子どもの障害者手帳は必要?専門家が語る取得のメリットと将来への備え【親なきあと相談室】
「親なきあと」相談事例|障害者手帳は取得したほうがいい?
「親なきあと」相談室の渡部伸と申します。当相談室で実際に受けた具体的な相談事例とアドバイスをもとに、コラムを書かせていただいています。
発達が気になる方の保護者や家族からの相談について、それぞれのケースではどのような制度が使えるか、親なきあとの生活をどう想定し、私がどのようなアドバイスをしたか、ご紹介していきたいと思います。
※なお、ここに紹介した事例は、いずれも実際にあった事例に基づいて、家族や環境などは個人が特定できないように変更を加えています。
精神の手帳の取得を迷っています
【相談内容】
- ●当事者:5歳の女児、自閉スペクトラム症(ASD)
- ●相談者:母親
娘は2歳のときに自閉スペクトラム症(ASD)と診断されました。今のところ知的な遅れや、感覚過敏、パニックなどの症状はありませんが、言語面やコミュニケーションの面で半年ほどの遅れがあるそうです。
将来のためにいろいろと勉強したいと考えていますが、現在、精神障害者保健福祉手帳の取得について迷っています。手帳を持つことのメリット、デメリットなど教えてください。
また、中長期的なライフプランを考えるにあたり、今から準備したほうがいいことなどがありましたらアドバイスをお願いします。
【アドバイス】
手帳の取得にデメリットはありません
障害者手帳を取得することのデメリットは、私は基本的にはないと思っています。取得時や更新時に提出する診断書に若干費用がかかる、定期的な更新の手間がかかるなどの事務的な負担はありますが、メリットのほうがはるかに大きいと思います。
精神障害者保健福祉手帳は、日常生活や社会生活にどの程度の支障があるかなどによって、1級~3級の等級があります。一番症状が軽い3級の手帳でも、所得税と住民税が障害者控除の対象になります。また、美術館や博物館などの公共施設や、映画館など民間企業の施設についても、利用料金の割引を受けられることが多く、経済的なメリットがいくつもあります。
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また、私が手帳の取得をおすすめする一番の理由は、将来就労する際に、手帳があることで障害者枠での雇用という選択肢が生まれることです。一般のルートでの就労が難しい場合でも、障害者雇用で働く場を得られる可能性があり、その場合は障害特性に応じた労働時間や業務の調整など、合理的配慮を受けやすくなります。
手帳を取得することに、精神的な抵抗感はあるかもしれませんが、サービス利用時以外に手帳を他人に見せることはまずありませんし、どうしても本人が嫌がったら返却することもできます。取れるのであればぜひ取得をおすすめします。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。