怒りで支配する子育てを卒業。ペアトレで学んだ、発達障害息子に言葉を届ける「CCQ」とは【読者体験談】
鏡のように似てしまった、息子と私の「怒り」
- 感情的に怒鳴ることで子どもをコントロールしようとする悪循環から抜け出すヒント
- ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如多動症)の特性を持つ子への具体的な声掛け技術「CCQ」
- ペアレントトレーニングの「ロールプレイング」を通じて気づく、子どもの本当の気持ち
- 「子どもを変える」のではなく「親の関わり方」を変えることで、家族の間に穏やかな時間が戻るプロセス
- 父親が一人で育児の悩みを抱え込まず、外部の支援を賢く活用する大切さ
- 年齢:11歳
- 性別:男の子
- 診断内容:ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)
- 診断時期:8歳
- エピソード当時の年齢:9歳
息子が小学3年生の頃、私と息子の関係は非常に険悪なものでした。息子は落ち着きがなく、めんどくさがりな性格で、やりたくないことは頑として拒否。思い通りにならないことがあると怒り出し、その怒りを理不尽に私へ向けてきます。そんな息子に対して私もついカッとなり、怒りで息子を動かそう、コントロールしようとしていたのです。
「怒りで人は動かせない」と教えたいはずなのに、自分自身が感情のコントロールができず、すぐに怒り、物に当たり、時には子どもにも当たってしまうこともありました。そんな私の振る舞いは、息子にとって「悪い見本」そのものでした。
「2人きりにはしておけない」妻の言葉に危機感を募らせて
客観的に家庭内を見てみると、妻の対応には何の問題もありませんでした。私と息子が一緒にいると必ずトラブルが起き、それを見かねた妻から「心配で2人だけにしておけない」と言われるほどでした。
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週末、息子と一緒に過ごしていてもお互いにイライラが募るばかり。「それならいっそ、私は家にいないほうがいいのではないか」とまで感じていました。
このままでは親子関係は修復不能になってしまう。この時になってようやく私は、「最優先で取り組むべきことは、息子を変えることではなく『私自身を変えること』だ」と思い至ったのです。私は、自治体が開催している「ペアレントトレーニング(ペアトレ)」と「ペアレントプログラム(ペアプロ)」を受講することを決めました。平日の開催だったため仕事を休む必要がありましたが、当時は「今の自分を変えるきっかけがほしい」という一心でした。
子ども役を演じて知った、反発したくなる親の態度
講習では、親役と子ども役の両方を体験するロールプレイングが行われました。私が子ども役を演じた時、親役の方から投げかけられる言葉に対して、心の中に湧き上がったのは意外な感情でした。
「その言い方は嫌だな」という不快感や、「今やろうとしているのに!」という反発。あるいは、大人の反応が面白くて「もっとふざけてやろうかな」という、わざと困らせたくなるような気持ち……。「これこそが、息子の感じていたことだったのか」と、私は愕然としました。このままの接し方を続けていたら、息子が大きくなった時に私の言葉がまったく届かなくなり、親としての信頼を完全に失ってしまうのではないか、と気づかされたのです。
そこで学んだのが、「CCQ」という具体的な手法でした。
- Calm(おだやかに)
- Close(近づいて)
- Quiet(静かに)
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「お父さん変わったね」という言葉と、これからの課題
受講を終えてしばらく経った頃、娘から「お父さん、変わったね」と言われました。感情的にならず、息子の感情に流されない。危険なことや人を傷つけるようなことをしたとき以外は無駄に怒らない。そんな私の変化を、家族はしっかりと感じ取ってくれていました。
もちろん、今でも完璧ではありません。時間が経ってくると、どうしても日々の忙しさや自分のコンディションで「良い対応」が抜けてしまうこともあります。だからこそ、私は日々の振り返りを大切にしています。ブログに日記を書いたり、妻と今日の出来事を話し合ったりすることで、自分の対応を再確認しています。
最近は夫婦で、息子の様子や「なぜ今日は荒れたのか」「なぜ今日は落ち着いていたのか」をよく話します。「学校の先生のあの対応が良かったのかもね」「こういう言い方だったから反発したのかな」と、変化のきっかけを分析するようになりました。妻は、私の対応が良かった時に「今の声掛け、良かったよ」と言ってくれるので、それが大きな支えになっています。
大人同士なら「人は変わらない」と理解できるのに、自分の子どもに対してはつい「変えられる」と思ってしまいがちです。でも、「子どもを変える」ことは難しいけれど、親の言動は良くも悪くも子どもに大きな影響を与えます。だからこそ、まず自分が変わることが大事なのだと今は強く感じています。
完璧な父じゃなくていい。自分を見つめ直す勇気が、家族の形を少しずつ変えていく
父親としてどう振る舞うのが正しいのか。厳しくすべきか、優しくすべきか。
自分自身が育てられた経験と照らし合わせながら、悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
父親は育児の悩みを誰かと話す機会が少なく、一人で抱え込みがちです。けれど「自分に原因があるのかもしれない」「どうにかしたい」と悩んでいる時点で、あなたはもうお子さんと真剣に向き合い、変わるためのきっかけを掴もうとしているのだと思います。
私の場合、ペアレントトレーニングやペアレントプログラムの受講が自分を見つめ直す大きな転換点になりました。自治体が開催する講座など、探せば無料で受講できる機会もあります。思い切って一歩踏み出すことで、きっと子育ては少しずつ楽に、そして楽しくなっていきます。世の中のお父さんたちが一人で抱え込まず、少しでも穏やかな気持ちで子どもと向き合えるようになることを、心から願っています。
イラスト/鳥野とり子
エピソード参考/チノパン
子どもへの向き合い方について、理屈では分かっていても、その場になると感情がコントロールできず怒鳴ってしまうことは、日常的な子育ての中ですべての親が体験することだと思います。
最近ではペアレントトレーニングなどのプログラムを受講するお父さまも徐々に増えてきました。チノバンさんが書いておられるように、プログラムの中では子ども役になって、指示される側を体験するワークもあります。一人ひとりの子どもの違いはありますが、こうしたプログラムをきっかけにして自分の子どもへのよりベターな関わり方を発見できると良いですね。(監修:鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授/LITALICO研究所スペシャルアドバイザー井上 雅彦先生)
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。