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【精神科医・本田秀夫】「もう○歳だから」「やればできる」はNG!?ADHDの子を追い詰める年齢基準と120%の要求

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気が散りやすく、じっとしているのが苦手な子


ADHD(注意欠如多動症)の主な発達特性は、「不注意」と「多動性・衝動性」です。
不注意の特性が強い子は、物事に対して適度に注意を向けることや、注意を向け続けることが苦手です。気が散りやすいということですね。例えば、「うっかりミスが多い」「忘れ物が多い」「話を聞いていない/姿勢が悪い」などの行動が、不注意の特性と深く関連しています。

多動性・衝動性の特性が強い子は、じっとしていることが苦手です。まわりの人から「落ち着きがない」と言われがちです。「授業中に立ち歩く」「説明を最後まで聞かない」「思いつきで発言する」といった行動が、多動性・衝動性の項目と深く関連しています。

【精神科医・本田秀夫】「もう○歳だから」「やればできる」はNG!?ADHDの子を追い詰める年齢基準と120%の要求

Upload By 本田秀夫

多動性・衝動性は大人になるにつれて、目立たなくなっていくこともあります。
急に立ち歩くようなことは減って、それなりに落ち着いてくる場合もあるのです。

ただし「落ち着いた」=「多動性・衝動性がなくなった」というわけではありません。立ち歩きが減った代わりに、指やペンで机をトントンと叩く、座っているときに足を小刻みに動かす貧乏ゆすりをする、といった行動が見られることもあります。

一方、不注意の特性は、大人になっても目立ちやすいです。ミスや忘れ物などの困りごとは、成人期にも残る場合が多いのです。子どもの頃に比べて頻度が低くなる場合もありますが、ほかの人よりはミスが多く、それが本人にとって悩みの種になりがちです。

子どもの頃はADHDの特徴として、落ち着きのなさが注目されやすいです。親や先生は子どもが歩き回ることや衝動的に飛び出すことを気にしますが、すでに述べた通り、その点は成長するにつれて、おさまってくることもあります。
いちいち叱って抑え込もうとしなくても、目立たなくなっていく場合もあるのです。

一方、不注意によるミスは、大人になっても残りやすいです。そこは叱っても叱らなくても、変わらないということです。

こうして将来への見通しを持つと、ADHDの特性による行動を叱っても、いいことは何もないのだということが分かります。

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不注意は、努力というよりは能力の問題


不注意の特性が強い子には、うっかりミスや忘れ物がよく見られます。この不注意という特性は、努力や工夫の問題というよりは、ある種の能力の問題としてとらえるほうが重要です。

私たちは日頃、子どもの能力を見積もりながらコミュニケーションをとっています。例えば、幼児に積み木の数を問いかけることはあっても、分数の計算問題を解かせようとすることはないですよね。
それは、幼児の計算能力をそう見積もっているからです。幼児が分数の問題を解けないのは、本人の努力が足りないからではなく、能力的に難しいからだということを、誰もが理解しているわけです。

しかし、子どもにミスや忘れ物が多いときには、なぜか能力というよりは年齢を基準にして、コミュニケーションをとることがあります。「何歳だから、これくらいのことはできるだろう」という感覚で、子どもに「忘れ物をしないで」と言ってしまうのです。

でも、年齢には関係なく、能力的に難しいという場合もあります。不注意の特性が強い子は人一倍時間をかけて確認しても、忘れ物をすることもあります。幼児に分数の問題を解かせないのと同じように、不注意の特性が強い子には、ミスや忘れ物をゼロにすることを求めないほうがいいのです。

ただ、幼児が分数の計算を何度やってもできないのに対して、ADHDの子は、ときにはミスや忘れ物をしないこともあります。
頑張ればできそうに見えるのです。それから、幼児は多くの場合、成長すれば分数の問題を解けるようになります。ADHDの子も「成長すればミスが減るのでは」という期待をかけられやすいです。

親や先生がADHDの子を見て、「2回に1回はできているんだから、もっと努力して成功率を上げていけばいい」と考えてしまうことがあるんですね。能力の問題ではなく、努力の問題だと思って、「やればできる」と言ってしまうんです。

ここにADHD対応の難しさがあります。よかれと思って、子どもを頑張らせすぎてしまう。その結果として、ADHDの子に毎回120%以上のエネルギーを求めるようになっていくことがあります。
しかしすでにお伝えした通り、それでは要求水準が高すぎるのです。

努力を求めすぎないようにしたい


もちろん、努力や工夫によってミスや忘れ物が減ることもありますが、どんなに頑張っても能力的に難しいというラインもあります。体の発達の仕方に個人差があるのと同じように、注意・集中のような精神機能の発達にも個人差があります。

例えば身長も、「もう少し伸びてほしい」と思っていても、期待通りには伸びないこともありますよね。私は、高校生になる頃には身長が160cmを超えていたので「いずれ165cmにはなるだろう」と思っていました。でも164.6cmで伸び止まってしまい、いまは老年期に入って縮み始めています。

子どもの不注意なところにも、「もうちょっとで達成できそう」と感じる瞬間があると思います。しかし能力的に難しくて、一生懸命やっていてもミスや忘れ物をしてしまう場合もあります。
十分に頑張っている子に、それ以上の努力を求めないようにしたいものです。

※この記事は、本田 秀夫 (著) フクチマミ(マンガ)『最新 マンガでわかるADHDの子どもたち』(バトン社)より一部抜粋・再編集しています。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。
ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

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