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ADHDも?45歳目前で診断、服薬開始。ASD・双極性障害治療との両立で見えた新たな光

LITALICO発達ナビ

30歳を過ぎて判明したASD(自閉スペクトラム症)


幼い頃から生きづらさを感じていた私ですが、学校の成績が良かったため、30年以上前で社会に発達障害についての情報が普及していなかった当時、私のASD(自閉スペクトラム症)の傾向には誰も気づきませんでした。

学校では「頭はいいけど変わった子、つきあいづらい子、できるはずなのに頑張らない根性なし」というような扱いを受け、いじめや、教師からの厳しすぎる指導などに苦しんでいました。

20代いっぱい、働こうとしても体調がついていかずに続けられず、準ひきこもり状態で過ごしました。30歳のときに危機感を覚え、この不調をなんとかしなければと、ある鍼灸接骨院に通い始めたのです。

そこで聴覚過敏と同時に「発達障害」の可能性があるのでは?と病院受診をすすめられたことからASD(自閉スペクトラム症)を自覚、32歳のときに診断を受けました。

ADHD(注意欠如多動症)が判明するまで


ASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けた精神科ではエビリファイという薬を処方され、これがよく効いて、生活リズムが整いました。同時に福祉につながり、障害者手帳と障害年金を取得。治療や情報収集にお金がかけられるようになりました。
30代後半には複雑なトラウマも自覚してトラウマ治療を受け、複雑性PTSDの診断も受けました。

40代、ずっとトラウマ治療を続けてきて、ずいぶん良くなった感じはあるものの、2024年あたりから「あと何か一押しが足りない」といった感じのところで足踏みが続いていました。

45歳目前で判明したADHD(注意欠如多動症)


診断を受けて以降、発達障害について発信したり情報収集する中でずいぶんとネット上で専門家とのつながりができたのですが、その中に有能な発達支援の先生がいました。

この春、たまたま機会があって、2025年の4月にこの先生に直接ご挨拶に行きました。そこでの会話の中でふと、「宇樹さんは見たところ、多動はないようだけど、注意散漫はあるような気がする」という話になったのです。

そこから、「確かに昔教習所に通ったときに運転適性検査で『注意力が非常に散漫』と書かれて驚いたことがあります。多動のないADHD(注意欠如多動症)で昔ADD(Attention Dificit Disorder)というのがあったけど、今どうなってるんでしたっけ」「今はADHD(注意欠如多動症)のサブタイプとして不注意優勢型ADHD(注意欠如多動症)という分類になっているはず」と展開。もしかして私も不注意優勢型ADHD(注意欠如多動症)で診断が出るような傾向を持っているのかな? と思いながら帰宅し、調べてみたところ、「それって私じゃん!」というような特徴の人々についての情報がぞろぞろ出てくること出てくること。


それで、コンサータ登録医の資格を持っている専門医にかかることを決心しました。第三者情報として小学校時代の通知表も添えて説明してみたところ、「間違いなくADHD(注意欠如多動症)の傾向がある」として、不注意優勢型ADHD(注意欠如多動症)の診断を受けました。

私の生きづらさを増していたADHD(注意欠如多動症)の傾向


この診察のとき、「頭の中がいつも何か散らかった感じで、情報や刺激がすぐに頭の中で溢れたようになってワーッとなってしまう」という話をしたら、「情報がうまくフィルタできていない、処理にも困難がある。これはADHD(注意欠如多動症)の特徴で、おそらく服薬でだいぶん楽になる」と言われました。

情報のフィルタと処理に困難がある……よく振り返ってみると自分の、ときどきとんでもないうっかりをするところにとても苦労していたことを思い出すのです。

ゆっくり時間があるときで、疲れておらず、プレッシャーもかかっていないときならまだいいのですが、「時間に追われていて慌てている」「初めての場所に行く」「泊まりがけで遠出する」「仕事や試験などで緊張している」など、何か負荷が大きい状態になると、おそらくギリギリで回していた処理能力を超えるのでしょう、しょうもないケアレスミスが頻発します。

ベースに完璧主義のASD(自閉スペクトラム症)と、不安の強い複雑性PTSDの傾向があるため、こうした自分のADHD(注意欠如多動症)的な傾向をどうにかコントロールしようと常に過剰に緊張・努力していたと思います。

負荷のかかるできごとの前にはものすごく不安が高まります。
なるべく突発的な情報処理による大きな負荷を避けるためでしょう、必死にたくさんいろいろ調べ、脳内でシミュレーションするようになりました。無事に終えたあとにはもうすっかり疲労困憊です。

こうした極端な不安の強さや完璧主義は、不安症や強迫症のレベルだと思っていましたが、ASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如多動症)の併存ではとりわけ不安症や強迫症の二次障害が多いらしいとも聞きました。

なぜ診断されていなかった?


32歳の時点でASD(自閉スペクトラム症)の診断はあり、以降かかってきた医師の中には「広汎性発達障害(ASDやADHDなどを分類しない発達障害)」と見立てた人もいました。しかし、私も含め誰も私のADHD(注意欠如多動症)的な部分に目を当てませんでしたし、それを前提としたアプローチもしませんでした。

なぜかを考えてみたのですが、おそらく私が精神科にかかったのは成人後で、目立った多動や分かりやすい衝動性がなかったうえ、ASD(自閉スペクトラム症)やトラウマの印象に引っ張られたからでしょう。医師に小学校の頃の通知表を見せたこともありませんでしたし、自分自身、ADHD(注意欠如多動症)の可能性を考えた目で通知表を見返してみたこともありませんでした。

成人や女性の場合、子どもの頃には多動や衝動性の傾向があっても、成長に伴い目立たなくなって不注意優勢型に移行することが多く、発覚しづらいとのこと。
確かにそのつもりで通知表を見てみると、小学生の頃の私にはASD(自閉スペクトラム症)の傾向だけでなく、ADHD(注意欠如多動症)の衝動性や多動と思われる言動があったことがしっかりと見て取れます。

ADHD(注意欠如多動症)治療薬、複雑性PTSDや双極症傾向への影響も考えた処方


情報のフィルタや処理の機能のアップにはコンサータが最もよく効くようです。しかし、やはり強い薬であることと、私の場合、トラウマや双極症の傾向があるため、交感神経を刺激しすぎることによる過覚醒→躁転や不眠のリスクがあるとのことで、まずは少しマイルドなストラテラから開始することになりました。

治療をスタートして1ヶ月を過ぎて


ストラテラの通常の維持量は1日80mgとのことですが、まずは40mgから開始しました。

効果は数週間で徐々に現れてくる、開始直後には「効果は感じられないのに副作用だけ感じる」みたいな時期がある、と聞いていました。しかし、朝食後に最初の1カプセルを飲んだ数時間後、軽い口渇感を覚えると同時に「あれ?なんだかちょっと頭の中が静かで気持ちが落ち着いてない?」と感じました。

そして、交感神経を刺激するはずなのに、なんだかうっすら眠い。安心している感じ。
あれをやらなきゃこれをやらなきゃ!という焦りが楽になっている。それでいて、なんだかパッパと動ける。

私のように、服用開始初日からそれなりの効果を感じる人は少数ながらいるようです。

その後3日ほどだいたい同じ状態が続き、パッパと動ける→疲れる→午後にパタッと昼寝というのを繰り返しました。

そして4日め、朝起きてお白湯を飲んでいるときに突然「あ、散歩に出たら気持ちよさそうな天気だな」と思い、「まだ紫外線が強くない時間だから日焼け止めを塗らないで出られるな」と、パッと着替えて5分で出発、10分ぐらい近所を歩いてみたら気持ちのいいこと。感激して、以来、雨の日や体調が悪い日以外は毎日散歩が続いています。

いっぽう、血中濃度が安定してきたと思われる1週間めぐらいから胃のムカムカと便秘がひどくなりました。胃腸の蠕動運動が低下することにより、このような副作用が出るようです。
吐き気止めや緩下剤、胃にやさしいものを少しずつ食べる、おなかを動かす深い呼吸をするなどで対処しました。

服薬開始から1ヶ月を過ぎた頃にはほぼほぼ副作用が気にならなくなっていましたが、梅雨入りによる湿気、その後すぐの酷暑でさっそく夏バテに突入してしまい……胃酸を抑える薬を処方され、とりあえずストラテラの増量は見送ることになりました。

注意や集中、切り替えの力、気分の安定性などは徐々にしっかりと底上げが効いてきている感じです。

ゆっくりと様子をみながら


医師には、「ともかく焦らずゆっくりと、数ヶ月のスパンで考えて。あと、あまり効き目に期待しすぎないこと。少しでも楽になればなという気持ちでね」と言われています。

やはり、効き目を感じるぶん焦ってしまうのですが、焦りすぎれば必ず不調となって返ってくるので、一歩ずつ進んでいかなければなと思っています。

宇樹義子/文

(監修 鈴木先生より)

宇樹さんは「大人になってしまったASD(自閉スペクトラム症)/ADHD(注意欠如多動症)」なのです。
大人になって発症したわけではなく、通知表に書かれている通り、小学生からASD(自閉スペクトラム症)/ADHD(注意欠如多動症)症状があったのです。ただ、かかりつけ医が診断できず、また学校の成績が悪くないと担任がスルーしてしまうケースも多いのです。

最近はメディアの影響もあり大人になってから気づくことが増えてきました。ただ、成人精神科でADHD(注意欠如多動症)やASD(自閉スペクトラム症)の診断のできる医師は多くはありません。そのため精神科ではASD(自閉スペクトラム症)/ADHD(注意欠如多動症)と診断されずに双極性障害(双極症)や適応障害(適応反応症)などと診断されることも多いのです。

最近はSNSの情報などをきっかけに自身に発達特性があるのではと感じて相談に来る大人の患者さんが増えております。たいていはご自身の認識の通りなことが多いです。自身に発達特性があるのではないかと疑ったら、宇樹さんのようにASD(自閉スペクトラム症)/ADHD(注意欠如多動症)をきちんと診断でき、コンサータ登録医の資格を持っている医師の下を受診して相談することをおすすめいたします。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に
公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

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