【中学受験と発達障害】「見たら覚える」カメラアイ、成績優秀な私に「合う塾、合わなかった塾」【体験談】
勉強しなくても成績が良かった
当時は特別なことと思わなかったのですが、私にはどうも「言語的カメラアイ」のような能力があるよう。
ものや風景の色形をカメラでパシャッと撮るかのように「画像で記憶する」タイプのカメラアイとは違います。
「これについては教科書のこのあたりを開いたときの右下に3行ぐらいで説明があった。ピンクの蛍光ペンで線を引いた」「図説のこのあたりのページの左真ん中に図があった。緑色だった」みたいな感じで、脳内に「言葉・記号、論理構造の概念的スクリーンショット」が自動保存されている感じでした。
私の母は図書館司書で、良質な絵本や児童書、学習雑誌をふんだんに与えてくれました。私は物心つく前からずっと、これらの大量の本の中身をすべて「言語的カメラアイ」を使って頭に入れてきたわけです。
ひらがなも就学前に知らないうちに読めるようになっていて、気づいたら勝手に1人で絵本を読んでいたとか。
小学校に上がると、自分の学年の学習雑誌では物足りず、3学年上の兄のものを奪って読むように。小学校中学年には「博士」とか「歩く百科事典」とか言われていました。
こんな感じだったので、特に小学校レベルの内容だったら「頑張って勉強して覚える」とか「テストのときに一生懸命思い出す」という感覚がまったくありませんでした。単に頭の中にあるものを紙に書けばいいだけ。
このため、みんながなぜ「勉強しなくちゃ」とか「分からない、思い出せない」とか言っているのかが全く分かりませんでした。
単純なドリル反復学習の塾は合わなかった(小学校中学年)
成績が良かったのになぜ塾に行ったのかはよく覚えていないのですが、たぶん算数に苦手意識があり、実際にほかの教科よりは成績が良くなかったからかもしれません。
ドリルプリントで単純な反復学習を繰り返す手法で有名なその大型チェーンの塾は、私には合いませんでした。
私は「新しいことを知る」「ものごとの背景にある理屈を解明する」ような学習活動が好きだっただけで、単純な反復学習にはまったくモチベーションがわかなかったのです。
算数が苦手だったのも、いま思えば「数の世界の背景にある理屈、数学の世界特有のものの考え方」「計算のしかたを身につけることの将来的なメリット」を教えてもらえないまま、特定の方法に「納得しないまま従わされる」感じが苦痛だったから。こんな私が単純なドリル反復学習の塾に行っても、合わない方法を繰り返すだけ。それでは、効果もないばかりか苦痛だったのも当たり前ですよね。
ついでにほかの得意教科のドリルもやりましたが、そちらは易しすぎてつまらない。確か、だんだん行かなくなって辞めたような気がします。
中学受験対策で行った進学塾は楽しかった(小学校6年)
私立の進学校を中学受験するにあたり、念のため塾に行くことに。小学校6年の秋ぐらいから少しだけ進学塾に通ったと記憶しています。
進学塾は私にとって、学校よりも学習自体を楽しめるところでした。
まず、クラス編成が成績別になっていることが良かった。自分のレベルに合った授業を受けられるし、先生の教え方も学校よりも工夫されていたので、授業が退屈だとか易しすぎるということがなかったのです。
学校ではいじめられっ子で、成績が良いことが嫉妬されて攻撃を受けていた私も、塾ではその人間関係がリセットされるので楽でした。
成績が良いことの価値が高かったし、みんな「いじめや嫉妬にエネルギーと時間を使ってるぐらいなら自分の勉強の時間をとろう」という感じだったので、いじめられることもありません。同じぐらいのレベルの子と同じクラスだと、話も盛り上がって楽しかったです。
「進学塾からの帰宅問題」はしんどかった…
進学塾通いで唯一ネックになっていたのが、「帰りをどうするか」問題。
帰りは真っ暗な時間。塾から家までは大人の足でも徒歩20分。
「とうてい義子を1人で帰らせられない」となりました。でも当時、この時間に私を迎えに来られるような家族はいない。
両親は苦肉の策として、同じ塾に通っていた、近所の同級生Aちゃんのお母さんに頼りました。Aちゃんを迎えに来るときに一緒に私も車に乗せてもらうのです。
人さまの家のお子さんを送り迎えして命を預かるなんて、責任重大で恐ろしい。ちょっと想像してみるだけで私ならそうとう嫌です。
きっとAちゃんのお母さんも嫌だったけれど、つきあい上断ることもできなくてつらかったろうと思います。それで、Aちゃんにずっと何かと文句を言っていたのではないかな。
Aちゃんはスポーツ万能のボスキャラ、メチャクチャ気の強いいじめっ子だったのもあり、私は塾で一緒にお母さんの迎えを待っているとき、「今思えばあれはわざとの嫌がらせだったな」ということをされました。授業が終わっても、いつまでもほかの子たちと廊下でおしゃべりしているのです。私が朝の学校から塾まで終えて疲れ切ってお腹もペコペコで眠くて早く帰りたくて、「ねえ、早く帰ろうよお」と何度言ってもうやむやに流して、お母さんに連絡してくれない。結局やっと帰途につけるのは小1時間あとでした。
今だったら何かと便利なサービスがありそうですが、30年以上前はこうした細かい不便は、お母さんたちが苦労してどうにかやりくりしたり、私のケースのように子どもたちにしわ寄せが行くことがよくあったのです。
「学び」が好き、「勉強」が嫌いなゆえの苦しみがあった
私は平均・標準から外れていた子でした。「学び」が好きなぶん、平均・標準を中心にカリキュラムが組まれている公立小学校では浮いてしまって苦しかった。当時は世間に発達障害についての知識も普及していなかったし、現在のような子どものための多様なサービスもなかったのが残念だったなと思います。
今の発達障害のある子どもたちが、私よりもずっと楽にのびのびと子ども時代を過ごすことができたらいいな、と願っています。
宇樹義子/文
(監修・鈴木先生より)
もともとASDの方は視覚認知能力が高く、耳で聞くよりも目で見た記憶のほうが脳に残る傾向にあります。ある中学入試では「蝶やバッタを正面から見た絵を描きなさい」というような試験まであり、ASD傾向の生徒の適性に合った内容だと感じました。私立の中学のほうが特性が似ている仲間に出会える確率は高いのかもしれません。私立中の中には、ASD傾向のお子さんに慣れているので、教え方や接し方が特性に合っているところもあるだろうと思います。宇樹さんは恐らくIQは高いが下位検査でばらつきがあり、そのため公立では平均から外れ周囲から浮いてしまう存在だったのかもしれません。私立中を選択したことは将来のことを考えても正解だったのではないでしょうか。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。
現在は下記の表現になっています。神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
SLD(限局性学習症)
LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
提供元の記事
- 【最終話!】娘に必要なのは、魅力的なカリキュラムや就職率…?特別支援学級で気づいた、娘が「大切にするコト」を基準に【わが家の進路選択Vol.7】
- 【発達障害と受験】通学や学習進度、いじめ対策は?中学受験の志望校選び7つのポイント――発達障害&グレーゾーンの子の進学<後編>
- 「障害はギフト」特性を強みにした靴磨き職人。いじめ、うつ、パニック障害でも、磨くことが心を支えた。――発達障害を描いたCMプロデューサーが聞く【見えない障害と生きる】
- 不登校は年々増加のデータも!不登校・行き渋りにどう寄り添う?体験談やインタビューまで、役立つコラム9
- 不登校から中学受験。偏差値の壁で高校受験は諦めモード?卒業後の進路は!?
関連リンク
-
冬休み明け「学校行きたくない」と言われて固まった朝。専門家に聞いた “焦らない” 登校支援4ステップ
-
あぃりDXさんプロデュースのキッズオーディション番組が、ZOZOとコラボ! 原宿系雑貨やウェアなど全27型を販売
-
特定非営利活動法人MP研究会(MPKEN) 外国人住民の日本語力向上を通じて、生活の安定と社会負担の軽減へ 「楽しい日本語クラス」初回の募集で、ベトナム人3,000名が登録
-
自分の「努力が足りない」「性格の問題」と感じてしまうのはなぜ?最新研究が解き明かす、ASD(自閉スペクトラム症)の「生きづらさの正体」
-
ベビーカーにしがみつく!? 赤ちゃんに“ふーふー”してくれるハンディファンロボット「Babyふーふー」が可愛すぎる