【書字の困難】漢字の宿題に親子で疲弊。特別支援学級での環境調整と課題設定で守った学習意欲【読者体験談】
鉛筆を握るたび親子で「キーッ!」。漢字練習は親子で疲弊する時間
- ASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠陥多動症)の特性による書字の困難さと、具体的な「困りごと」の様子
- 特別支援学級で行われた、書字の負荷を減らす環境調整
- 口述筆記を活用し、家庭で学習意欲を維持させるための工夫
- 周りの子と比べて焦る気持ちを、「長い目」の視点に切り替えるヒント
- 年齢:8歳
- 診断名:ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)
- 診断時期:ASD(自閉スペクトラム症)7歳、ADHD(注意欠如多動症)8歳
- エピソード当時の年齢:7~8歳
現在小学2年生の息子は、国語と算数の授業を特別支援学級で受けています。1年生のはじめの頃、漢字練習は親子にとって本当に「つらい時間」でした。
鉛筆の力加減が難しく、勢い余って枠から字がはみ出してしまう。偏とつくりのバランスが崩れ、本人以外には読めない字になってしまう。「書き直したほうがいいよ」と伝えると、息子は「キーッ!」とパニックになり、消しゴムでノートをぐしゃぐしゃにするまで消し、余計に書く手間が増えてまた苛立つ……。そのイライラは私にも感染します。「ここで私がキレたら、息子のモチベーションは下がる」とぐっとこらえていましたが、内心は本当に苦痛で、毎日の宿題の時間が憂鬱でした。
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今の息子に「ちょうどいい」環境作りを
そんな息子を救ってくれたのは、特別支援学級でのきめ細かな配慮でした。
大きなマス目のノートの用意や、記述式の教材は先生が拡大コピーをしてくださるなど、書き込みやすい工夫をしてくださっています。
息子は大きなマス目だと書きやすいらしく、特に漢字練習などは「丁寧に書こう」という意欲がうかがえるようになりました。また、書き損じても間違えた部分だけが消しやすいため、書字に対する拒否感が少しずつ軽減されているように感じます。
児童発達支援や放課後等デイサービスの先生、そして児童精神科の主治医からは、「子どもには『ちょっと頑張ったらできる』レベルの課題を設定するといい」というお話をよくされます。今の息子にとって、この環境はまさにその適切なレベル設定になっているのだと思います。
工程を「分解」して、書く負荷をコントロール
学校での環境が整い始めた頃、次に立ちはだかった壁は、1年生の夏休みの宿題「絵日記」でした。息子は、何を書きたいかは口頭でスラスラ言えるものの、書字がまったく追いついていない状態だったのです。書字だけじゃなく絵を描くことにも苦手意識があったので、まずは「息子が言ったことを私が書き取り、それを見本に息子が宿題の用紙に書き写す」という方法で対処しました。
実はこれ、私が自動車教習所に通っていた頃、ハンドル操作が苦手な私に教官が「ハンドルは僕がやるから、君はアクセルとブレーキだけ踏んでみて」と、工程を分解して教えてくれた経験がヒントになっています。「頭の中で考えた文章を正しい表記で文字化する」工程を私が担ったことで、絵日記への負担感は多少軽減され、息子も「絶対にやらない!」という状態に陥ることは免れたのではないかと思います。
私自身、ライターをしていますが、文章では意見をまとめられても、会話でのアウトプットは苦手。息子とは真逆のタイプである私だからこそ、スキルのギャップがある彼の気持ちは少し分かる気がしますし、「苦手なところは必要に応じてカバーし、得意なところを伸ばせればいい」と考えています。
黙って書く姿に見た、1年間の大きな飛躍
2年生になったある日、驚くべき変化がありました。1年生のときはあんなに苦労していた絵日記を、息子が黙って一人で書き進めていたのです。内容を口に出さなくても脳内で文章化し、最後まで書き上げ、さらには文字を書くスピードも格段に上がっていました。
もちろん、交流級(通常学級)で書いたプリントを見ると、カタカナとひらがなが混ざっていることもあります。
時間内にある程度の量を書く作業は大変で、書き分けまで気が回らない状態なのかもしれません。それでも息子は、いつも枠内に自分の感想をしっかり埋めていて、先生も内容重視で丸をつけてくださっています。こうした対応が、息子の学習意欲を支えているのだと思います。
時折、交流級の子が書いた小さく整った文字を見て「わが子の成長はゆっくりだな……」とほろ苦い気持ちになることもありますが、今と過去の息子を比べると、彼なりのペースでできることがちゃんと増えていることに気づきます。
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親が肩代わりしすぎない勇気。目先の結果ではなく長い目で見守って
発達特性のある子の子育てはつい「目先のこと」に目が向きやすいですが、以前読んだエッセイで「目先の結果に一喜一憂する親は子どもの才能を潰す」という話を知り、私は衝撃を受けました。親の不安や焦りを子どもにぶつけていないか、振り返るきっかけになったのです。
今回の絵日記のようなサポートは「何でも親が助ければいい」というわけではなく、本人ができていること(何を書くか考えるなど)は口出しせず、苦手な部分だけを補うことが大切だと感じています。それによって子どものモチベーションが維持でき、伴走する親の気持ちも楽になる。
そうしたメリットがあると思っています。
息子は今でも「めんどくさいな」と文句を言いながらも宿題をやっていますが、最後まで取り組めています。不安を感じることもありますが、「この子はこれまでも大丈夫だったんだから、長い目で見れば、きっと大丈夫」。そう自分に言い聞かせながら、これからも彼なりの歩みを長い目で見守っていきたいなと思います。
イラスト/もっつん
エピソード参考/苗
できないことを責めたり、ひたすら繰り返させるのではなく、課題をスモールステップに分解して、できるところは自分でやらせて苦手なところは代行しながらモデルを見せる、支援付きでできたらできたことを褒めるという実践をうまくされたと思います。本人が苦手な活動を分解して困難な部分を支援する方法は書字に限らずほかの活動にも応用できるので試して行かれると良いと思います。(監修:公認心理師井上雅彦先生)
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。
今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。