3歳児健康診査|三鷹市
まとめ
ADHD(注意欠如多動症)は3歳では診断は難しいですが、3歳児は身体の発達や集団活動の増加などによって、それまでとは違った困り事が表れてくることがあります。この頃に「ADHD(注意欠如多動症)かもしれない」と感じる保護者も多くいると思われます。
ADHD(注意欠如多動症)の困り事は特性によって起こるため、むやみに叱ったり言い聞かせても困り事がなくなるわけではありません。また、叱られ続けることで自己否定が強くなり、精神的な症状につながる可能性もあります。
ADHD(注意欠如多動症)の子どもには、環境調整や行動への介入によって困り事を減らしていくことが有効と言われています。
気になる様子があったら3歳児健診の際や、自治体の窓口などに相談し、適切な対処をしていくことが大切です。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ADHD(注意欠如・多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。