【精神科医さわ】発達障害、不登校の子どもを育てる母でもあるさわ先生が伝えたい、子どもの心の声と寄り添うヒント

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精神科医として、母として。さわ先生の言葉が届く理由


精神科医さわ先生は、5歳以上の子どもから大人までを対象とした児童精神科・心療内科のクリニックの院長です。本書では、診察室で出会う親子の姿をもとに、子どもの心の声と保護者の不安を丁寧にひもといています。

一方で、さわ先生自身も、子育てに悩んできた一人の母親でもあります。本書では、子どもの心をみる医師であると同時に、発達障害・不登校のある子を育てる母でもあることが語られています。

だからこそ、綴られている言葉は、単なる“正しい子育て論”ではありません。

「こうすればうまくいきます」「親はこうあるべきです」と教えるのではなく、子どもを思うからこそ不安になり、先回りし、時には焦ってしまう保護者に向けて、同じ母親としての実感もにじませながら語りかけてくれます。
本書の大きな特徴は、章立てそのものが「子どもの心の声」になっていることです。

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こうした言葉を読むと、ドキッとする人もいるかもしれません。
けれど本書は、保護者を責める本ではありません。むしろ、子どものことを必死で考えているからこそ不安になる保護者に向けて、「少し立ち止まって、子どもの側から見てみませんか」とやさしく声をかけてくれます。

次章からは、本書の内容をもとに、子どもの心の声を理解するための視点と、日々の関わりの中で取り入れられるヒントをご紹介します。

「お母さん、なんでそんなにあせってるの?」――まず安心して話せる場をつくる

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本書の冒頭「お母さん、なんでそんなにあせってるの?」では、診察室での親子のやりとりが紹介されています。

さわ先生が、不登校の中学3年生の女の子に「最近、学校どうかなぁ?」と声をかけると、その子は困った顔で固まってしまいます。少し沈黙が流れ、その子が口を開きそうになったとき、お母さんが「学校にはもうしばらく行っていないわよね!」とかぶせるように答えてしまいます。

この場面で描かれているのは、単に「子どもが話すまで待ちましょう」ということだけではありません。子どもが黙っている時間は、ただ何もしていない時間ではなく、考えたり、言葉を探したり、「ここで話しても大丈夫かな」と相手の反応を確かめたりしている時間かもしれません。


また、さわ先生は、子どもの言葉だけでなく、親子の間にある空気や距離感も見ています。その親子にはどこかピリピリした緊張感がありました。のちにその子から聞くと、お母さんは口では「学校に行かなくてもいい」と言いながら、実際には学校に行かないと不機嫌になり、それがつらかったといいます。

子どもは、大人が思っている以上に、親の焦りや不安、緊張感を感じ取っています。
「学校に行かなくてもいい」と言葉で伝えていても、表情や態度から「本当は行ってほしいんだ」「行けない自分にがっかりしているんだ」と感じてしまうこともあります。
だからこそ、子どもの話を聞くために必要なのは、単に数秒待つことだけではありません。

「ここで話しても怒られない」
「うまく言えなくても待ってもらえる」
「自分の気持ちを聞いてもらえる」

そう思える空気をつくることが大切なのです。

子どもが黙っているとき、すぐに言葉を重ねる前に、一度だけ立ち止まってみます。


「今、この子は考えている途中かもしれない」
「私の表情や声のトーンは、子どもを緊張させていないかな」
「この子が安心して話せる雰囲気になっているかな」

答えを急がせる代わりに、

「ゆっくりで大丈夫だよ」
「考えてからでいいよ」
「言葉にしにくかったら、あとで話してもいいよ」

と伝えてみます。

子どもにとっての「安心できる場所」は、特別なことをしなければつくれないものではありません。声の大きさを少し落とす、急かさずに待つ、話し出したら途中で遮らずに聞く。そうした小さな積み重ねも、子どもが自分の言葉を出すための安心につながります。

「大丈夫」より先に、「不安なんだね」

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子どもが不安を訴えたとき、保護者はつい「大丈夫だよ」と言いたくなります。

「心配しなくていいよ」
「そんなこと起きないよ」
「気にしすぎだよ」

励ましたい。安心させたい。その気持ちから出てくる言葉です。
けれど、不安の強い子どもの場合、「大丈夫」と言われることで、かえって「分かってもらえなかった」と感じることもあります。
本書で紹介されている大切な言葉が、「不安なんだね」です。
発達特性のある子どもの中には、予定変更や見通しの立たないことに強い不安を感じる子がいます。何度も確認したり、同じ質問を繰り返したりすることもあります。
大人からすると「また?」と思う場面でも、子どもにとっては、不安を少しでも小さくするための行動かもしれません。

「そんなに心配しなくていい」ではなく、まずは、
「心配なんだね」
「確認したかったんだね」
と受けとめる。

不安を消そうとする前に、不安があることを認める。
それが、安心の出発点になります。


子どもが不安を訴えたら、まずは解決策を出す前に、気持ちを言葉にして返します。

「そっか、不安なんだね」
「それが心配だったんだね」
「どうしておくと、少し安心できそう?」

不安を受けとめることは、甘やかしではありません。子どもが自分の気持ちを話せるようになるための土台です。

ちゃんと私を「見て」「聞いて」「信じて」――先回りする前にやること

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子どもが困っている様子を見ると、保護者はつい先回りしたくなります。

「これはまだ難しいかも」
「失敗したら傷つくかもしれない」
「私が手伝ったほうが早い」

子どものことを思うからこそ、口を出したり、手を貸したり、道筋を整えたりしたくなるのは自然なことです。
けれど、その関わりが続くと、子どもが自分で考えたり、話したり、試したりする機会を奪ってしまうことがあります。
本書には、子どもの心の声として、「ちゃんと私を『見て』『聞いて』『信じて』」という言葉が出てきます。
さわ先生は、不安の強い親御さんほど、子どものことを見ているようで、実は「見ない、待てない、気づかない」状態になりやすいと指摘しています。


子どもが何かを言いはじめる前に、大人が答えてしまう。
子どもが動き出す前に、大人が手を出してしまう。
子どもが失敗する前に、大人が道を整えてしまう。

その背景には、「この子は私がいなければできないのではないか」「私がなんとかしてあげなければ」という保護者の不安があります。もちろん、子どもを信じることは、何もかも任せることではありません。必要な支えは用意しながらも、子ども自身が動き出す余白を残すこと。そこに、「見て」「聞いて」「信じる」関わりのヒントがあります。

子どもに何か言いたくなったとき、手を出す前に一度だけ立ち止まってみます。

「今、私は子どもの話を聞く前に答えを出していないかな?」
子どもが迷っているように見えたら、すぐに代わりに決めるのではなく、

「どうしたい?」
「どこまで自分でやってみる?」
「手伝ってほしいところはある?」

と聞いてみます。
うまく答えられなくても大丈夫です。まずは、子どもの目を見て、声を聞くこと。
“子どものために動く”前に、“子ども自身を見る”。それが、「見て」「聞いて」「信じる」関わりの第一歩になります。

【さわ先生から発達ナビ読者のみなさまへのメッセージ】


ここまで、本書の内容をもとに、子どもの心の声に気づくための視点と、日々の関わりの中でできる工夫をご紹介してきました。最後に、子育てに不安を感じ、つい自分を責めてしまう保護者の方へ向けて、さわ先生からメッセージをいただきます。

毎日、本当にお疲れさまです。「私のせいかも」と自分を責めてしまうのは、お子さんを心から大切に思い、必死に向き合っている証拠です。「ちゃんとしなきゃ」という気持ちを少しだけ下ろして、まずは親子で"安心できる場所"をゆっくり見つけていきましょう。

子どもを変える前に、親子の「安心」に立ち返る


子どもの困りごとに向き合っていると、保護者はどうしても「どうすれば直るか」「どう声をかければ動くか」を探したくなります。
もちろん、具体的な工夫は大切です。見通しを立てる、環境を整える、伝え方を変える、学校や支援機関と連携する。そうした実践が、子どもを助けることはたくさんあります。
けれど、その土台に「安心」がなければ、どんな声かけも子どもには届きにくくなります。

『子どもが本当に思っていること』は、対応法の前にある、親子の関係の土台に立ち返らせてくれる本です。そしてその言葉には、児童精神科医として多くの親子を見てきた視点だけでなく、発達障害・不登校のある子を育てる母としての実感も込められています。

子育てに不安がある方、子どもの困りごとに向き合う中でつい焦ってしまう方、発達特性や不登校のある子どもとの関わりに悩んでいる方は、ぜひ本書を手に取ってみてはいかがでしょうか。
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次回は、精神科医さわ先生の著書『児童精神科医が子どもに関わるすべての人に伝えたい「発達ユニークな子」が思っていること』をご紹介します。
「障害」ではなく「発達ユニーク」という視点から、子どもが見ている世界や、大人ができるサポートのヒントを考えていきます。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

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