漢方薬「柴胡加竜骨牡蛎湯」の効果や副作用は?子どものイライラや夜泣きに処方?/医師監修
漢方薬「柴胡加竜骨牡蛎湯」は不眠やイライラに処方?特徴、効果、副作用や子どもへの処方についても解説
柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)は、不眠や不安、ストレスによるイライラ、子どもの夜泣きなどがある際に用いられる漢方薬です。柴胡加竜骨牡蛎湯には身体の炎症を鎮める柴胡(さいこ)や気分を落ち着ける竜骨、牡蛎などが配合されています。
漢方医学には体内をめぐる「気」と呼ばれる生命エネルギーの概念があり、気が乱れることで神経が過敏になり、不安やイライラなどの症状が表れるとされています。漢方薬を服用することで気の流れに作用し、自律神経を整え症状を落ち着ける効果があると考えられています。
柴胡加竜骨牡蛎湯は子どもから大人まで服用できる漢方薬で、場合によっては0歳児から処方されることがあります。
しかし、子どもへの市販薬の使用を考えている場合には、医師や薬剤師にあらかじめ相談するようにしましょう。
柴胡加竜骨牡蛎湯は即効性のある漢方薬ではないため、効果を実感するまでにある程度の期間が必要です。一般的には1ヶ月程度で効果が表れてくると言われており、子どもの夜泣きや便秘に用いられる場合は1週間程度で効果が表れるとされています。
個人差はありますが、上記の期間服用を続けても症状が緩和されない場合は医師や薬剤師に相談してみるといいでしょう。
柴胡加竜骨牡蛎湯の用法、容量は?病院で処方してもらえる?
柴胡加竜骨牡蛎湯は薬局やドラッグストアなどで市販されていますが、病院で処方されることもあります。
15歳以上(成人)の場合は7.5gを一日2~3回に分けて服用します。
年齢によって用法・用量は異なり、以下の基準が厚生労働省から示されています。
・2歳未満:成人用量の1/4以下
・2歳以上4歳未満:成人用量の1/3
・4歳以上7歳未満:成人用量の1/2
・7歳以上15歳未満:成人用量の2/3
実際には体重や症状、そのほかの要素によっても変わってきますので、病院で処方された場合は医者の指示に従って服用するようにしましょう。
柴胡加竜骨牡蛎湯は食前または食間に水か白湯(さゆ)で服用します。なお、「食前」とは食事の30分~1時間前で胃の中に食べ物が入っていない状態を指し、「食間」とは食事と食事の間のことで、前の食事から2時間後が目安です。食間と言っても食事の最中ではありません。
また、漢方薬を服用するのが苦手な子どももいると思います。そういったときは、オブラートで包む、医療補助ゼリーに混ぜる、白湯で溶くなど工夫してみましょう。どうしても嫌がる場合は、子どもが好きなジュースやヨーグルトなどに混ぜる方法もありますが、成分に影響が出る可能性もあるため、あらかじめ医師と相談してから試してみてください。
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/0000160073.pdf
参考:都道府県知事が承認する漢方製剤の製造販売承認事務の取扱いについて|厚生労働省
柴胡加竜骨牡蛎湯は発達障害の症状に効果があるの?
柴胡加竜骨牡蛎湯は発達障害(発達神経症)のある方へ処方されることもあります。発達障害は生まれつきの脳機能の偏りによるもので、ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如多動症)などの種類があります。
なお、柴胡加竜骨牡蛎湯は発達障害そのものの治療ではなく、発達障害に付随した不安や不眠、夜泣き、神経過敏などの周辺症状の緩和を目的に使われます。
また、発達障害のある方に処方される漢方薬は柴胡加竜骨牡蛎湯だけではありません。困りごとに合わせて、抑肝散(よくかくさん)などが処方されることもあります。
発達障害による困りごとの緩和には、環境調整や療育などさまざまな取り組みがあり、薬の服用だけでなくほかの方法も合わせて行っていくことが大切です。医師や支援機関などと連携しながら、それぞれに合った取り組みを行っていくといいでしょう。
https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=MbkmLbVbTEhSpxyE
参考:発達障害(神経発達症)|国立精神・神経医療研究センター
柴胡加竜骨牡蛎湯の使用はハイリスク?副作用について
漢方は副作用が比較的少ないと言われていますが、全くないわけではありません。柴胡加竜骨牡蛎湯にもいくつか副作用が報告されています。
柴胡加竜骨牡蛎湯の副作用としては、
・発疹、発赤
・かゆみ
・腹痛や下痢
・胃の不快感など
が表れることがあります。また、重大な副作用として肝機能障害と間質性肺炎が生じる可能性があるとされており、それぞれ
・肝機能障害:身体のだるさ、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる(黄疸)、茶褐色の尿
・間質性肺炎:から咳、息苦しさ、少し動くと息切れ、発熱
などの症状が表れることがあります。
重大な副作用が出るのはまれであり、柴胡加竜骨牡蛎湯が特別ハイリスクな薬というわけではありませんが、自身や子どもが服用して気になる様子があれば直ちに医師に相談するようにしましょう。
まとめ
柴胡加竜骨牡蛎湯は不眠や不安、イライラ、子どもの夜泣きなどに用いられる漢方薬です。
薬局やドラッグストアなどで市販されているほか、医師から処方されることもあります。
子どもから大人まで服用することができ、発達障害の周辺症状の緩和のために使用されることもあります。まれにですが、重大な副作用が生じることもあるため、気になることがあればすぐに医師や薬剤師に相談するようにしましょう。
参考文献:柴胡加竜骨牡蛎湯|おくすり110番
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。